日本歯周病学会会誌
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28 巻, 2 号
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  • 大塚 健司
    1986 年28 巻2 号 p. 445-467
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Fusobacterium nucleatum ATCC 10953株の超音波処理物を遠心して得た細胞エンベロープを, リチウムドデシル硫酸あるV・はN一ラウロイルザルコシン酸ナトリウムで抽出処理し, 計4種類の41K蛋白画分を調製した。この蛋白画分は親水性透過孔形成能力, すなわちポーリン活性を有し, 次にしめす免疫生物学的作用を示した。1. BALB/cnu/nuを含むマウス脾細胞に対して強力なB細胞マイトジェン活性および多クローン性B細胞活性化作用を示した。2. 内毒素性リボ多糖 (LPS) と同様, モルモットの腹腔マクロファージを刺激してグルコサミンの取り込み, スーパーオキサイドアニオンの産生をたかめ, またチミジンの取り込みを抑制する作用を示し, 3. LPSの作用しない実験条件下でヒト末梢血単球の遊走能を充進させ, 4. ヒツジ赤血球とともにマウスに腹腔内注射した際, 脾の抗体産生細胞数を増加させる免疫アジュバント作用を呈した。
    化学分析の結果, 供試したポーリン画分はペプチドグリカンを含まないが, LPSの存在が除外できないことが示された。しかし, 供試ポーリン画分の脾リンパ球に対する刺激作用は, LPS低応答性のC3H/HeJマウスの脾細胞に対しても発揮され, またLPSの作用を抑制するポリミキシンBの添加によっでも抑制されず, したがってポーリン蛋白自体の作用であることが確認された。
  • 杉崎 賢一
    1986 年28 巻2 号 p. 468-483
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患の発現に重要な役割をもっと考えられる歯周疾患病原菌 (periodontopathic bacteria) より内毒素を抽出, 精製し, それらの直接作用としてヒト正常歯肉線維芽細胞 (Gin-1) に対し, どの様な代謝変動を与えるかを細胞のグルコース消費量及び糖質代謝系を中心とした酵素活性について比較検討した。使用したLPSは, (1) Bactenides gingivalis (381), (2) B. intermedius (20-3), (3) B. melaninogenicus (ATCC 15930), (4) Actinobacillus actinomycetemcomitan3 (Y-4), (5) Capnocytopkaga species (M-12), (6) Eikenella corndens (1073), (7) Fusobacterium nucleatum (ATCC 25586) 及び市販LPSである (8) Esckerickia ooli 0127: B8, (9) Salmonella thypkimuriumの計9種類を用いた。
    Gin-1 fibroblastのグルコース消費量はその細胞数, 生存率が変化しないにもかかわらず, LPS添加により様々な抑制効果が認められた。IC50で比較してみるとC. speciesおよび, F. nucleatumではその値が280μg/mlと最も強い抑制効果を示した。
    そこで, グルコース消費量に変化が認められなかった10μg/ml濃度の各LPS量をヒトGin-1細胞に添加した場合, malate dehydrogenase, glucose-6-phosphate dehydrogenase, pyruvate kinase, lactate dehydrogenaseにそれぞれ特有な代謝変動を与えることが明らかになった。
  • 井上 純一
    1986 年28 巻2 号 p. 484-499
