日本歯周病学会会誌
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29 巻, 1 号
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  • 斉藤 正
    1987 年29 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    成人性歯周炎患者の歯周ポケット内細菌叢 (group II, group III) 特, に黒色色素産生Bacteroides菌群 (BPB) の検出状況と疾病の進行状況との関連性を明らかにするために歯肉溝細菌叢 (group I) との比較検討を行った。可検試料は上顎前歯部滲出液より採取し, 生物学的・血清学的性状検査により菌種を同定した。その結果, 以下の結論を得た。1) Gram染色性および形態による菌群の構成比率において, group II, group IIIは, group Iと比較して, Gram陰性桿菌の増加とGram陽性桿菌およびGram陽性球菌の減少が, それぞれ有意の差で認められた。2) BPBの検出率において, group II, group IIIは, group Iと比較して極めて高く, それらの間には, 有意の差が認められた。3) BPBの菌種別検出比率において, group II, group IIIは, group Iと比較してB. intermediusが極めて高く, それらの間には有意の差が認められた。B. gingivalis, B. melaninogenicusおよびB. loescheiiの検出比率は, いずれのgroupにおいても2%以下と低かった。
  • 飯塚 哲也
    1987 年29 巻1 号 p. 12-21
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病関連細菌としてCapnocytophaga sp. DT19, F. nucleatum ATCC25586, B. gingivalis 381の3菌株とE. coli K 12 C600, ATCC 11775の2菌株を用い, whole cellおよびcell envelope画分の燐脂質組成とその量の検討を試みた。各細菌の燐脂質組成は二次元薄層クロマトグラフィーおよびシンクログラフィーにより同定し, 定量した。
    いずれの菌株でもCL, PG, PE, PIの存在を認めた。Capnocytophage sp. では1つの未同定物質を認め, whole cellとcell envelope共にPEが最も多く, ついでPIであった。F. nuclntunzではPCも認め, whole cellではPEが最も多く, ついでPGが, cell envelopeではPGが最も多く, ついでPEであった。B. gingivalisではPSも認め, whole cellではPGが最も多く, ついでCLが, cell envelopeではPGが最も多く, ついでPSであった。
    whole cellおよびcell envelope中の総燐脂質量は歯周病関連細菌である3菌株がE. coliに比較して多かった。
  • 特に, 多クローン性IgG産生の増強について
    伊藤 博夫
    1987 年29 巻1 号 p. 22-36
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Actinomyces viscosus T14V株の超音波破砕上液 (Av. sup) と大腸菌リポ多糖 (LPS) によるT細胞非依存性の多クローン性B細胞活性化 (PBA) に対するT細胞の影響を検討した。その結果, T細胞はT細胞非依存性のPBAによるIgG産生を増強する事が明らかになった。更に, この様な機能を有するT細胞の性状, 及び, T細胞によるIgG産生の増強機構について検討した結果, helper/inducerサブポピュレーションのT細胞が, PBAによって活性化された自己のB細胞表面上のIa抗原に反応して活性化され, この様な自己反応性T細胞がPBAによるIgG産生を増強する事が示唆された。以上の結果から, PBAに自己反応性T細胞が関与して, 多数のIgG産生形質細胞が浸潤, 増生している歯周炎病巣が形成される可能性が示唆される。
  • 田中 良彦
    1987 年29 巻1 号 p. 37-64
