日本歯周病学会会誌
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44 巻, 4 号
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  • 米田 栄吉
    2002 年 44 巻 4 号 p. 315-321
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉増殖症には遺伝性と, 薬物の副作用により発症するものとがあるが, 遺伝的なものは極くまれで, 薬物に起因するものが圧倒的に多く見られる。本稿は, 薬物性歯肉増殖症に関する多数の研究の中から, 疫学, 病理組織学的特徴および発症の多方面にわたる機序についての文献を総説した。
  • 野口 和行
    2002 年 44 巻 4 号 p. 322-328
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    これまでの研究により, prostaglandin (PG) E2が歯周病の病因に関連することが示されてきた。このPGE2の産生機構として, 免疫組織学的研究, 培養細胞あるいは動物実験の研究から, 炎症性誘導型PG合成酵素であるcyclooxygenase-2 (COX-2) が重要な働きをしていることが明らかにされた。PGE2は血管透過性亢進作用や骨吸収作用などの起炎的作用を有している一方, 炎症性サイトカインの産生抑制作用, また骨形成作用を示す場合があるなど抗炎症的作用の側面もある。これらのPGE2の作用は4種類のサブタイプからなるPGE2レセプター (EP1, EP2, EP3, EP4) を介して発揮される。今後, PGと歯周病の病態との関連がより明らかとなり, 有効な歯周病治療薬の開発へと繋がる可能性が期待される。
  • 阿部 祐三, 深井 浩一
    2002 年 44 巻 4 号 p. 329-341
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯槽骨露出を伴う歯周外科処置後の歯周組織の二次治癒について究明し臨床に資することを目的として臨床的, およびラットを用いた組織学的検索を行った。対象は頬舌側部でのdenudation (歯槽骨露出術を伴うフラップ手術; De) を行った21部位, 歯間部でのdenudation (interdental denudation; ID) を行った37部位, 頬舌側部での閉鎖型フラップ手術 (FO) を行った20部位とした。臨床的検索項目として, PD (Probing Depth), CAL (Clinical Attachrnent Level), 歯肉の垂直的厚径, biological widthについて観察し, 手術法における比較としてDeとFO, 部位における比較としてDeとIDの経時的変化について比較検討した。また, ラットを用い歯槽骨露出を伴う歯周外科処置を再現し, その創傷治癒について組織学的に観察し, 以下の結論を得た。
    1. 手術法における比較によりDeとFOの間にPDの減少は差を認めなかったが, その治癒経過に差を認め, De後のCALのゲインは術後6ヵ月まで認められた。2. 部位における比較によりDeとIDの問にCALや歯肉の垂直的厚径は統計学的に差は認めなかったものの, 経時的変化の推移から, 上に歯間部で6ヵ月以降も歯肉の厚さの増加が予想された。3. 部位における比較により頬舌側部と歯間部のbiological widthに差を認め, 歯間部の方が大きかった。4. ラットによる組織学的観察より, 歯槽骨を露出した歯周外科処置後, 新生セメント質の形成を認める結合組織性付着が得られた。
    以上より, DeおよびID後の補綴処置のマージンの設定時期は, 術後6ヵ月程の経過観察を要すると考えられた。CALと歯肉の垂直的厚径の変化量はIDの方がDeより大きい傾向があり, 術後6ヵ月のbiological widthは部位差を認めたことから, 以後の変化についても考慮すべきと考えられた。ラットでの組織学的観察により, ヒトでも結合組織性付着の可能性が示唆された。
  • 須藤 美央, 葛城 啓彰, 斎藤 和子
    2002 年 44 巻 4 号 p. 342-355
