Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
11 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
原著
  • 工藤 朋子, 古瀬 みどり
    2016 年 11 巻 2 号 p. 128-136
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/21
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    【目的】訪問看護ステーションにおける遺族ケアの実施状況と今後の課題を明らかにする.【方法】全国の訪問看護事業所1,000件を対象に質問紙郵送調査を行った.【結果】有効回答296件(29.8%),遺族ケアは,積極的に実施6.1%,必要時実施73.1%,ほとんど行っていない20.7%だった.自宅訪問は91.4%が実施,常に行っているケアは,ねぎらいの言葉が73.6%と最も多かった.関係機関へ連絡している事業所は32.4%で,認知症を抱え独居となる遺族の見守りなどを依頼していた.連絡していない理由は,どのような場合に連絡するかわからない17.5%だった.【結論】約9割が自宅訪問を実施していたが,情緒的サポートが主だった.訪問看護師には,介護保険以外に利用できる保健福祉サービスなど,生活の立て直しを図る情報を遺族に提供し,継続的な関わりを要する遺族を早期に見極め,関係機関へ引き継ぐ力が求められる.
  • 坂口 幸弘
    2016 年 11 巻 2 号 p. 137-145
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/21
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    【目的】ホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアサービスの現状と課題を把握するとともに,2002年調査との比較によって,この10年間での変化を検討することが本研究の目的である.【方法】2011年12月末日時点での緩和ケア病棟入院料届出受理施設を対象とし,看護師長宛てに2002年調査と同じ質問紙を送付した.その結果,156施設から回答が得られた(回収率:68.7%).【結果】最も多く行われていた遺族ケアサービスは手紙送付で78%,次いで追悼会が73%であった.10年前に比べ実施施設の割合はやや減少した.今後の課題に関して,「組織としての体制の整備」との回答が最も多く,10年前と同じ71%であった.「教育の充実」や「遺族のニーズ調査」との回答には減少がみられた.【結語】ホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアサービスの実施状況が示されたとともに,解決に向かいつつある問題や手つかずの課題が示唆された.
  • 今中 啓一郎, 吉村 大志, 冨永 裕慎, 古賀 裕海, 廣瀬 敬一郎
    2016 年 11 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/27
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    中等度から高度の癌性疼痛を対象にタペンタドール徐放錠(ER)50〜500 mg/日の有効性および安全性を多施設共同非盲検試験で検討した.タペンタドールERの開始量は,オピオイド新規導入患者では50 mg/日,オピオイド切り替え患者では,先行オピオイド鎮痛薬量に応じた投与量とし,患者ごとに用量調節した.投与期は用量調節期と用量調節を達成した患者が移行する用量固定期の二つから構成されており,用量調節を達成した患者の割合は,オピオイド新規導入患者で93.3%,オピオイド切り替え患者で80.6%であった.主要評価項目の用量固定期における疼痛コントロールを維持した患者の割合は,それぞれ,89.7%および92.9%であった.中等度から高度の癌性疼痛を対象としたタペンタドールERの忍容性は良好であり,主な有害事象は悪心,嘔吐,傾眠,便秘等のオピオイドに特徴的な事象であった.
  • 佐藤 悠子, 藤森 研司, 石川 光一, 佐藤 一樹, 石岡 千加史, 宮下 光令
    2016 年 11 巻 2 号 p. 156-165
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/13
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    【目的】保険診療情報が格納されたナショナルデータベース(National Data Base,以下NDB)を用いた,終末期がん医療の質の評価の実現可能性と限界を検討した.【方法】NDBのサンプリングデータセット(Sampling Data Set,以下SDS)を用いて,2012年10月の死亡がん患者を対象に死亡14日以内の心肺蘇生術と化学療法の実施率を算出した.【結果】対象者1,233例を解析した.心肺蘇生術と化学療法の実施率は,入院死亡症例(n=1079)で8.2%,3.5%であった.SDSの仕様では,解析対象の化学療法薬剤の27-70%が匿名化されていた.【考察】SDSでは匿名化処理や入院と外来レセプトが紐付けされない等の問題から,過小評価の可能性があり結果の解釈に注意を要する.しかしながら,NDBの特別抽出であればこれらの問題の一部は解決でき,同様の手法で質の評価は可能と考えられた.