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周炎により破壊された歯周組織の治癒に及ぼす多孔質アパタイトの臨床的な影響とその効果を検索するために本研究を行った。初期治療終了後外科的処置が必要と思われる垂直性骨欠損を有する患者50名に多孔質アパタイトの補填を57部位 (補填群) に, 歯肉剥離〓爬術を20部位 (対照群) に行い, 術後1年から3年までの診査により次の結論を得た。1. 対照群と比較して補填群の歯周組織で特に強い炎症は認められなかった。2. 対照群と比較して補填群では有意な歯周ポケットの減少 (p<0.05) と臨床的付着の獲得 (p<0.01) が術後1年で認められ, 適切な術後管理を行った補填群では術後3年までその臨床的付着位置は維持された。3. X線診査の結果・術後1年において補填群は対照群と比較して有意な骨欠損の改善 (p<0.05) を示した。
    以上のことより多孔質アパタイト補填は歯周治療で高い効果が得られると思われた。
  • 大島 光宏
    1987 年29 巻1 号 p. 65-75
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 細胞培養系を用いてスケーリング, ルートプレーニングの効果を調べることであった。
    歯周炎罹患歯10本の表面から, プラーク, 歯石, 罹患歯質0~20μm, 罹患歯質20~40μm, またコントロールとして健全歯の表面から健全歯質0~20μm, 健全歯質20~40μmの削片をプラークは歯ブラシで, それ以外はスケーリングとルートプレーニングにより採取した。各削片を超音波処理して可溶成分の抽出を行ない, L929線維芽細胞の増殖に及ぼす影響を調べた。
    この実験を4回繰り返して行なった結果, プラーク, 歯石, 罹患歯質0~20μmからの抽出物は細胞増殖抑制作用を示し, 罹患歯質20~40μm及び健全歯からの抽出物は細胞増殖を抑制しなかった。
    以上より, 罹患歯根面の細胞増殖抑制物質はセメント質の表層20μm以内に存在することが示された。
  • スケーリング, ルートプレーニング後の併用
    宮田 裕之, 鴨井 久一
    1987 年29 巻1 号 p. 76-90
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉縁下プラークの抑制を目的として歯周疾患患者15名に対し, スケーリング, ルートプレーニングを行なった。その後, 脈動ジェット水流装置を使用しポケット内を0.2%クロールヘキシジン溶液 (CH), 滅菌蒸留水にて2週間に1回の割合で6ヵ月間洗浄を行なったものをTest群, 洗浄を行なわなかったものをControl群とし, 6ヵ月間の臨床所見, 総菌数, 細菌叢の変化を観察した。
    その結果, Attachment Level (AL) のgainは, Test群がControl群より高いgainがみられたこと, GBIは, Control群が3ヵ月, 6ヵ月にかけて増加傾向にあるのに対し, Test群は, 6ヵ月間減少し続けたこと, 総菌数の変化は, Control群よりTest群の方が総菌数の後戻り傾向を抑制したこと, 細菌叢の変化は, 早期に球菌の増加, 運動性桿菌の減少を促進する傾向にあった。
    以上の結果より, AL, GBIの改善, 総菌数, 細菌叢に影響を与えたことにより, ポケット内洗浄が有用であることが示唆された。
  • 梅田 誠
    1987 年29 巻1 号 p. 91-105
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は歯周病の臨床検査として偏性嫌気性スピロヘータを含めた歯肉縁下プラークの細菌叢を検索する方法を確立するという目的で行った。被験者28名において歯周ポケット内細菌叢を検索し各培地・培養法の比較, 検討を行った。非選択培地としてはスチールウールジャー法を用いたEG寒天培地が適していることが分かった。また偏性嫌気性スピロヘータの培養については, プレートインボトル法を用いた10%Rumen液入りMedium10培地が優れているということが示された。以上の2つの培地に10種類の選択培地を加え患者と健常者について歯周ボケット内の細菌叢の検索を行ったが, 特にスピロヘータは半数以上の患者において総菌数の10%以上培養によって検出され, これは位相差顕微鏡の鏡検におけるスピロヘータの割合と同様の値になった。本研究に用いた検索法により歯周ポケット内の偏性嫌気性スピロヘータを他の細菌と同叢に培養・検索することが可能になった。
  • モノクローナル抗体の利用
    中江 英明
    1987 年29 巻1 号 p. 106-125
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Eikenella corrodens 1073の付着因子であることが示唆されている細菌レクチン様物質に対するモノクローナル抗体を作製し, これを用いて, E. corrodens 1073とActinomyces viscosus T 14AVおよびATCC 19246, Streptococcus sanguis ST 160Rおよび34との間の4通りの菌体間凝集反応の機序をin vitroで解析した。その結果, 4通りの菌体間凝集反応のいずれにおいても, E. corrodens 1073の菌体成分である細菌レクチン様物質が決定的な役割を果していることが明確になった。
