日本歯周病学会会誌
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47 巻, 2 号
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巻頭言
追悼
総説―日本歯周病学会学術賞受賞
原著
  • —日本における多施設での調査—
    安藤 修, 平野 治朗, 大口 弘和, 池田 雅彦, 加藤 煕, 鈴木 文雄, 船越 栄次
    2005 年 47 巻 2 号 p. 80-89
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, エムドゲイン® の治療効果を多施設臨床試験として評価することである。185施設に来院した歯周病患者の単根歯 (256歯) における垂直性骨欠損部位を対象に, エムドゲイン® を使用した歯周外科手術を行い, 術後8カ月にプロービングポケットデプス (Probing pocket depth, PPD), クリニカルアタッチメントレベル (Clinical attachment level, CAL), X線写真上の骨欠損レベル (Radiographic bone level, RBL) の評価を行った。手術中には, 骨内欠損形態, 骨内欠損深さおよび骨内欠損幅 (近遠心) の測定を行った。術後8カ月でPPDの平均値は3.58mm減少し, CALは平均値で2.87mm獲得した。また, RBL測定による歯軸方向の骨再生量は平均2.15mmであった。術前のPPDおよび術中に測定した骨欠損深さとPPD, CAおよびRBLの関係を調べた結果, PPDおよび骨欠損深さが深いほどPPDの減少, CAの獲得および骨再生量が大きくなる傾向を示した。また, 骨欠損形態と骨欠損幅は, 術後のPPDの減少, CAの獲得および骨再生量に影響を与えなかった。本研究におけるPPDの減少, CAの獲得, X線写真上の骨再生量は, 欧米の歯周病専門医が行った研究結果と同様の結果であった。さらに, 骨壁数と骨内欠損の幅にかかわらず, ほぼ一定レベルの改善が認められたことから, 骨移植術や組織誘導再生法 (GTR法) と比較して, エムドゲイン® は適応症の範囲が広いと考えられた。
  • —エムドゲイン療法との比較—
    天野 めぐみ, 村岡 宏祐, 久保田 浩三, 横田 誠
    2005 年 47 巻 2 号 p. 90-102
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, イヌの下顎左右第2前臼歯 (P2), 下顎左右第3前臼歯 (P3) に実験的歯周炎を惹起させ, 多血小板血漿 (PRP) の単独応用が歯周組織に及ぼす影響を, 歯肉剥離掻爬術 (FOP) とエナメルマトリックスデリバティブ (EMD) の応用にて経週的に比較検討することである。雄のビーグル成犬6頭の左右P2近心, P3遠心に1壁性骨欠損を作製した後, 実験的歯周炎を惹起させた。骨欠損作製日から3週目をbaselineとし, 歯周外科手術を行った。P2においてFOP (FOP群) とPRP填入 (PRP群) の比較を, P3においてEmdogain® Gel塗布 (EMD群) とPRP填入 (PRP群) の比較を行った。baseline時, 6週目, 8週目, 10週目, 12週目にProbing Pocket Depth (PPD), Probing Attachment Level (PAL), 動揺度 (TM), 歯肉溝滲出液量 (GCF) の臨床パラメータの測定とX線撮影を行った。6週目から週3回の割合で口腔内清掃を開始した。実験終了後, 病理組織学的に観察した。
    その結果, FOP群とPRP群のTMの経週的変化は, PRP群がFOP群と比較して改善を認め (p<0.05), またGCFにおいても同様な結果が得られた (p<0.05)。EMD群とPRP群では, すべての臨床パラメータの経週的変化において有意差を認めなかったが, 新生セメント質の形成においてはPRP群と比較してEMD群の方が顕著に認められた (p<0.05)。
    以上のことから, 1壁性骨欠損におけるPRP単独応用は, FOPと比較して早期創傷治癒を促進させる可能性があり, EMDと比較して臨床レベルは, ほぼ同程度の効果を示すことが示唆された。またPRP単独応用は, 1壁性骨欠損を伴った歯周組織のPPDやPALの改善には有効性が認められない可能性が高いことが示唆された。
  • 金原 留美子, 長田 牧子, 金指 幹元, 渡辺 一郎, 鈴木 丈一郎, 五味 一博, 新井 高
    2005 年 47 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    反転タイプの電動歯ブラシにおいて, 森らは, ブラッシングシミュレーターを用い, 電動歯ブラシの毛束の反転角が大きくなるほど, プラーク除去効果は高くなり, プラーク除去効果は振動数よりも反転角による影響が大きいことを明らかにした。この結果を基に, 振動数と反転角の違いによるプラーク除去効果についての臨床試験を, 振動数2,000cpmと, 反転角 : 20, 40, 75°, 振動数3,500cpm, 反転角40° の4種類の試作電動歯ブラシを用いて行った。
    全体·隣接面·近心面では2,000cpm/20° と2,000cpm/40°, 2,000cpm/75° および3,500cpm/40° の間に, 遠心面においては2,000cpm/20° と2,000cpm/40°, および3,500cpm/40° の間に統計学的有意差 (p<0.05) が認められた。
    臨床試験においても, プラーク除去効果はブラッシングシミュレーターと同じ傾向を示し, 反転タイプの電動歯ブラシは反転角と振動数が大きいほどプラーク除去効果は高い傾向にあった。
症例報告
  • 八巻 恵子, 川村 仁, 依田 正信, 菅原 準二, 島内 英俊
    2005 年 47 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    歯周治療はスケーリングとルートプレーニングによる消炎が基本である。しかし進行した歯周炎症例における治療目標は, 長期間安定して維持できる歯列, すなわち機能的で手入れしやすく, 咬合性外傷を生じない歯列を構築することである。近年, 崩壊著しい歯列を治療する機会が飛躍的に増え, 複数科で高度に専門的な対応が必須になってきた。本報は, 重度歯周炎を併発したII級の骨格性不正咬合の症例報告である。患者は40歳の女性で, 下顎が小さく後退しているのに加え上顎切歯が唇側傾斜·離開したため, 鳥貌を呈し, バイトが深くオーバージェットも過大であった。口唇閉鎖不全と, 両側顎関節のクリッキングも認められた。歯周ポケットは最深部で5mmとそれほど深くはなかったが, 歯槽骨吸収がかなり進行していることがX線写真から明らかとなった。不正咬合の是正には外科矯正が必要だったので, 複数領域に及ぶ治療を提供できるようにチームを編成した。最初の8カ月間は歯周治療—口腔清掃指導および丹念なルートプレーニング—を実施し, 並行して歯内治療と暫間修復を施した。患者は動機づけが強く, 治療に対する組織応答も良好であった。次の2年間は矯正治療に費やした。マルチブラケット装置を利用しながら, 上顎はLe Fort Iで骨切りして咬合平面の傾斜を是正し, 下顎は仮骨延長法により前後径を増大させた。動的治療期間中, 歯の動揺と軽度歯肉炎を生じたので, 保定を開始するとすぐに, 刷掃指導と全顎の再ルートプレーニングを実施した。プロビジョナルもこの修正期間中に装着した。歯周組織が健康を回復し, 新しい顎位が問題なく機能するのを確かめてから, 注意深く設計した最終補綴物を装着した。審美的, 機能的に治療は成功したが, 支台歯の多くは支持歯槽骨が少ないので, 良好な口腔清掃状態を維持し咬合性外傷を回避するために, リコールは欠かせない。
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