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周炎における組織破壊は, 歯周病原性細菌の直接的病原性因子のみならず歯周病原性細菌に対する宿主の過度の炎症反応や免疫反応が関与していると考えられている。そこで本実験は歯周病原性細菌により刺激された好中球の歯肉上皮細胞 (KB細胞) に対する傷害性を検討することを目的として行った。歯周病原性細菌にはPorphyromonas gingivalis (Pg), Fiusobacterium nucleatum (Fn), Actinobacillus actinomycetemcomitans (Aa) を用いた。また, 歯周病原性細菌により刺激された好中球からの活性酸素, 腫瘍壊死因子α (TNFα), プロスタグランジンE2 (PGE2) 産生とエラスターゼ, 好中球ゲラチナーゼ (MMP-9) 放出について検討した。
    1. Pg, Fn, Aa実験群においてKB細胞の細胞生存率は, 25~30%に低下したが, 菌種による著明な差はなかった。
    2. Pg, Fn, Aa実験群においてPMN単独群よりも高い量の活性酸素, エラスターゼ, MMP-9, TNFα, が検出された。活性酸素量は刺激した菌種間で差を認めたが, エラスターゼ量, TNFα量では認めなかった。
    3. 好中球から放出されたエラスターゼ量とMMP-9量との間に正の相関を認めた。
    4. 好中球からのPGE2産生はPg群, Fn群に比べ, Aa群で有意に低下していた。
    以上のことより, 歯周病原性細菌により刺激された好中球による上皮細胞への傷害は, 単一要因によるものではなく様々な因子の相互作用による惹起されると考えられた。
  • 西田 栄昭
    2002 年 44 巻 4 号 p. 356-365
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    早期発症型歯周炎 (early-onset periodontitis: EOP) の進展には, 遺伝子を含む多くの宿主リスク因子が関わる。本研究では, EOPの進展に早期老化が関与する可能性を検討する目的で, 末梢血白血球のテロメア長および歯肉由来線維芽細胞の継代培養ごとのテロメア長の短縮率をEOP患者および同年代の健常者との比較から調べ, EOPの進展におけるテロメアの関わりを考察した。
    EOP患者21名および健常者50名から末梢血を採取し, 上記の被験者10名を含むEOP患者6名および健常者7名の歯肉を採取し, 老化細胞になるまで継代培養した。末梢血白血球および歯肉線維芽細胞からゲノムDNAを抽出し, サザンハイブリダイゼーションによってテロメア長を調べた。EOP患者および健常者群間で末梢血白血球のテロメア長に有意差はなかった (p=0.20)。テロメア長の年間短縮率は, 年齢に対して有意な負の相関を示し, 2群間で有意差はなかった (p=0.64)。被験者間のテロメア長は, 大きな個体差を示し, テロメア長が極端に短いEOP患者が存在した。歯肉線維芽細胞の継代ごとのテロメア長の短縮率には両群間で差がなかった。歯肉線維芽細胞における老化特異的酵素の1つであるβ-ガラクトシダーゼ染色陽性率は, 継代数p<0.001) およびテロメア長 (p<0.001) と有意な負の相関関係を示した。
    (この結果は, EOP患者は群で見る限り, 全身および局所レベルにおいてテロメア長の短縮を示さなかったが, テロメア長の短いEOP患者群を集め, これら患者の細胞機能を解析する事で, 早期老化の関わるEOPの進展がより詳細に考察できるものと思われる。
  • 神田 昌宏, 小川 智久, 鴨井 久一
    2002 年 44 巻 4 号 p. 366-375
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    妊娠性歯肉炎の原因は, 性ホルモンの分泌量の増加と細菌性プラークによるものと考えられている。近年, 性ホルモン分泌量の増加は, 宿主の免疫機能に影響を与えることが知られ, 研究が行われている。
    本研究では, 妊娠性歯肉炎の発症の過程について検討するために, ヒト多形核白血球 (PMN) に, 性ホルモンのestradiolとprogesterone, さらにこれらの性ホルモンで発育促進される-Prevotella intermedia (P. intermedia) の超音波抽出物 (P. i. -BE) を同時に作用させ, その際のPMNの貪食能に対する影響と, 組織破壊に与するIL-1β の放出量について検索し, 以下の結果を得た。
