農業農村工学会論文集
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79 巻 , 5 号
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研究論文
  • 鬼丸 竜治, 佐藤 政良
    2011 年 79 巻 5 号 p. 317-327
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
    開発途上国における参加型水管理への支援では,その事業効果が必ずしも持続していない.主な理由の一つは,農民水管理組織が,農民の持続的維持管理活動へ適切なインセンティブを与えることが難しい点であるといわれている.支援終了後も組織が持続的に活動するためには,農民の参加意欲を高める適切な要因に働きかけることが必要である.そこで本報では,農民の維持管理労力負担意欲に着目し,意欲に影響を与える要因を整理した上で,意欲と要因との関係を事例地区における質問紙調査データを用いて分析した.その結果,意欲には灌漑施設に対する受益意識などの要因が影響を与えること,事例地区では受益意識や水路の破損に起因する将来的な配水への不安が大きい農民ほど意欲が高いこと,したがって,「既得の利益を減らさない」というインセンティブの視点を加える必要があることを明らかにした.
  • 西村 伸一, 清水 英良
    2011 年 79 巻 5 号 p. 329-337
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,砂質地盤の液状化を対象に,その液状化確率の算定と,リスクの低減を目的とした対策に対して,信頼性設計を実施している.液状化確率は,土質定数の空間的なばらつきを考慮して算定している.第一に,最尤法を利用して,N 値,細粒分含有率Fcの統計モデルを決定し,経験式をとおして動的せん断強度比の算定を行う.これらの確率変数に対して,条件付きシミュレーション法を適用し,地盤の二次元液状化確率の算定を行う.さらに,液状化確率に基づき,最適地盤改良法を決定するための期待総費用最小化に基づく信頼性設計を実施している.地盤改良工法として,サンドコンパクションパイル工法を採り上げ,最適砂置換率を決定している.
  • 土原 健雄, 吉本 周平, 石田 聡, 今泉 眞之
    2011 年 79 巻 5 号 p. 339-348
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
    利尻礼文サロベツ国立公園に含まれる沿岸湖沼群の水文特性を明らかにするために,湖水,河川水,地下水を対象に環境同位体を指標とした調査・解析を実施した.放射性同位体である222Rnが検出されないことから湖水への地下水流入が存在しないことが示され,地表流出入が存在しない湖沼群は,降水によって涵養される閉鎖性湖沼であることが明らかとなった.水素・酸素安定同位体比より,湖水は蒸発の影響を受けていることを示した.動的同位体分別を考慮した同位体収支式から,供給された降水に対する湖水の蒸発損失の割合を14.4~71.9%(平均45.1%)と推定するとともに,各湖沼の蒸発の影響と湖沼の形状との関係を示した.さらに,対象とした湖沼群は地下水流動系において涵養湖として位置付けられ,湖沼群の水文環境には降水と下流側の地下水位が大きく影響することを明らかにした.
  • 伊藤 夕樹, 田中 良和, 向井 章恵, 樽屋 啓之, 中 達雄
    2011 年 79 巻 5 号 p. 349-356
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
    用水路系内に位置し,農業水利施設の整備事業において調整容量が拡大された調整池を対象に水利用に関する性能および信頼性・安全性に対する照査を行った.この結果,同調整池を含む調整池下流の用水路系では,調整池の調整容量の拡大により,調整池下流に位置するパイプラインへの空気混入に対する安全性が向上し,さらに調整池の調整容量の拡大と送水管理の変更に伴う余水量の削減により,送配水効率が向上したことを明らかとした.また,施設整備事業前後における送配水効率等の性能照査指標値の動向に対する考察から,調整池の調整容量の拡大は,送水管理の変更により性能間でトレード・オフが生じ,すべての性能を目標性能以上とすることが困難な場合,特に効果的であることを示した.
  • 吉田 修一郎
    2011 年 79 巻 5 号 p. 357-365
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
    機械によりかんがい排水を行っている低平地水田地帯におけるかんがい排水用エネルギー投入の実態について,3ヶ所の地域を対象に調査を行った.全国の農事用電力の消費量を水稲栽培面積(畑地かんがいを無視した場合)で除したかんがい排水用エネルギー投入の概算値は,3.2GJ/(ha·year)であるが,低平地水田地帯では,かんがい用に4.5~15GJ/(ha·year),排水用では,0.2~3.3GJ/(ha·year)のエネルギーが投入されていた.また長距離導水では,距離が遠くなるほどエネルギー投入は増大し,600mm程度の補給的な用水供給だけでも5GJ/ha以上のエネルギー投入がみられた.これらの数字は,水稲生産における機械燃料や乾燥・調製などに要するエネルギー投入に近い高い水準にあり,その削減は,水稲生産におけるエネルギー自給を考える上で重要な課題である.
  • 庄司 諭, 倉島 栄一, 工藤 明
    2011 年 79 巻 5 号 p. 367-374
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
    わが国では,森林がダムの貯水と防災の機能をあわせ持つという緑のダムという考え方が流布し,とりわけ,ブナなどの広葉樹からなる森林はその機能が優れているとの認識が広く浸透している.本研究では,ブナ原生林からなる世界自然遺産白神山地を流域とする河川を対象に,流出モデルを媒介として,この認識の検証を試みた.ブナ原生林流域に分布型流出モデルを適用し,流出形態を反映すると思われるモデルのパラメータを同定したところ,地中流が支配的で,地表流はわずかであることが示された.さらに,対照流域法の新たな展開として,ブナ原生林流域とは対照的に高度に農地開発が行われた河川に同様の検討を試みた結果,同定されたパラメータに大きな差が認められ,流出の形態は地表流の寄与が大きいことが明らかになった.
  • 後藤 裕子, 須戸 幹, 肥田 嘉文, 小谷 廣通
    2011 年 79 巻 5 号 p. 375-384
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
    河川の表層水に残留した農薬が伏流で受ける影響を明らかにするため,2005年5~6月に琵琶湖流入河川のうち伏流が見られた野洲川で3回,伏流しなかった日野川で2回,農薬の濃度と負荷量を測定した.支川からの流入がない区画における最上流地点と琵琶湖の背水の影響を受けない河口地点の農薬濃度を比較すると,日野川では濃度の変動は見られなかったが,野洲川では表層水の一部が伏流した調査日で1/3程度,完全に伏流した調査日で1/100以下に減少した.これは,伏流水が周囲の浅層地下水や琵琶湖の背水による希釈・拡散の作用を受けたためと考えられた.農薬の表層水による流達率は,日野川でほぼ1.0,野洲川では0.01~0.1以下であった.
研究ノート
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