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Moderate periodontitis患者の歯周初期治療に伴う歯周ポケット内細菌叢の変動を検討した。初診時では, 偏性嫌気性グラム陽性桿菌が41.3%と高率を占め, genusレベルではBacteroides (18.5%), Eubacterium (16.8%) およびActinomyces (15.7%) が優勢であった。ブラッシング指導後では, 偏性嫌気性グラム陽性桿菌が減少し, 通性嫌気性グラム陽性桿菌の増加傾向が認められ, ディープ・スケーリング後ではその傾向がさらに顕著であり, そのうち通性嫌気性のActinomycesの増加が特徴的であった。以上の成績から, moderate periodontitisの場合, advancing periodontitisと比較して, 通性嫌気性菌の分離比率が若干増加しているものの, その構成菌は極めて類似しており, Eubacterium, Bacteroides, Actinomycesが優勢であることが明らかになった。それゆえ, periodontitisの増悪には, これらの偏性嫌気性菌の関与が強く示唆される。
  • 梶川 潔
    1986 年28 巻2 号 p. 500-515
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    イヌの歯肉溝に外科用縫合糸を結紮することにより惹起した実験的歯周炎を用いて歯肉溝滲出液 (GCF) 中のグリコサミノグリカン (GAG) について検討した。結紮0日, 7日, 21日, 60日, 90日目のGCF-GAGを抽出し, また結紮0日, 90日目の血清GAGについて, セルロースアセテート膜二次元電気泳動法による定性, 定量分析を行った。
    健常時GCF-GAGの主体はヒアルロン酸であり, 稀にヘパラン硫酸を検出した。両成分は急性炎症期に急激に増加し, 慢性期に移行するに伴い, 漸次健常時の値に近づく傾向を示した。炎症の発症とともにコンドロイチン硫酸とデルマタン硫酸が出現し, 前者は特に著明な変動を示した。また血清GAGは結紮0, 90日目ともにその主成分はlow sulfatedコンドロイチン硫酸であり, GCF-GAGとは異なっていた。従って, GCF-GAGは血清由来ではなく, 歯周組織のdegradation産物であることが強く示唆された。
  • 田中 龍男
    1986 年28 巻2 号 p. 516-530
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    いわゆる妊娠性歯肉炎発症の機序の一端を明らかにするため, Wistar系ラット歯肉を対象として, 妊娠による変化を組織学的に検索し, さらにグリコサミノグリカン代謝の変化をオートラジオグラフィおよび生化学的手法を用いて追求した。その結果, 妊娠時には接合上皮の肥厚, 接合上皮細胞間隙の増大と同部への多形核白血球の浸潤, 接合上皮下結合組織での毛細血管の拡張を認めた。オートラジオグラフィ所見では, 3H-グルコサミンの取り込みは, 非妊娠, 妊娠に関らず結合組織に比べ接合上皮, 歯肉溝上皮, 口腔上皮で多く認められたが, 非妊娠時に比して上皮, 結合組織のいずれにおいても妊娠時に多く認められた。また, 妊娠時歯肉でのin vivo3H-グルコサミンの取り込みの増加は, 主としてヒアルロン酸合成能の亢進によることが明確となり, 妊娠時歯肉では, ヒアルロン酸代謝を中心とする上皮のバリアー機能に変化を生じることが示唆された。
  • 2. 咬合調整前後における咬合接触部の形態的解析
    西本 正純, 荒木 久生, 宮田 隆
    1986 年28 巻2 号 p. 531-545
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    咬合調整前後における咬合接触領域の形態的解析を目的に, 画像解析装置 (IMAGE PC, edec社製) にパーソナルコンピューターを連結させたシステムを用い, 咬頭嵌合位で採得された咬合採得物 (バイトチェッカー, GC社製) から咬合接触面積 (OCA), 咬合接触部位, 上下顎咬合面問距離 (LG1°) を測定した。被験者は, 咬合性外傷を認めた患者のうち, 欠損歯や補綴物などがなく矯正学的問題のない永久歯列を有する11名で, 第一小臼歯から第二大臼歯を対象に測定を行い, 以下の結論を得た。咬合調整によって, 左右臼歯部のOCAの総和と各歯ごとOCAについて検討したところ, いずれもその左右差に均等化の傾向が認められ, 特に各歯ごとでは第一大臼歯部に統計学的に有意な均等化傾向が認められた。一方, LG1° についても臼歯部の総和で均等化の傾向が認められたものの, 各歯ごとでは, 統計学的に有意な均等化の傾向は認められなかった。