  • 松本 俊彦, 日野 佳織, 寺澤 裕之, 中舎 晃男, 上杉 和寛, 西出 憲史, 梶原 猛史, 浅木 彰則, 仁科 智裕, 那須 淳一郎, ...
    2016 年 11 巻 2 号 p. 166-173
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/21
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    【目的】悪性胃十二指腸狭窄に対する胃十二指腸ステント留置術と胃空腸吻合術の成績を比較する.【方法】悪性胃十二指腸狭窄に対し当院でステント留置術を行った25例(S群)と胃空腸吻合術を行った15例(O群)について後方視的に検討した.【結果】臨床的成功率はS群対O群:84%対93%,水分摂取までの期間は0日対2日,経口摂取までの期間は1日対3日,処置後在院日数は9日対23日と全てS群で有意に短かった.入院中の医療費はS群752290円,O群1106170円と有意にS群で軽減が認められた.全生存期間中の医療費では有意な差は認められなかった.【結論】ステント留置術は,胃空腸バイパス術と比較し短期成績に優れている可能性が示唆された.
  • 清水 啓二, 池永 昌之, 杉田 智子, 嶽小原 恵, 數野 智恵子, 久保田 拓志, 大越 猛, 青木 佐知子, 加村 玲奈, 今村 拓也
    2016 年 11 巻 2 号 p. 174-181
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/16
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    【目的】外来がん患者のオピオイド使用を実態調査し,乱用や依存につながる不適正使用の是正を通して,緩和ケアチームの課題を考察する.【方法】2014年の4カ月間に外来通院中のオピオイド使用がん患者について,緩和ケアチームがカルテ調査した.乱用や依存につながる不適正使用とは「がん疼痛または呼吸困難以外の目的でのオピオイド使用」とした.主治医と協議して不適正使用の判断と是正を図った.【結果】オピオイド使用67人中,乱用や依存につながる不適正使用は5人(7.4%)で,その内訳は,①がん疼痛で開始されたが,治療により責任病変が消失:3人(4.5%),②がん疼痛と考え開始されたが,精査で良性疾患と判明:2人(3%)であった.5人中4人でオピオイドを中止できた.【考察】外来でのオピオイド使用は,乱用や依存につながる不適正使用が見逃される危険がある.常に疼痛の原因を可能な限り明らかにする姿勢が重要であった.
  • 坂下 美彦, 藤川 文子, 秋月 晶子, 藤里 正視
    2016 年 11 巻 2 号 p. 182-188
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/20
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    【緒言】SEIQoL-DWは半構造化面接により患者が大切に思う5つの領域に焦点をあてて主観的QOLを測定する方法である.本研究はSEIQoL-DW(以下面接)を用いて抗がん治療患者の大切な領域と主観的QOLについて調べるのを目的とした.【方法】緩和ケア外来において痛みがSTAS-Jで1以下などの適格基準を満たす患者を対象に連続的に面接を実施し,抗がん治療患者と緩和ケアのみの患者群に分け集計した.【結果】抗がん治療群35名,緩和ケア群33名に面接を実施した.抗がん治療群で頻出した大切な領域は,家族94%,がん治療69%,健康43%,友人43%,趣味活動40%であった.抗がん治療群の主観的QOL値は平均61.5で緩和ケア群74.4に比べ有意に低かった.【結論】「家族」はQOLに大きく寄与する大切な領域である.一方で「がん治療」を重要視することは主観的QOL低下に繋がる可能性がある.
  • 岩淵 正博, 佐藤 一樹, 宮下 光令, 森田 達也, 木下 寛也
    2016 年 11 巻 2 号 p. 189-200
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/29
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    【目的】1)終末期医療に関する意思決定者の関連要因を探索すること,2)意思決定者の違いによる受ける医療やQOLへの影響を明らかにすること.【方法】がん・心疾患・脳血管疾患・肺炎で死亡した患者の遺族(N=409)を対象にインターネット調査を実施.終末期医療の主体的な意思決定者を「患者」「家族」「医師」「患者・家族・医師共同」の4件法で尋ねた.【結果】患者と比較して,意思決定者が家族であることには,患者と家族での終末期に関する話し合い(オッズ比〈OR〉=0.52),医師から患者への病状説明(OR=0.77),認知機能低下(OR=1.94)が関連し,医師であることには,医師から患者への病状説明(OR=0.62)が関連した.意思決定者の違いは遺族による患者QOL評価に影響し,医師が意思決定者の場合に有意に低かった(p=0.014).【結論】終末期医療に関する意思決定者の関連要因と影響が明らかとなった.
