日本歯周病学会会誌
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60 巻, 4 号
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ミニレビュー
原著
  • 白川 哲, 松島 友二, 早田 優樹, 中野 瑶子, 仲田 桃子, 中川 朋人, 永島 百合, 二階堂 雅彦, 五味 一博
    2018 年 60 巻 4 号 p. 173-182
    発行日: 2018/12/28
    公開日: 2018/12/28
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    歯周病治療薬アセスは配合成分(ラタニア,カミツレ,ミルラ)に抗炎症・歯肉収斂作用があり歯周病を改善するとの報告がある。これらの成分には抗菌性があることが示されているが,アセス使用に伴う口腔内細菌に与える影響についての検討は行われていない。本試験ではブラッシング時にアセスを併用し臨床パラメーターならびに口腔内細菌に与える影響を調べることを目的とした。

    試験はランダム化非盲検並行群間比較試験として行った。ブラッシングを朝夕2回,各5分間アセスあるいは対照製剤を用い行わせ,開始日,2週および4週後にGI,PD,BOP,PCR測定,および唾液サンプル法による細菌検査をPCR- Invader法にて行った。

    アセス群ではGI,BOPおよびPDは開始日と比べ2週ならびに4週後で有意な改善を認めた。一方で対照製剤群はどの臨床パラメーターにおいても改善を認めなかった。細菌検査では,アセス群は対照製剤群に比べ総菌数の有意な減少を認めた。アセス群の群内比較ではT.forsythiaT.denticolaP.intermediaにおいて有意な減少を認めた。さらに歯周病原細菌の減少率を検討したところ,総菌数,Red complexおよび5菌種においてアセス群で有意に高かった。

    アセスは,歯周病原細菌を含む口腔内細菌の減少を引き起こすとともに,臨床パラメーターの改善を促すことが示された。

  • 杉原 俊太郎, 青山 典生, 和泉 雄一, 三辺 正人
    2018 年 60 巻 4 号 p. 183-191
    発行日: 2018/12/28
    公開日: 2018/12/28
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    歯周病は罹患率の高い感染症であるが,歯周病を有していながら患者にその自覚がなく,治療を適切に行えていないケースも多くあるものと考えられる。初期の歯周病の段階から病態を把握できれば,その後の治療と予防において非常に有用である。以上のことから,本研究の目的は,歯周病の状態を把握するためのアンケートでの適切な聴取方法を検討することである。

    本研究の被験者として,2012年から2015年に東京医科歯科大学医学部附属病院循環器内科病棟に入院した循環器疾患患者990名を対象とした。患者に対し,自己申告のアンケートにより,歯周組織の状態を評価させた。さらに,口腔内検査として,プロービングポケット深さ(PPD),クリニカルアタッチメントレベル(CAL),プロービング時の出血の有無(BOP)を測定した。

    結果として,「あなたは歯肉の病気があると思いますか?」,「歯がぐらぐらしていると感じたことはありますか?」,「歯科医療者に歯の周りの骨が減っていると言われたことがありますか?」という設問に対し,「いいえ」と答えた患者群と比較して,「はい」と回答した患者群において統計学的有意にPPD,CAL,BOPの数値が高かった。また上記の設問で「はい」と答えた患者群では,4 mm以上の歯周ポケットを有する者が多かった。

    今回の調査から,歯周病患者をスクリーニングするのに有効な設問が示唆された。

症例報告
  • 高橋 佳奈, 藤本 梓, 藤本 淳
    2018 年 60 巻 4 号 p. 192-200
    発行日: 2018/12/28
    公開日: 2018/12/28
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    広汎型重度慢性歯周炎患者を歯周基本治療にて治療した一症例について報告する。

    患者は42歳女性。3ヶ月前から歯肉の発赤,腫脹が著しく出血が多くなったため前医を受診,当院を紹介され来院した。臨床所見は全顎的に歯肉の発赤,腫脹を認めた。特に上顎左側部には炎症性歯肉増殖がみられた。プロービング時の出血(BOP):31.9%,プロービングポケットデプス(PPD):4 mm以上52.1%,O'Leryのプラークコントロールレコード(PCR)50%。エックス線所見では下顎前歯部および臼歯部の一部に垂直性骨吸収を認めた。

    検査結果の説明と口腔清掃指導を繰り返し行い,スケーリング・ルートプレーニングを行った。患者のモチベーション向上の一環として,長期経過や生活背景を患者とともに確認し,口腔内の状態について患者自身の理解の向上を図った。歯周基本治療が進行するとともに口腔清掃状態が向上し,歯肉の腫脹が消退した。再評価時にデンタルエックス線写真上で歯槽骨の改善を観察したため,歯周外科治療は行わず,口腔機能回復治療を行った。2015年9月サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)へ移行した。

ポジション・ペーパー
  • 稲垣 幸司, 内藤 徹, 石原 裕一, 金子 高士, 中山 洋平, 山本 龍生, 吉成 伸夫, 森田 学, 栗原 英見
    2018 年 60 巻 4 号 p. 201-219
    発行日: 2018/12/28
    公開日: 2018/12/28
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    日本歯周病学会では2006年に定めた歯周病分類システムの中で,「喫煙は歯周病の最大の環境リスクファクターである」という認識に基づき,リスクファクターによる歯周炎の分類の1つとして喫煙関連歯周炎を提示した。喫煙が関連する歯周炎に対する歯周治療において,患者の喫煙状況の確認,喫煙者への喫煙の健康障害についての情報提供による禁煙支援は,歯周治療の反応や予後を良好に維持するため,重要である。本論文では,喫煙に関連する国情,喫煙者の動向,禁煙支援教育の現状,歯科における禁煙支援の効果に関するエビデンスおよび歯周治療における禁煙支援の手順を概説する。

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