  • 長野 恭輔
    1986 年28 巻2 号 p. 546-577
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    感染根管歯における歯周外科処置後の創傷治癒過程を検索する目的で, ラットを用い, 対照群は上顎臼歯の生活歯に実験群は感染根管歯に歯齦被弁手術を行い, 創傷治癒過程を検索した。その結果, 実験群の感染根管歯の術後1週では, 強い炎症性細胞浸潤が観察された。また, 2週以降付着上皮の根端側方向への侵入が顕著に認められ, 10週での病理組織学的計測の結果, 明らかに上皮の根端側方向への侵入量の増加に有意差が認められた。また, 電顕的観察において, 実験群の感染根管歯では白亜質再生過程は生活歯に比較し著しく遅延し, さらに, 露出した象牙質表面にしばしば多核の巨細胞による根面吸収が観察された。
    これらの実験群における露出した象牙質表面付近の種々なる組織変化は感染根管内の為害物質が象牙細管を通じて, 起炎物質として作用し, 象牙質表面付近に炎症が生じた結果であると考えられる。
  • 鬼島 茂
    1986 年28 巻2 号 p. 578-588
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究はウイスター系ラットにActinomyoes viscosus Ny 1 R 2を定着させ, 初期歯肉炎を惹起させた。抗体投与の結果, 抗体投与群の血清抗A. viscosns Ny 1 R 2抗体価はPBS投与群に比べて著明に上昇した。組織学的には第一第二臼歯歯間乳頭上皮内好中球数は抗体投与群でPBS投与群に比べて減少する傾向にあった。A. viscosus Ny 1 R 2菌数は抗体投与群PBS投与群間で有意差はみられないものの, 抗体投与群で標準偏差の減少がみられた。
    以上の知見よりA. viscosus Ny 1 R 2抗体の移入は, A. nscosus Ny 1 R 2惹起歯肉炎に対してわずかに抑制効果をもたらすことが示唆された。
  • 土田 和由
    1986 年28 巻2 号 p. 589-605
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    24匹のゴールデンハムスターの上顎第1臼歯口蓋側歯肉を剥離した後に6週間にわたり結紮を施して付着を人工的に喪失させた結果, 結紮除去4週後に長さ平均0.22mmの歯根面の露出が観察された。次にこの部位に歯肉剥離掻爬手術を施行し, その術後の治療を主に付着の回復の面から組織学的に観察した。その結果, 上皮性付着は術後3日~1週で形成され, 接合上皮の先端はルートプレーニング部の最根尖側部に達していた。術後2週まで上皮付着の高さにはほとんど変化がなかったが, 術後4週例の1部で接合上皮先端の位置が2週例よりも歯冠側にあり, 上皮下では結合組織とルートプレーニングされた根面との接触およびセメント質様の物質の添加と歯面に垂直に配列する線維が観察された。この結果は上皮性付着が結合組織性付着に置換する可能性を示唆している。
  • 2. O2産生におよぼす血清の影響
    下島 孝裕, 岩川 吉伸, 中村 安隆, 西本 正純, 楠 公仁, 丸本 淑子, 池田 克巳
    1986 年28 巻2 号 p. 606-611
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    第1報にひき続き, 好中球のO2産生におよぼす血清の影響について検討を加えた。方法は, ヒト末梢血より単離した好中球を用い, O2産生をNBT還元法およびチトクロームC還元法によって調べた。
    その結果, 健常者の血清は歯周疾患患者のそれに比較して有意に好中球のNBT還元能を高めることがわかった。そしてこの効果は新鮮血清で最も著明であったが, 血清の非働化あるいは血清処理後の洗浄によっても残存した。
    血清をゲル濾過法によって分離し得たアルブミンの添加は, グロブリンの添加に比して明らかに高い好中球のNBT還元活性を示し, 血清中へのEDTAあるいはCa2+-ionophore A-23187の添加は, 鋭敏にNBT還元活性に影響を及ぼした。一方, 血清はチトクロームCを直接還元するが, cyto Dあるいはcon Aで刺激した好中球のO2産生も有意に増強させた。