  • 工藤 朋子, 古瀬 みどり
    2016 年 11 巻 2 号 p. 201-208
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/20
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    【目的】訪問看護師が捉えた利用者遺族を地域で支える上での課題を明らかにする.【方法】全国の訪問看護ステーション1,000件を対象に質問紙郵送調査を実施した.【結果】211件の自由記述を分析し,《グリーフケアはボランティアのため継続が難しい》《遺族アセスメントの不足,紹介する社会資源がわからない》《遺族に関わることに抵抗感がある》《個人情報保護により支援しにくい》遺族に対する《フォーマルサポートが構築されていない》《インフォーマルサポートが構築されていない》など8の課題が見出された.【結論】日本のグリーフケアは制度としての位置づけがなく,収益につながらないため,訪問看護師は遺族の状況が気になるものの,継続した関わりに限界を感じていた.グリーフケアを積極的に行っている事業所,遺族の見守りを地域包括支援センターなどへ引き継いでいる事業所は,保険点数で評価していくことが課題として示された.
症例報告
  • 仙田 正博, 石川 慎一, 上川 竜生, 福永 智栄
    2016 年 11 巻 2 号 p. 510-514
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/01
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    【緒言】メサドンのオピオイド換算比は一定でなく,切り替えに伴う痛みの増強が懸念される.硬膜外ブロックを併用してメサドンを導入した2症例を報告する.【症例1】55歳,男性.大腸がん再発による会陰部痛.経口オキシコドン600 mg/日でも強い持続痛と突出痛のため画像診断が不可能であった.腰部持続硬膜外ブロックとメサドン45 mg/日を併用し開始した.約2週間後メサドン75 mg/日で持続痛はほぼ消失し,MRI撮影が可能となった.【症例2】62歳,男性.前立腺がん脊椎転移による両下肢痛.経口オキシコドン300 mg/日でも体動困難な痛みが継続した.腰部持続硬膜外ブロックとメサドン30 mg/日を併用し開始して痛みが軽減,放射線治療が可能となった,退院時にはメサドン45 mg/日でほとんど痛みを訴えなかった.【結論】硬膜外ブロックにより痛みの増強なく,メサドンへの円滑な切り替えが可能となった.
  • 西山 菜々子, 安部 能成, 中嶋 真一郎
    2016 年 11 巻 2 号 p. 515-519
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
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    【緒言】進行がん患者とのリハビリテーション(以下リハビリ)の目的はQOLの向上であり,患者の希望を探ることから始まる.今回,希望聴取が困難な患者へのリハビリの工夫を報告する.【症例】83歳男性,肺腺がん,脳転移.化学療法,放射線療法を施行したが病勢は進行し,全身倦怠感と呼吸困難にて入院,その後当院緩和ケア病棟へ転院した.転院時,食事は自立,トイレ歩行は軽介助で可能だったが,てんかん発作を生じ右片麻痺と意識障害を呈した.ADLは全介助,意思疎通も困難だったが,患者はその状況下でも自分で食べようとした.作業療法士はADLの観察および非言語的コミュニケーションを用いて患者の希望を読み取り,これをもとにリハビリ介入を行った.その結果,より早期に食事動作が獲得され,患者の満足度は向上した.【考察】希望聴取が困難な場合でも,リハビリの知識や技術を活用することで,患者の希望を支えられる可能性が示唆された.
