日本歯周病学会会誌
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65 巻, 2 号
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ミニレビュー
症例報告
  • 宇井 みゆき
    2023 年 65 巻 2 号 p. 58-68
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/14
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    過去の歯科治療によるトラウマから,恐怖心・不信感が根強く,治療に消極的であった広汎型慢性歯周炎Stage IV Grade Cの患者に対し,歯周基本治療を通してラポールを確立し患者と協働にて病状安定に導いた一症例を報告する。

    患者は55歳男性,歯肉の腫脹とブラッシング時の出血,上顎右側臼歯の動揺を主訴に来院した。臨床所見は全顎的な歯肉の発赤,腫脹を認めた。プロービング時の出血(BOP):85.3%,プロービングポケットデプス(PPD)4 mm以上58.3%,6 mm以上7.7%,O'Learyのプラークコントロールレコード(PCR)85.6%,エックス線所見では全顎的な水平性骨吸収を認めた。

    初診時の医療面接にて患者より過去の歯科診療に対するトラウマがある事,浸潤麻酔を使用した治療や外科治療は希望しない事を告げられた。丁寧な説明と共に患者に対して傾聴の姿勢を保ちつつ,患者教育を徹底した。

    治療が進むにつれ,患者自身が治療効果を実感した事で歯科治療に対する考え・態度が軟化し,積極的に治療に参加するようになった。その結果,治療効果が格段に上がり,歯周外科治療を行わず病状安定に至り,2018年12月,SPT(Supportive Periodontal Therapy)へ移行した。患者自身がSPTの必要性を十分理解している為,継続受診がなされており,現在も病状は安定している。

  • 石田 房子, 大森 一弘, 佐々木 知津, 平松 恭子, 中川 眞奈美, 松原 ゆかり, 井手口 英隆, 徳善 真砂子, 滝川 雅之
    2023 年 65 巻 2 号 p. 69-79
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/14
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    重度の歯周炎症が糖尿病の病態に悪影響を及ぼすことは知られている。今回,急激な血糖値(HbA1c)悪化の背景に,重度歯周炎症の関与を疑った症例を報告する。

    患者は78歳,男性。2021年3月,血糖値の急激な悪化(HbA1c=13.8%)をかかりつけ内科で指摘され,大学病院糖尿病内科に教育入院した。同科で歯周病検査の必要性を指摘され,同院歯科(歯周科部門)へ紹介された。同歯科での検査において,重度の歯周炎の進行を指摘され,専門的な歯周治療介入が早期に必要と判断された。歯周病専門医のいる当院での加療を希望し,2021年5月に受診した。

    歯周組織検査において,4 mm以上のPPDの割合は76%,BOP陽性率は81%,PCRは100%,PISAは3,217 mm2であった。エックス線検査所見では,全顎的に中等度の水平性骨吸収の進行を確認し,37,47には根尖におよぶ骨吸収像が存在した。診断は,広汎型重度慢性歯周炎(ステージIV,グレードC)とした。糖尿病の病態への影響を考慮しながら,局所抗菌薬併用SRPを主体とした歯周基本治療を行った。

    歯周治療に対する反応性は非常に良く,歯周炎症の改善(再評価時のPISA:605 mm2)とともに,HbA1c値は6.5%に改善した(2022年1月)。緊密な医科歯科連携によって,早期に専門的歯周治療介入を行えたことが良好な血糖値の改善につながったと考える。

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