    以上の成績は, 血清中の複数の成分が好中球の貪食能あるいはO2産生機序への関与を示し, とくに血清アルブミンが好中球の細胞膜に直接的に作用してNBT還元を亢進させている可能性を示唆した。
  • 高田 耕平, 西村 和晃, 白井 義英, 山田 実, 中西 徹, 山岡 昭, 尾上 孝利, 佐川 寛典
    1986 年28 巻2 号 p. 612-619
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周ポケット領域の組織変化を3次元的に観察し, これらの変化とその部における細菌との因果関係を明確にするため, 同一試料における根面とそれに対応する歯周ポケット壁, および歯-歯肉割断面を走査電子顕微鏡をもちいて検索した。
    ポケットに曝されていた根面の歯頸側1/3には, attached plaqueが散在しており, その部に対応するポケット壁には上皮細胞の剥離が認められた。露出された顆粒層においては上皮細胞間に桿菌を主体とした細菌集落が見られた。歯肉割断面においては上皮細胞間隙の著しい拡大がみられ, 上皮直下の固有層にはspirochetesが散見された。さらに深部の結合組織には夥しいspirochetesの集落が認められた。
  • 佐々木 静治, 茂木 久和, 蝦名 徹哉, 石川 潤一, 遠藤 英昭, 神山 義信, 堀内 博
    1986 年28 巻2 号 p. 620-630
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    免疫群 (I) および非免疫群 (N-I) 普通飼育ラット局所にendotoxinを1回刺入した時の抗体産生状況の変化および歯周組織の変化を病理組織学的に検討した。その結果, 1) 免疫操作によりI群では, 26~28のPHA titerが得られた。2) N-I群の8匹中5匹では, endotoxinに対して20~22の自然抗体がみられた。3) endotoxinの局所投与後においても, I群では, 血清中の抗体価には変動がみられなかった。N-I群ではendotoxinの局所投与後徐々に抗体価の上昇がみられ, 1週後では24~25となった。4) 病理組織学的所見では, I群においてendotoxinを注入した部位を中心として滲出性変化が強くN-I群と比較し炎症性細胞浸潤程度に差がみられた。I群およびN-I群でも経時的な炎症の推移は, 24~48時後問では好中球を主体とした炎症性細胞浸潤であった。72~96時間後には注入部に浸潤する細胞はリンパ球が主体をしめ一部では線維芽細胞もみられた。1週間後には依然として局所にリンパ球, 形質細胞などの浸潤がみられたが, 線維性組織で修復された像も認められた。
  • 渡辺 久, 杉山 栄一, 堀部 元雄, 石川 烈
    1986 年28 巻2 号 p. 631-638
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患関連菌に対する血清抗体価が歯周治療のどの段階で変動するかを調べるために, 歯周疾患患者11名に初期治療 (口腔衛生指導, スケーリング, ルート・プレーニング) を行い, 血清抗体価への影響について検索した。
    B. gingivalis, B. intermedius, B. loescheii, F. nucleatum, A. actinomycetemcomitans, E. corrodens, Capnocytophaga, sp. の超音波処理可溶性抗原に対する血清IgG抗体価をELISA法により測定した。
    その結果, B. gingivalis, F. nucleatum に対する抗体価は初診時に比べ, 口腔衛生指導後 (p<0.05), スケーリング後 (p<0, 005, P<0.01) 有意に低下した。Copnocytophagaの抗体価もスケーリング後には低下を示したが, 他の菌種については著明な変化は認められなかった。
    歯周疾患関連菌に対する血清抗体価は既に初期治療の段階で変動することが示唆された。
  • 三次元画像解析モデルの作製と観察法について
    江澤 敏光, 奥野 健二, 藤崎 芳明, 佐野 裕士, 蛭間 重能, 酒匂 尚夫, 向井 浩
    1986 年28 巻2 号 p. 639-645
