農業農村工学会論文集
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2007 巻, 251 号
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  • Goyal AJAY, 服部 九二雄, 緒方 英彦, Muhammad ASHRAF, Mohamed Anwar AHMED
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 477-484,a1
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業・工業廃棄物は全世界的な環境問題となっている. 籾殻灰はポゾラン反応を持つことが知られている. 本研究では, 枯葉, 刈取った芝生 (高麗種, Tifton種, 在来種芝), 落花生外皮, 麦藁などの農業・植物性廃棄物から得られる多種類灰分のポゾラン反応性を評価した. 残留灰分と炭素含有量に関し最適燃焼条件を決め, その際得られる灰分を熱重量分析した. X線回折解析によると600℃15時間燃焼で得られる灰分は, 800℃15時間燃焼の灰分よりも非晶質で, 鉱物学的分析によれば, かなりな量のシリカ分を有し, 高いカルシウム分を持つ枯葉は高カルシウム灰分といえる. 高麗芝と在来芝の灰分は高いシリカ分を有し, ポゾラン物質である可能性が高い.
  • 郭 世文, 服部 九二雄, 緒方 英彦, Goyal AJAY, Muhammad ASHRAF
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 485-490,a1
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, 未分級中国産フライアッシュを混和材としてコンクリートに利用するのが目的である. 中国内蒙古の豊鎮産フライアッシュが利用できることを確認した上で, 未分級フライアッシュを用いたコンクリートの耐硫酸塩性を明らかにした. 供試体の密度は未分級フライアッシュを用いた場合が用いない場合より少しであるが小さくなった. さらに, AE剤を使うと, その値が顕著に小さくなった. 材齢28日における供試体の圧縮強度と動弾性係数は, 普通コンクリート>フライアッシュコンクリート>AEコンクリートという順番であったが, 同じ供試体で同じ材齢から開始したコンクリートの耐硫酸塩性試験結果は, その順番と反対だった. コンクリートの強度が高いことは必ずしも耐硫酸塩性が高いとは限らないことを明らかにした. 未分級豊鎮産フライアッシュを混和材としてコンクリートに用いた場合, 耐硫酸塩性の向上に効果があることが分かった.
  • 中野 晶子, 大坪 政美, Loretta LI, 東 孝寛, 金山 素平
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 491-499,a1
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ベントナイトは廃棄物最終処分場の粘土ライナーとして利用されており, その機能は遮水と浸出水に含まれる有害重金属などの汚染物質の吸着である.本論文では, ベントナイトの鉛吸着機構を評価するために組成の異なる日本産と米国産のベントナイトについてバッチ吸着試験と選択的連続抽出試験を行い, 鉛の吸着量と吸着形態を調べた. 主要な鉛の吸着形態はイオン交換態と炭酸塩態であり, 溶液pHが勘・ときは炭酸塩態が支配約であるが, 溶液pHが低下するにつれて交換態が優勢となった. 炭酸塩含有量が多いベントナイトほど, 炭酸塩態の害拾が高く, 鉛の最大吸着量も大きかった日本産ベントナイトは米国産に比べ炭酸塩を多く含むため, 鉛の最大吸着量は大きかった炭酸塩による鉛の吸着には主にセルサイト (pbCO3) の沈殿形成が, 部分的には水酸化鉛との複合体の形成が寄与している.
  • 宮古島におけるバイオマス炭化物の有効利用
    陳 嫣, 平良 正彦, 川満 芳信, 凌 祥之
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 501-506,a1
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    サトウキビの収量と品質は, 圃場の養・水分含量によって左右される. 琉球石灰岩を母材とし, 保水性に乏しい島尻マージが大部分を占めている宮古島において, 安定かつ良質なサトウキビ生産を得るため, 保水性に富むバイオマス炭化物の農地投入による島尻マージ土壌の改良を試み, サトウキビ収量・品質改善の可能性を探った. また, 地下水の硝酸態窒素の低減対策として, 炭化物の農地投入による改善効果を検討した.その結果, 炭化物を投入することによって, 島尻マージ土壌の乾燥密度を下げ, 保水性が高まった. 十分な土壌水分を維持することで, サトウキビの生産量のみならず, 品質 (糖度 (Brix)) も向上し, 可製糖量が大幅に増加した. また, バガス炭を添加することで, 浸透流出した硝酸態窒素の濃度を低減し, 環境負荷を軽減することが期待された.
