妊娠性歯肉炎の原因は, 性ホルモンの分泌量の増加と細菌性プラークによるものと考えられている。近年, 性ホルモン分泌量の増加は, 宿主の免疫機能に影響を与えることが知られ, 研究が行われている。
本研究では, 妊娠性歯肉炎の発症の過程について検討するために, ヒト多形核白血球 (PMN) に, 性ホルモンのestradiolとprogesterone, さらにこれらの性ホルモンで発育促進される-
Prevotella intermedia (
P. intermedia) の超音波抽出物 (
P. i. -BE) を同時に作用させ, その際のPMNの貪食能に対する影響と, 組織破壊に与するIL-1β の放出量について検索し, 以下の結果を得た。
1. PMNの貪食率は,
P. i. -BEを添加すると有意に低下し, さらに性ホルモンを同時に添加すると, 性ホルモンの濃度依存的に有意な低下を示した。
2. PMNの貪食状態の観察では, 性ホルモンと
P. i. -BEを同時に添加すると, 細胞内にビーズが取り込まれている割合は, 性ホルモンの濃度依存的に有意に低下した。
3. PMNのIL-1β の放出量は,
P. i. -BE存在下において, 性ホルモンを同時に添加することにより有意に増加した。
以上の結果より, 妊娠時の歯周組織における性ホルモン濃度の増加や, 歯周病原性細菌が, PMNの貪食能を低下させ, さらにIL-1β の放出量を増加させることが考えられ, 妊娠時において, 性ホルモンと
P. intermediaは, 歯周疾患の発症に影響を及ぼすことが示唆された。
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