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    現在の歯周炎の治療法は, 汚染された根面をきれいにすることが最も効果的方法とされている。しかしながらこれらの治療に必要な歯根形態についてはいまだ明確ではない。そこで本研究は, 左右上下のそろった切断不可能な歯 (標本) および切断可能な抜去歯を使用し, 歯根形態を明確にすべくその方法について検討した。切断不可能な歯は, 精度の高い石膏レプリカを作製し, 樹脂に埋没後, 歯軸た垂直に1mmごとの切片とした。これを10倍拡大トレースし, コンピュータ入力および処理することによって三次元立体Surface modelとして表現することができた。三次元立体像は任意の色, 方向, および切断面として観察でき, 多数歯を処理することにより, 平均的根面形態を表現し, これによって術者に必要な根面形態の情報がより多く得られ, 難かしい根面処置に役立つであろうことが示唆された。
  • 山倉 久史, 岡田 菜穂子, 戸塚 明美, 大竹 徹, 宮下 元, 長谷川 紘司
    1986 年28 巻2 号 p. 646-653
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患の病態を客観的に表わす方法として, 種々の疫学指数や歯肉溝浸出液量などが用いられている。炎症の進行に伴ない, 毛細血管の走行や形態は変化し, これらは血流と深く関わっていると言われているが, これまで血流量を非接触状態で計測する良い方法がなく, 量的変化についてはよくわかっていない。我々は, レーザー・ドップラー血流計で計測した歯肉毛細血管血流量が, 病態を客観的に把握することが可能か, また再現性・記録性についても検討した。
    被験者をGIによりグループ分けし, 被験部は上顎中, 側切歯頬側歯肉とした。血流量と同時に計測したProbing depth, GCFなどの計測値との関連性についても検討を行なった。その結果, 被験者個人での再現性は認めたものの, 被験者間での波形に統一性はなく, 統計学的にも各グループ問に有意差は認められなかった。しかし, 本器を応用するにあたっての条件がいくつか明らかになった。
  • 1. 精神病患者にみられる歯周疾患とその予防対策
    池田 克已, 楠 公仁, 大澤 一茂, 栗橋 豊, 小野寺 修, 金 容彰, 岩川 吉伸, 西本 正純
    1986 年28 巻2 号 p. 654-661
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患の治療を行うための基礎となる疫学的調査を従来, あまり行なわれていない精神病患者を対象に行い, その患者における歯周疾患の罹患状況, 歯科治療に対する意識調査およびその予防対策などについて精神科医と共に検討してみた。対象は山梨療養所に入院加療中の精神病患者219名で, 歯周疾患の罹患状況は219名全員に, そしてそのうち42名に詳細な口腔内診査, 44名に対して歯科治療に対する意識調査, そしてその中の12名には刷掃指導を行った。その結果, 精神病患者の歯周疾患罹患率は, 一般正常成人に比べて高く, さらに, 歯科治療に対する意識調査では一般正常成人との間に差は認められなかったが, 刷掃指導に対するモチベーションは刷掃の理論づけ (意識的) を行うよりも, 「磨きなさい」と言う動作的な指導から行ったほうが効果的であった。また, 精神病患者に対する刷掃指導は, 精神科領域の治療の一助にもなることが示唆された。
  • 2. 川越市下中学生の歯周疾患の実態調査とその予防対策
    池田 克巳, 渡辺 幸男, 中島 啓次, 下島 孝裕, 真島 徹, 三宅 唯夫, 岩上 清隆, 西本 正純, 内海 順夫, 山田 久仁子
    1986 年28 巻2 号 p. 662-669
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    若年性歯周炎の発生頻度および中学生における歯周疾患の羅患状態を把握する目的で, 川越市下の中学生2, 980名を対象に調査を行なった。検査はスクリーニングのために3段階に分けた。第一段階は歯肉の炎症 (発赤, 腫脹), 第2段階は歯周ポケットの深さの測定 (circumferential法) および第3段階は4点法による歯周ポケットの測定, X線撮影およびスタディモデルによる矯正学的問題について検討した。その結果, 総被検者の3.7%に歯肉の炎症を認めた。また, 4mm以上の歯周ポケットを有する者が1.4%に認められた。
