農業農村工学会論文集
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研究論文
  • 岩田 幸良, 名和 規夫, 長利 洋, 宮本 輝仁, 海老原 健二
    2025 年93 巻2 号 p. I_93-I_102
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/15
    ジャーナル 認証あり

    サトイモの灌漑効果を調べるため,三重県津市の黒ボク土圃場で試験を実施した.灌漑を実施しない対照区と畝間灌漑区,多孔管灌漑区を設け,収量を比較した.2022年は多雨で対照区と畝間灌漑区で収量に明確な違いは認められなかった.一方,2023年は5年に1度程度の干ばつ年であり,対照区に比べて灌漑を実施した試験区の収量が高かった.この年の畝中央部の土壌水分量は,多孔管灌漑区の方が畝間灌漑区よりも高かったが,収量に明確な差は認められなかった.収穫直前に畝内の根の分布を調べたところ,対照区は全体的に根が少なく,多孔管灌漑区は畝中央部に根が密集し,畝間灌漑区は多量の根が周辺部にも分布していた.このことから,畝間灌漑ではサトイモが周辺部分にも根を伸ばすことで畝の広い範囲から水を吸収したため,多孔管灌漑と同程度の収量が確保できたと考えられた.

  • 桒原 良樹, 髙橋 武, 林 雅秀
    2025 年93 巻2 号 p. I_103-I_108
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/27
    ジャーナル フリー

    本研究では,営農型太陽光発電の設置が進んでいない地域に所在する日帰り温泉施設利用者を対象にアンケート調査を実施し,共分散構造分析により営農型太陽光発電の受容態度の形成要因を解明した.その結果,約1/3の回答者にNIMBY(Not In My Back Yard)傾向がみられた.受容態度への影響要因として,「興味・関心」,「信頼感」,「有用性・必要性」,「不安感」が抽出された.「有用性・必要性」は直接的に正の影響を,「興味・関心」と「信頼感」は間接的に正の影響を,受容態度に与えた.一方で「不安感」は直接的・間接的に負の影響を及ぼした.また,他施設と異なり「信頼感」だけでは「不安感」を抑制できない可能性が示唆された.このため,啓発活動を通じた有用性・必要性の具体的な訴求,対象属性に応じた情報提供,不安要因への具体的対策に関する情報発信が円滑な住民理解の獲得に不可欠である.

  • 瀬谷 曜, 梅崎 健夫, 河村 隆
    2025 年93 巻2 号 p. I_109-I_120
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/27
    ジャーナル 認証あり

    初期含水比の異なる飽和スラリー粘土の乾燥収縮特性を定量的に評価するための簡便なモデルを提案した.このモデルに必要なパラメータは,土の収縮特性曲線の折れ曲がり点における含水比と乾燥収縮後の間隙比の2つだけである.この2つのパラメータを決定するための簡易試験法も新たに提案した.さらに,提案モデルの検証のために,初期含水比,供試体の寸法,乾燥方法の異なる飽和スラリー粘土の乾燥収縮試験を実施した.この検証試験において,質量変化を測定するとともに画像解析法により体積変化を連続的に算定し,提案モデルの妥当性を検証した.

  • 正田 大輔, 吉迫 宏, 小嶋 創, 三好 学, 安藝 浩資, 中村 栗生
    2025 年93 巻2 号 p. I_121-I_130
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル 認証あり

    豪雨に伴う土石流により,下流に位置するため池の堤体越流による被災が想定される.ここでは,被災ため池での採取試料や想定される流量等のデータを基にして縮尺模型を作製し,貯水池内での水位変動に関する数値計算手法の適用性について,模型実験による現象の再現に基づいて明らかにした.模型実験において水とともに土砂が貯水池内に流入することを確認し,その結果,平面二次元不定流計算と水・土砂収支計算のいずれの計算手法でも,模型実験の水位上昇を概ね再現できた.模型実験による計測値から求めた水のみの流量係数は,水・土砂の流量係数と比較して小さい値となり,水のみの流量係数を用いて土石流流入時の越流水深を評価することで,越流水深を安全側に評価できた.

  • ― 事前条件・情報探索行動による知識獲得・態度形成に着目して ―
    岩﨑 吉隆, 鬼塚 健一郎
    2025 年93 巻2 号 p. I_131-I_140
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/23
    ジャーナル フリー

    本研究では,集落営農組織におけるスマート農業技術の導入前段階において,事前条件と情報探索行動が知識獲得および態度形成に与える影響を,導入群と未導入群の2群比較により実証的に明らかにした.結果,経営耕地面積の大きさおよび外部との接触機会の多さが,周辺農家の事例観察や高評価の聴取機会を増大させ,知識獲得を促進することを示した.また,導入群では省力化・軽労化や非熟練者・若手人材活用への期待が高く,未導入群では農地条件に適合しない機械サイズへの懸念が顕著であることを示した.さらに,多額のコスト負担への懸念は両群に共通した課題であると認識された.普及施策として,集落連携による機械共同利用支援や外部作業委託補助の拡充,地域特性に即した圃場見学会・試験導入を含む直接体験機会の実施,小規模・条件不利地向け省力化特化型小型機の開発促進が必要である.

  • 三木 昂史, 石井 雅久, 後藤 眞宏, 高杉 真司, 舘野 正之
    2025 年93 巻2 号 p. I_141-I_150
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/23
    ジャーナル フリー

    流水熱利用では,水路に熱交換器を設置し,ヒートポンプにより流水中から採熱して,温室などで熱を利用している.熱交換器を長期間水路に設置すると,熱交換器の表面に水生植物が付着することや,水路には頻繁にゴミが流れてくるため熱交換器にゴミが付着し蓄積することが懸念される.そこで,本研究では,熱交換器へのゴミの付着がヒートポンプシステムの熱交換特性やエネルギー消費効率(SCOP)に与える影響を評価するために,実験棟内の実規模模型で熱交換器へのゴミの付着を模擬的に再現して,実験を実施した.本実験から,ゴミで熱交換器が被覆されると,被覆なしに比べて,流速0.05〜0.70 m・s-1では,熱通過率は最大20.5%(流速0.10 m・s-1のとき)小さくなったが,熱交換量やSCOPに与える影響は比較的小さく,流速が0.90 m・s-1以上になると,ほとんど影響がないという結果となった.

  • 廣瀬 裕一, 中島 正裕, 新田 将之
    2025 年93 巻2 号 p. I_151-I_159
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/23
    ジャーナル 認証あり

    滋賀県犬上郡甲良町金屋・北落・尼子の3地区を対象に,地区内の農業水路の維持管理作業への住民の参加を決定する要因を明らかにするために,アンケート調査を行った.農業水路の維持管理作業に対する態度と行動との関係に加えて農業水路に対する評価を決定する要因の影響を考慮したモデルを構築して適用したところ,住民の維持管理作業への参加を促す上で有効な方策として,作業が集落の役に立っていると認識すること,農業水路が管理されていると判断されること,農業水路の水がきれいと判断されるように例えば濁水等の農業排水や生活雑排水の過度の流入を抑制すること,簡単に農業水路の中に立ち入れる現在の構造を維持すること等が挙げられた.地元生まれの住民は,特に農業水路が管理されていると判断することが,町外生まれの住民は近所の目を気にすることが各々維持管理作業への参加に強く影響した.

研究ノート
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