  • 渡辺 一生, 星川 和俊, 宮川 修一
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 507-513,a1
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, タイ国東北部・ドンデーン村での現地調査に基づき, 1930年代~2005年の期間を対象に4期の土地利用図をGISソフトウエアで作成した. これにより, 長期に渡る天水田域拡大過程の特徴を集落レベルで検討した. 同村の水田面積は, この地域特有の凹地状をしたノングと呼ばれる地形の低位部から高位部へと拡大し, 過去70年間で約18倍に増加した. 一方, 森林面積は, 水田域の拡大に伴い激減し, 1980年代前半までに潜在的可耕地はほぼ開拓しつくされた. 1980年代前半以降では, 肉牛や魚の飼育のために水田が草地や養魚池へ地目変更されるようになった.しかし, ノングの高位部では, わずかに残った森林に加えてそれまでの畑地, 草地等への水田造成が行われたため, 水田面積は増加し続けた.
  • 廣瀬 哲夫, 内田 一徳, 田中 勉, ファン ティハンチャン, 石渡 洋子
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 515-527,a1
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    浸透破壊は, 地下水位の高い地点における土木構造物の性能設計において重要な課題の一つである. ここでは, 二次元複列矢板内地盤の浸透破壊実験について, PIV (Particle Image Velocimetry) 解析を行い, 水頭差の増加に伴う地盤構成砂粒子の移動現象に関する考察から次の結論を得た:(1) PIV解析を用いることによって, 砂粒子の移動の領域や様子を把握することができる.(2) 水頭差が変形開始時水頭差Hyを超えると, 複列矢板内の矢板壁近傍の砂粒子の上方向への移動, 及び, 矢板壁から少し離れた部分の複列矢板中央へ向かう斜め上方への移動が認められる.(3) 水頭差が変形開始時水頭差Hyを超えた直後の, 砂粒子の移動の範囲は, おおよそ, 深さD (矢板の根入れ深さ) 及び幅D/2の範囲である.(4) PIV解析による地盤構成砂粒子の塊としての移動開始時水頭差HPIV, 流量急増時水頭差Hd, 及び, 変形開始時水頭差Hyはほぼ等しい.
  • 粕渕 辰昭, 百瀬 年彦, 土谷 富士夫, Vlodek R. TARNAWSKI
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 529-533,a2
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    3種類の日本の土壌 (豊浦砂, 赤黄色土, 火山灰土) について, 水分飽和度と正規化した熱伝導率との新しい関係式を導いた. 得られた関係式を用いて実測値と比較した結果, RM5E (Root Mean Squarc Error) は, 0.1W・m-1 K-1以下であった. 絶乾と水分飽和状態の熱伝導率を求めるために直列・並列モデルを用いた. 直列・並列モデルの利用は, 異なる固相率の土壌に対する正規化熱伝導率モデルの適応性を拡張する. この熱伝導率モデルは, 本研究で用いた試料と類似の生成履歴および土性をもつ土壌に対しても適応できるであろう.
  • 和歌山県10市町村を事例として
    中島 正裕, 山浦 晴男, 福井 隆
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 535-544,a2
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    地域再生法が施行されて以降 “地域にできることは地域で” という気運が一層高まる中, 行政依存からの脱却による地域の自律的発展が求められている. 本研究では「農村地域の自律的発展を支援するWS手法」を構築して和歌山県内10地区で適用し, その有効性の検証を行った. 本WS手法の特徴は, 事業計画への住民の合意形成や意思決定の支援を目的としたものではなく, 住民が地域づくりを自律的に担っていくための「学びの場」を提供する点にある. 本WSに参加した住民は写真撮影やイラストを描きながら, 主に (1) 地域の課題や危機に向き合う,(2) 地域の特徴や課題を構造的に再認識,(3) 地域活性化のアイディアの考案とその評価・選択, という行為を体験した. こうした一連のプロセスを通して地域が自律的発展していく上での礎となるであろう, 地域づくりに対する意識や行動の変化がみられた. その一方で, 技法及び機能面からWS手法としての改善すべき課題が明らかとなった.