    さらに, モノクローナル抗体を用いた免疫電顕による観察結果から, 細菌レクチン様物質はE. corrodens菌体の莢膜様構造物あるいは細胞壁に存在することが示唆された。
  • 1. ラットプラークの抗原性ならびに数種の口腔常在細菌に対する抗ラットプラーク家兎血清中の抗体について
    大浦 清, 篠原 光子, 高山 昭則, 西山 彰, 九門 好彦, 森 政和
    1987 年29 巻1 号 p. 126-131
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    実験的歯肉炎自然発症のアニマルモデルであるODU plaque-susceptible rat (Susラット) の下顎前歯歯頸部に沈着するプラークの抗原性を検討する目的で抗ラットプラーク家兎血清を作製し, この血清を用いて数種のヒトロ腔常在細菌に対する抗体の存在について検討した。すなわち, ラットプラークをFreund's incomplete adjuvantと共に1週間間隔で6回接種して作製した抗血清中の抗体をAotinomo6s, Bact6roi46s, 、Fuso∂aot6riumおよびVeillonellaの磨砕上清を用いてELISA法により測定した。結果はいずれも反応陽性であり, その抗、体価はActinomyesは1: 320, Bacteroidesは1: 1280, Fusobacteriumは1: 1280およびVeillonellaは1: 20480であった。以上の成績のように, ラットプラークで免疫した家兎血清中にヒト歯肉溝常在細菌に対する抗体が検出されたことは, Susラットにみられるプラークの沈着に伴い出現する歯肉炎がヒトにおける場合と同様, プラーク内に存在する細菌の抗原刺激に対する免疫応答によるものである可能性を示唆しているものと考えられる。
  • 第1報歯周病の病状とIgG抗体との相関
    永井 淳, 岡村 和則, 小林 充治, 横山 雅之, 熊澤 寛, 杉山 雅昭, 栗原 英見, 野村 慶雄, 村山 洋二
    1987 年29 巻1 号 p. 132-145
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病関連細菌に対する血清IgG抗体価と歯周病の病型あるいは, 臨床症状との相関を検索することを研究目的とした。血清抗体の定量には, 超音波抽出上清を抗原とするELISA法を用いた。歯周炎患者129名を臨床的な病状によって, 若年性歯周炎, 急速進行性歯周炎活動期, または非活動期, および成人性歯周炎に分類し, ポケット長測定およびレントゲン写真検査を行なって, 各種臨床症状をあらわす指数を算出した。
    それぞれの病型群で各種臨床検査から得た指数と血清抗体価との相関係数を計算し, 若干の有意な正の相関を得た。しかし, 病型に特徴的な病状を説明できるような指数と抗体価の組合わせをすべての病型で見出すことはできなかった。
    血清IgG抗体価は, 病態の表現型の1つであるが, それは, 各種臨床検査から得られるパラメータとは独立したカテゴリーに属するものであろうと考察される。
  • 第2報歯周病治療に伴う血清IgG抗体の変動
    岡村 和則, 永井 淳, 熊澤 寛, 杉山 雅昭, 水島 ゆみ, 光田 由可, 高柴 正悟, 栗原 英見, 野村 慶雄, 村山 洋二
    1987 年29 巻1 号 p. 146-154
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病患者71人を対象として, 歯周病関連細菌に対する血清IgG抗体が, 歯周病治療に伴いどのように変動するかを調べた。歯周病関連細菌として, Bacteroides gingivalis, Actinobacilus actinomycetemcomitans, Capnocytophaga ochraceaを取り上げた。抗体の測定には, 酵素免疫測定法 (ELISA) を用いた。
    処置に伴い, 各菌種に対する抗体価は下降した。なかでも, 治療が終了したものでは有意な下降が示された。また, 観血的歯周病治療後の経過日数により, 抗体価の変動の様相に違いがあった。30日未満では, 変化がないかむしろ上昇傾向が認められ, 30日以降には有意な下降が認められた。
    以上のことから, 歯周病関連細菌に対する血清IgG抗体は, 歯周病治療に伴い変動し, 治療効果の判定に有効な指標となりうることが示唆された。
  • 第1報重度進行性歯周炎 (Rapidly progressive periodontitis) 患者の好中球の貪食能について
