本研究の目的は, イヌの下顎左右第2前臼歯 (P2), 下顎左右第3前臼歯 (P3) に実験的歯周炎を惹起させ, 多血小板血漿 (PRP) の単独応用が歯周組織に及ぼす影響を, 歯肉剥離掻爬術 (FOP) とエナメルマトリックスデリバティブ (EMD) の応用にて経週的に比較検討することである。雄のビーグル成犬6頭の左右P2近心, P3遠心に1壁性骨欠損を作製した後, 実験的歯周炎を惹起させた。骨欠損作製日から3週目をbaselineとし, 歯周外科手術を行った。P2においてFOP (FOP群) とPRP填入 (PRP群) の比較を, P3においてEmdogain
® Gel塗布 (EMD群) とPRP填入 (PRP群) の比較を行った。baseline時, 6週目, 8週目, 10週目, 12週目にProbing Pocket Depth (PPD), Probing Attachment Level (PAL), 動揺度 (TM), 歯肉溝滲出液量 (GCF) の臨床パラメータの測定とX線撮影を行った。6週目から週3回の割合で口腔内清掃を開始した。実験終了後, 病理組織学的に観察した。
その結果, FOP群とPRP群のTMの経週的変化は, PRP群がFOP群と比較して改善を認め (p<0.05), またGCFにおいても同様な結果が得られた (p<0.05)。EMD群とPRP群では, すべての臨床パラメータの経週的変化において有意差を認めなかったが, 新生セメント質の形成においてはPRP群と比較してEMD群の方が顕著に認められた (p<0.05)。
以上のことから, 1壁性骨欠損におけるPRP単独応用は, FOPと比較して早期創傷治癒を促進させる可能性があり, EMDと比較して臨床レベルは, ほぼ同程度の効果を示すことが示唆された。またPRP単独応用は, 1壁性骨欠損を伴った歯周組織のPPDやPALの改善には有効性が認められない可能性が高いことが示唆された。
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