テトラサイクリン系抗生物質 (TCs) の安全性を遺伝毒性の面から検討する日的で, ヒト歯肉由来培養線維芽細胞 (HFG/MS細胞) にテトラサイクリン (TC), クロルテトラサイクリン (CTC), デメクロサイクリン (DMC), ミノサイクリン (MINO) を作用させ, 染色体異常誘導能を調べた。その結果,
1) 各TCsの細胞毒性を細胞生存率から調べたところ, CTC, MINO, TC, DMCの順で強くなった。
2) Ca
2+, Mg
2+ならびに血清等を含有する通常の培養液中でTCsの100~1, 000μMを24または48時間細胞に作用させたが, 染色体異常は誘導されなかった。
3) ラット肝ミクロソーム由来の薬物代謝酵素存在下で, MINOの100~1, 000μMを2時間作用させても染色体異常の誘導はみられなかった。
4) Ca
2+, Mg
2+不含の塩類溶液中でTCsの10~100μMを1時間作用させたが, やはり染色体異常は誘導されなかった。
5) 上記の各実験系で, 陽性対照として用いたN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジンやアフラトキシンB
1によって, 細胞に染色体異常が誘導された。
以上の結果は, 各TCsによりHFG/MS細胞に対する細胞毒性が異なること, また, いずれのTCsも, 本実験条件下では, HFG/MS細胞に染色体異常を誘起しないことを示している。
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