    両者の発生頻度は, 男子に高い割合で認められた。4mm以上の歯周ポケットを有する者から29名について精検した結果, 歯周ポケットの深さは前歯部および第一大臼歯で深い傾向が認められた。しかし, X線写真で骨吸収を認める者はなかった。矯正学的には前歯部の被蓋状態が大きいほど, 炎症が高度になる傾向が認められた。
  • 1年間の観察
    平岩 弘, 鶴見 真由美, 森田 学, 坂田 真理子, 岸本 悦央, 渡邊 達夫, 岩上 清隆
    1986 年28 巻2 号 p. 670-680
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    診療室における患者教育の手法である口内法による刷掃指導を公衆衛生活動に応用することを目的とし, 百貨店従業員33名を対象に, 歯肉炎指数, 動揺度, 清掃度を1年間にわたって観察した。その結果, (1) 対象者全員では, 動揺度を除くすべての診査項目で, 2週後に著明な改善が認められ, 1年後もなお持続していることが示された。2) 指示した刷掃法を毎日行っているものを実施群, それ以外のものを非実施群として分析したところ, 動揺度を 除くすべての診査項目で初診時と比べ1年後では, 両群とも改善が認められた。実施群では, 2週後, 3ヵ月後の値を1年後も維持するが, 非実施群では, 2週後に比べ, 3ヵ月後, 1年後で悪化する傾向が認められた。以上より, 今回用いた, 口内法による刷掃指導は, 公衆衛生活動で効果的に応用できる可能性が示唆された。
  • 外来患者の歯周疾患罹患状態について
    鎮守 信弘, 前田 勝正, 原 宜興, 古川 猛士, 相田 宜利, 鄭 有仁, 谷 季実子, 宮武 祥子, 畠山 民子, 山田 久仁子, 大 ...
    1986 年28 巻2 号 p. 681-691
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    現在一般に使用されている歯周疾患診査項目の中で特にどの項目が客観的にしかも正確に歯周疾患の特徴や実態を示しているか, また歯周疾患の年齢的特徴はどのようになっているかを調べる目的で, 外来患者における歯周疾患の疫学調査を行った。今回は特に病変の程度と年齢との関係や, 各診査項目間の相関性等について検討を加えた。
    その結果, 年齢との関係では30代が炎症性病変の活動性の指標となる歯肉溝からの滲出液や出血, 排膿などが高率にみられ, 増齢とともにこれらの症状が減少し, 50歳以上では歯牙の動揺や分岐部病変などが高率に認められた。すなわち30代の歯周疾患の臨床所見の特徴は炎症像であり, 50代以上では歯周組織の破壊像が主体となるように思われた。各検査項目間の相関性の検討では, 特にPlaque Index (Pl. I.) とGingival Bleeding Index (G. B. I.) 間, G. B. I. とProbing Depth (P. D.) 間に強い正の相関関係が認められた。
  • 1. 糖尿病患者と非糖尿病者の比較
    神山 義信, 蝦名 徹哉, 草野 郁子, 佐々木 俊明, 石川 潤一, 八巻 恵子, 佐々木 静治, 遠藤 英昭, 堀内 博
    1986 年28 巻2 号 p. 692-703
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 糖尿病者と非糖尿病者の歯周組織の炎症状態に差があるかどうかを明らかにすることである。糖尿病患者147人と明らかに糖尿病でない対照群被検者75人の計222人を診査対象とした。歯肉溝滲出液採取装置“Periotron”によるポケット滲出液量 (PT) の測定, Bleeding Index (B. I.), Pocket Depth (P. D.), O'LearyのPlaque Control Record (P. C. R) を歯周組織の炎症状態を表わす指標とし, その他に残存歯数, ウ蝕歯, ブラッシング回数なども調べ, 検討した。その結果, 糖尿病者のほうが非糖尿病者より, PT, B. I., P. D., P. C. R. の全てにおいて有意に高い値を示し, 糖尿病者の方が歯周組織の炎症状態が, 重篤であることが明らかとなった。
  • 第3報歯石付着状態について