  • 大澤 岳史, 有賀 悦子, 黛 芽衣子, 久保 佳子, 貫田 みゆき, 日高 あづみ, 御澤 勝将
    2016 年 11 巻 2 号 p. 520-524
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/21
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    【はじめに】がん疼痛悪化との鑑別に苦慮したデノスマブによる急性期反応の1例を報告する.【事例】65歳,男性.肺小細胞がん胸椎転移による右背部から上腹部にかけての疼痛緩和目的で緩和ケアチームに紹介された.デノスマブは4週毎,120 mg/回皮下投与された.初回投与翌日の発熱と全3回の投与において投与翌日から約4日間,既存の骨転移による疼痛と同部位の急激な疼痛悪化を認めた.アセトアミノフェン,非ステロイド性消炎鎮痛薬, オピオイドすべて無効で疼痛緩和に難渋したが,自然軽快した.がん疼痛との鑑別を要したが,投与毎に反復する経過からデノスマブの急性期反応と診断した.デノスマブ中止後,同様の疼痛悪化はみられず良好なコントロールが得られた.【考察】デノスマブの急性期反応における疼痛は見落とされている可能性がある.その詳細は明らかでなく,症例の集積が必要と考える.
  • 西本 武史, 廣岡 めぐみ, 部川 玲子, 公平 弘樹, 高橋 哲也, 島田 瑠奈, 後明 郁男
    2016 年 11 巻 2 号 p. 525-528
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/19
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    【緒言】がん性疼痛に対してタペンタドールを投与したところ発症した過活動型せん妄が,オキシコドンへのスイッチング後,速やかに改善した1例を報告する.【症例】67歳女性.胸腺がん.化学療法経過中にがん性心膜炎となり積極的治療を終了した.胸壁への腫瘍浸潤による体性痛と,背部への放散痛に対してタペンタドール200 mg/日を投与したところ,終日不眠,幻視,思考障害,注意の転導性亢進などが出現.せん妄と診断し,クエチアピンによる対症療法を行ったが改善を認めなかった.やむなくタペンタドールからオキシコドンにオピオイドスイッチングを行ったところ,せん妄は速やかに改善し,疼痛の増悪も認めず在宅療養に移行できた.【考察】タペンタドールのノルアドレナリン再取り込み阻害作用が過活動型せん妄を引き起こした可能性が示唆された.オピオイド誘発性が疑われるせん妄には,スイッチングを検討する必要があると考えられる.
  • 石井 浩二, 松尾 久美, 大野 麻紀, 武藤 成紀, 森下 暁, 永石 恵美, 宗像 千恵, 池田 津奈子, 中嶋 由紀子, 木下 裕久, ...
    2016 年 11 巻 2 号 p. 529-533
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/27
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    【緒言】腎機能低下のためモルヒネが使用困難であった,内科的,外科的に改善の見込めない末期心不全患者の呼吸困難に対し,オキシコドン注射剤を用いて良好にコントロールできた症例を経験したので報告する.【症例】70歳,男性,拡張型心筋症のため以前より入退院を繰り返し,内科的・外科的治療を行われていた.多量の強心薬および利尿薬を使用するも改善なく呼吸困難の増悪を認めたが,腎機能低下のためにモルヒネの代替薬としてオキシコドン注射剤を使用した.経過中を通して心不全の改善は認めなかったが,少量の持続静注により呼吸困難は改善した.【考察】末期心不全患者は腎機能低下を伴うことが多く,呼吸困難緩和目的のモルヒネ使用が困難であることが多い.慎重な観察下にオキシコドンを代替薬として使用することにより,末期心不全患者の呼吸困難を緩和することができる可能性がある.
活動報告
  • 佐藤 恭子, 依田 光正, 樋口 比登実, 川手 信行, 水間 正澄
    2016 年 11 巻 2 号 p. 906-909
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/25
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    【目的】当院緩和ケアチーム(以下PCT)が介入している患者のうち約3割がリハビリテーション(以下リハ)科依頼されている.これらの患者についてADLの変化と転帰について現状調査をおこなった.【方法】1年間に当院PCTが介入していた患者のうちリハ依頼があった患者について,リハ内容,介入時のBarthel Index(以下B.I.)と終了時のB.I.,転帰について後方視的に調査した.【結果】対象患者は86名(平均年齢は65.4歳),抗がん治療が行われていたのは42名であった.B.I.は,上昇35%,不変20%,低下45%で,転帰は自宅退院20.9%,死亡47.7%,転院30.2%であった.B.I.低下群では死亡,転院が多かった.【考察】進行がん患者は治療や症状により容易にADLが低下し回復に時間がかかる.多職種チームでリハの目標を適切に設定しADL,QOLを維持する工夫が重要である.
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