    1. PMNの貪食率は, P. i. -BEを添加すると有意に低下し, さらに性ホルモンを同時に添加すると, 性ホルモンの濃度依存的に有意な低下を示した。
    2. PMNの貪食状態の観察では, 性ホルモンとP. i. -BEを同時に添加すると, 細胞内にビーズが取り込まれている割合は, 性ホルモンの濃度依存的に有意に低下した。
    3. PMNのIL-1β の放出量は, P. i. -BE存在下において, 性ホルモンを同時に添加することにより有意に増加した。
    以上の結果より, 妊娠時の歯周組織における性ホルモン濃度の増加や, 歯周病原性細菌が, PMNの貪食能を低下させ, さらにIL-1β の放出量を増加させることが考えられ, 妊娠時において, 性ホルモンとP. intermediaは, 歯周疾患の発症に影響を及ぼすことが示唆された。
  • 西村 浩司, 小田島 朝臣, 川浪 雅光
    2002 年 44 巻 4 号 p. 376-386
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, rhBMP-2による長期的な歯周組織再生への影響を検討すること, および歯根吸収と骨性癒着の対策として加藤らが考案した, 根面とrhBMP-2移殖材との間にスペーサーを用いる方法 (スペーサー法) の有効性を検討することである。サル口蓋側水平性欠損を作製し, BMP群ではrhBMP-2配合PGS (ポリ乳酸グリコール酸共重合体/ゼラチンスポンジ複合体, 配合比率1μg/mm3) を, S・BMP群では スペーサーとしてPGSを根面に密着させ, その上にrhBMP-2配合PGSを, PGS群ではPGSのみを移植した。観察期間は6カ月とし, 病理組織学的観察と組織計測を行つた。その結果, 骨, セメント質の新生率はBMP群, S・BMP群がPGS群より有意に大きく, 機能的な配列を示した線維で結合していた。骨性癒着率はS・BMP群, PGS群がBMP群より有意に小さかった。
    骨性癒着は既存の歯根膜から離れた部分に限局しており, 活発な置換性歯根吸収はほとんど認められなかった。歯根吸収率は3群間に有意差は認められず, 表面吸収型のものがわずかに観察され, 炎症性歯根吸収は認められなかつた。上皮の根尖側移動はBMP群, S・BMP群がPGS群より有意に小さかった。以上の結果から, rhBMP-2によって新生した歯周組織は長期的に維持されて機能し得ることが明らかとなった。また, スペーサー法の応用により, 骨性癒着を減少できることも示された。
  • 石川 久美子, 南 睦美, 松下 健二, 古市 保志, 鳥居 光男, 和泉 雄一
    2002 年 44 巻 4 号 p. 387-395
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Vascularendothelialgrowthfactor (VEGF) は血管透過性を亢進させる因子として知られたタンパク質である。歯周病患者の歯肉溝滲出液 (gingival crevicular fluid: GCF) 中のVEGFの量を測定し, 歯周局所におけるVEGFの変動を検索した。成人性歯周炎患者17名 (男性5名, 女性12名) より, 上顎前小臼歯部34部位選択した。Baseline (SRP前), SRP2週間後, 1ヵ月後, 2ヵ月後にprobing Pocket depth (PPD), bleeding on probing (BOP), plaque index (PII), gingival index (GI), probing attachment level (PAL), GCF量を測定した。GCF中VEGFの定量はsandwich enzyme-linked irnmunosorbent assay法を用いた。Baseline時では, VEGF総量はPPD, PAL, BOPと相関が認められた。SRPを行った部位における経時的変化では, 2週間後のVEGF濃度でのみ, SRP後2ヵ月後におけるROP (+) とBOP (-) 群に有意な差を認めた。VEGF総量は歯周炎の病態と相関を示し, VEGF濃度はSRP2ヵ月後に改善が認められた群で低い値を示すことが明らかになった。
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