    岡部 秋彦, 上野 益卓, 玉井 憲二, 佐藤 昌司, 三上 格, 河野 昭彦, 深井 浩一, 高橋 克弥, 大滝 晃一, 長谷川 明
    1986 年28 巻2 号 p. 704-719
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    慢性辺縁性歯周炎患者200名の初診時診査チャートより歯石付着率, 歯石指数を導き, これにより慢性辺縁性歯周炎患者の歯石付着状態につき検索を行った。その結果, 上顎では第1, 第2大臼歯, 下顎では中, 側切歯, 第1, 第2大臼歯で高い歯石付着がみられ歯面別では舌口蓋側面, 隣接面, 唇頬側面の順で歯石付着が高かった。そしてこれらの歯石は縁下のものが主であった。男女別では男性の方が高い歯石付着がみられ年代別では有意差を認めなかった。また疾患が進行するにつれ高い歯石付着が認められた。
    質問調査表との関係ではブラッシング回数, 歯ブラシの交換頻度などの口腔衛生観念の高い患者では歯石付着が少なかった。また歯石指数とP. C. R. とは相関関係があり, 歯石付着にはプラークコントロールが大きく影響していることが示された。
  • 辻 康雄, 吉沼 直人, 音琴 淳一, 蛭間 重能, 伊藤 公一, 村井 正大
    1986 年28 巻2 号 p. 720-728
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    口腔内平行法用フィルムホルダー (Up Rad社製Versatile Intraoral PositionerT.M. system VIPシステム) を用いた垂直咬翼7枚X線撮影法 (7VBW) が歯周病の診査・診断に臨床応用できるかどうか検討を行った。VIPシステムを使用した7VBWで撮影されたX線写真の再現性と規格性を検討するため予備実験を3人の検者によって行った。検者間誤差と検者内誤差を算出したところともに20%以下であった。本学歯周科来院患者67名に本法を用いてX線写真撮影を行いこのうち10名を無作為に抽出しオルソパントモグラフィー (OP) の撮影も行い比較検討を行った。根分岐部の確認率は7VBWでは100%であるのに対しOPでは60~70%であった。セメントエナメル境から歯槽骨頂部までの距離の測定でも7VBWはOPの約2倍の部位の測定が可能であった。以上の結果からVIPシステムを用いた7VBWは歯周炎の診査・診断に有効であり臨床応用可能であると思われる。
  • 上田 雅俊, 稲田 芳樹, 高津 兆雄, 西川 一昌, 山岡 昭, 秋山 繁, 桜井 敬丈, 楠 憲治, 小西 浩二
    1986 年28 巻2 号 p. 729-736
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    従来よりdental stainの除去の一方法として用いられてきた研磨剤を併用した電気エンジンによる研磨用ブラシについて, 研磨剤を変化させ, その除去効果および除去後の状態についてin vitroで観察するとともに, Airpower abrasive systemとも比較検討を行った。その結果, 研磨用ブラシについては, C-powder, B-powder, Apowderの順で実験的stainの除去効果が高く, 実験的stain除去後のmetallic plateの表面あらさも上述の順に高値を示した。一方, 電気エンジンによる研磨用ブラシに比較してair-power abrasive systemの方が有意に実験的 stainの除去効果が高く, しかも, 除去後の表面あらさも低値を示した。
  • 野口 俊英, 福田 光男, 北村 滋, 小林 誠, 梅田 誠, 石川 烈, 鈴木 嘉樹
    1986 年28 巻2 号 p. 737-743
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周ポケット内への薬剤の局所投与が歯肉縁下細菌叢および臨床症状にどのような影響を及ぼすかを調べるために本実験を行った。50人の被験者の中から, 4mm以上のポケットが少なくとも3ヶ所以上あること, 過去6ヵ月以内に抗生剤などの薬剤の投与を受けていないこと, 全身的に健康であることを基準に10人を選んだ。各被験者の3ヶ所のポケットにテトラサイクリンおよびクロールヘキシジン含有のハイドロキシプロピルセルロースストリップスおよびハイドロキシプロピルセルロースのみのコントロールをポケット底まで挿入した。臨床所見としては, プロービングデプスとプロービング時の出血の有無を調べたが, 3週間の実験期間中, テトラサイクリン投与群においてのみ改善が見られた。一方, 細菌叢の変化ではテトラサイクリンとクロールヘキシジン投与群においてスピロヘータと運動性桿菌の割合が著しく減少した。