  • 沖縄県米須地下水盆を例として
    吉本 周平, 土原 健雄, 石田 聡, 今泉 眞之
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 545-558,a2
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    琉球石灰岩分布地帯である沖縄県糸満市の米須地下水盆における湧水の硝酸性窒素濃度の長期間観測データの傾向は, 1990年代半ばをピークとして緩やかに減少している. 糸満市の統計データから化学肥料, 畜産排泄物, 生活排水由来の窒素負荷量の推移を原単位法によってそれぞれ推定したところ, 地下水硝酸性窒素濃度の変動傾向と一致するのは化学肥料のみであった. このことから, 本流域では化学肥料の施用が地下水質に大きな影響を与えているという推論がなりたつ. 洞くつを考慮したタンクモデルによって計算された水収支に基づく窒素収支も, この推論を支持する. また, このタンクモデルを水収支サブモデルとして援用し, 窒素収支サブモデルによって窒素の形態変化を記述する窒素動態モデルを本流域に適用したところ, 地下水硝酸性窒素濃度の長期的変動を再現できることが明らかになった.
  • 簡易な工事を活用したほ場整備事業の事例検討に基づく提案
    有田 博之
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 559-564,a2
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農村集落では急激な開発は少なくなったが, 依然として都市縁辺部ではスプロール的な開発が進み, これに呼応するかのように耕作放棄面積が増大している. 都市化地域の農地資源保全にとって土地利用を秩序化することの意味は大きい. この手段の1つとして換地による非農用地区域の活用がある. しかし, 現況の制度では換地は農地の区画整理と一体的に制度化されているため, 区画整理が行われない限り繰り返しは困難である. 本論では, 換地の繰り返しの制約を緩和すると考えられる「簡易なほ場整備事業」に注目し, これの事例分析を通じて, 換地の繰り返しがもつ土地利用秩序化機能について論じた. また, 簡易なほ場整備を活用した土地利用の秩序化手法について提案した.
  • 森 淳, 水谷 正一, 松澤 真一
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 565-571,a2
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    谷津田地域の農業水路と, これに隣接する畦畔に生息するクモ類の炭素安定同位体比 (δ13C) を, 生活型ごとに解析した. 造網性種の平均値は-26.0%. となり, 里山から供給された有機物に依存する, 水路から羽化した昆虫の影響を受けていた. 樹上俳徊性種のδ13Cは造網性種に近かったが, 標準偏差は造網性種と比べて大きかった. 地上俳徊性種のδ13Cは-22.2%. となり, C4植物の影響を受けて高くなった. 地上俳徊性種のδ13Cはクモ類を支える食物連鎖の植物群落におけるC3植物とC4植物の割合を反映しており, その体を構成する炭素の約1/3がC4植物由来と考えた. 里山と水田の間のエコトーンである谷津田の水路周辺において, 生物を通じた物質フローの多様性を, δ13Cを用いてとらえることができた.
  • Arien HERYANSYAH, 後藤 章, 水谷 正一, Muhammad JP YANUAR
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 573-581,a2
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    適切な流域水質水文モデルの構築は流域管理にとって最も重要なもののひとつである. 本研究では, インドネシア・チダナウ流域に対して水質モデルを開発し, その性能を水質汚染問題への適用性の観点から評価する. 流域水質モデルはサブ集水域単位のタンクモデルと水質式群から構成されている. データの存否と空間的変動を考えたとき, このタイプのモデリングが最も適切である. 水質式にはLQタイプと溶解タイプを採用した. サブ集水域のグループ別にパラメタを設定する方式が最良のモデル構造と考えられた. 本流域水質モデルは水質汚染への影響要因を識別するためのシミュレーションツールとして機能することが期待された.
  • 原田 昌佳, 齋 幸治, 三島 雅子, 吉田 勲, 平松 和昭, 森 牧人
    2007 年 2007 巻 251 号 p. 583-591,a3
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    鳥取県湖山池を対象に密度成層の形成過程と破壊過程について鉛直1次元拡散モデルにより検討した. 鉛直渦動拡散係数は局所リチャードソン数の関数としてモデル化し, それに含まれるパラメータは遺伝的アルゴリズムを用いて水域に最適な値として決定した. その結果, 本モデルは実測値を良好に再現できた. 数値実験の結果, 風速5.0m/s以下で水温日成層が形成され, 風速により密度界面の位置が1.5~3.0mの範囲で変動することを示した.また, 成層破壊に要する吹送時間は風速の指数関数で与えられた. さらに, 水深約6.0mの最深部において夏季に3.0m以深で貧酸素化・無酸素化になる要因を, 数値実験の結果を踏まえて風速, 密度界面, 補償深度と関連付けて考察した.
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