  • 福田 光男, 野口 俊英, 石川 烈, 大谷 啓一, 三宅 幹雄, 紀藤 信哉, 瀬戸 尚子, 篠田 寿
    1986 年28 巻2 号 p. 744-751
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    生体内で石灰化抑制作用を示すことで知られている1-Hydroxyethane-1, 1-Bisphosphonate (HEBP) とヘキサメタリン酸 (HMP) の含嗽により, プラーク中へのミネラルの沈着が抑制されるか否かを調べた。被験者には, 全身的に健常と考えられた成人45名を選んだ。この45名をラテン方格法に基き, 3群に分け, 1%HEBP, 1.2%ヘキサメタリン酸, 及び, 対照溶液を, 1日3回, 2週間含嗽させた。被験者の下顎臼歯頬側面に可撤式のメタルフレーム装置を装着させ, その上に貼付したポリエステルフィルム上に形成されたプラーク中のCa, P, アミノ態窒素量を測定した。その結果, 総Ca量は, HEBP含嗽群, HMP含嗽群ともに, 対照群に較べて低値を示し, また, P量に関しても, 同様な傾向を示した。一方, N量に関しては, 三者間に, 有意の差はなかった。また, Ca/N比は, HEBP, HMP各群ともに, 低下する傾向を示した。以上により, HEBP, HMPは, プラーク中へのミネラル沈着を抑制し, プラークの石灰化が進行する過程を抑制し得る可能性が示された。
  • 佐藤 寿祐, 土屋 昭夫, 小林 則之, 木村 純一, 林 英昭, 小林 博, 保母 良基, 鴨井 久一
    1986 年28 巻2 号 p. 752-757
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    クマザサ原形質溶液が歯周疾患に対して効果があるか, また, 歯周治療に応用できるかどうかを検討した。
    口腔内の環境因子である唾液内微生物において, その殺菌効果および乳酸生成抑制効果について調べた。臨床的には, 実験的歯肉炎および中等度歯周疾患においてプラーク付着状態, 歯肉溝滲出液量, 歯肉の炎症状態を診査し, また, 口腔内規格写真撮影によって観察測定した。
    その結果, クマザサ原形質溶液の濃度が高くなるにつれて, 殺菌効果および唾液内微生物の乳酸生成抑制効果が認められた。含嗽または投与により, 実験的歯肉炎ではプラーク付着抑制には有意な効果はみられなかったが, 歯肉溝滲出液量の減少傾向および歯肉の炎症に対する阻止効果が認められた。
  • 前田 勝正, 鎖守 信弘, 原 宜興, 古川 猛士, 畠山 民子, 宮武 祥子, 岩本 恭行, 長嶺 尚子, 鄭 有仁, 橋口 勇, 赤峰 ...
    1986 年28 巻2 号 p. 758-766
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患患者26名に塩化リゾチーム含有歯磨剤を4週間使用させ, その臨床効果について検索し以下の結果を得た。
    1) 自覚症状に対する臨床結果では, 塩化リゾチーム含有歯磨剤は, 非含有歯磨剤に比べて2週間後でも臨床症状の改善が強くみとめられた。 この改善効果は特に, 粘稠感, 掻痒感, 及び腫脹感において著明であった。
    2) 他覚症状に対する臨床結果では, 塩化リゾチーム含有歯磨剤には口臭に対する強い改善効果がみられたものの, いずれの歯磨剤使用群においても, 強い症状改善効果はみとめられなかった。 しかし4週後の結果では, 塩化リゾチーム含有歯磨剤群において, 多少改善効果がみられ, これは発赤, 腫脹, 排膿, 出血等の炎症症状の改善に基づくものであった。
    3) 本剤使用 中, 1例の副作用も認められなかった。
    以上の臨床結果より, 塩化リゾチーム含有歯磨剤は, 炎症症状の改善を促すことにより, 歯周疾患の治療を行う上で有用であると考えられる。
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