    桂木 康弘, 松田 尚樹, 中村 正一, 永井 淳, 岡村 和則, 野村 慶雄, 村山 洋二
    1987 年29 巻1 号 p. 155-164
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    白血球は, 歯周疾患において宿主の生体防御のための重要な役割りを担っている。歯周疾患患者の白血球の諸機能は, 病態を反映する指標となると思われる。そこで, 病態の解析が急がれている重度進行性歯周炎 (rapidly progressive periodontitis) 患者13名について, 末梢血好中球の貪食能を健常人と比較・検討した。
    RPP患者の貪食能は, 健常人に比べて, 付着能と細胞内取り込み能のいずれにおいても有意に低下しており, これは, 主として貪食反応に関与している好中球数の減少によるものであった。
    さらに, 貪食能低下の機序を調べるために, 被験好中球のロゼット形成能, 血漿中の因子の影響, 血漿のオプソニン活性などについても検討した結果, RPP患者の好中球貪食能の低下は, 好中球自身に由来していること, さらに, 白血球機能評価は歯周疾患を解析する上で有用であることが示唆された。
  • 第2報: 重度進行性歯周炎 (RPP) 患者の好中球および単球の走化性について
    松田 尚樹, 桂木 康弘, 中村 正一, 永井 淳, 岡村 和則, 野村 慶雄, 村山 洋二
    1987 年29 巻1 号 p. 165-171
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    重度進行性歯周炎 (RPP) 患者, および性, 年齢の一致した健常者それぞれ11名の末梢血より得た好中球および単球の走化性を, ボイテン・チャンバー法により調べた。
    その結果, RPP患者の好中球ランダム遊走能および走化性は, 健常者のそれと有意な差がなかったが, 至適濃度の走化性因子 (FMLP) に対する反応性は, RPP患者の方がより大きく分散した。単球の走化性および血清中の走化性活性も, RPP患者と健常者の問で差がなかった。
    また, FMLPによる好中球からのリソゾーム酵素放出性を, リゾチーム活性を測定することにより調べたが, RPP患者と健常者の間で差はなかった。
    以上の結果より, 食細胞が局所に遊走し, 脱顆粒して酵素を細胞外に放出するまでの過程では, RPP患者に顕著な機能欠損はないことが示唆された。
  • 骨再生が近接歯根面上へのセメント質形成に及ぼす-影響について
    西村 和晃, 永石 真幸, 林 正純, 白井 義英, 山田 実, 英保 武志, 中谷 聡, 山岡 昭
    1987 年29 巻1 号 p. 172-178
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    骨形成エネルギーが, 隣接根面上へのセメント質形成を促進するかどうか検索する目的で, 以下の実験を行った。3頭のサルを用い, 上顎中切歯の歯肉を翻転し, 続いて抜歯を行った。抜去歯の歯冠側半分はルートプレーニングし, 同時に, 実験群のルートプレーニング面に対応する歯槽骨は, ラウンドバーで数個の穴を頬側面からあけた。一方, 対照群歯槽骨に対しては何等骨処置は行わなかった。その後, 抜去歯を歯槽骨内に再植した。実験3, 6, 9週に屠殺, 病理組織学的検索を行った。その結果, 実験群では, 再生骨対応根面上に新生セメント質の形成がみられ, 骨再生という組織環境は, 近接根面上へのセメント質形成に深く関与することを示した。
  • 菅谷 彰, 児玉 利朗, 古郷 辰二, 佐藤 肇, 三辺 正人, 田村 利之, 高井 豊喜, 小川 優司, 渡辺 是久, 堀 俊雄
    1987 年29 巻1 号 p. 179-197
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周外科治療に数多く使用されているHydroxyapatite顆粒 (HAP) と, Tricalcium phosphate顆粒 (TCP) を移植し, 歯周組織との経時的反応の差異を知る目的で実験を行なった。
    実験には雑種成犬18頭を用い, 下顎骨臼歯部に形成した3壁性人工的骨欠損に移植手術を施行後, 3日から3ヵ月の期間について組織学的観察および計測を行なった。今回は特に骨組織の反応を中心に, 類骨や根面側の形態に注目して行なった。その結果HAPは骨組織中の核となって残存する一方, TCPはマクロファージの貪食により吸収され, 骨組織と置換することがわかった。骨再生量やOsteoidについても, 術後2週, および3週といった期間では, その量や形成パターンに差異が認められた。また根面側の影響については対照群で差異が認められたが, 両移植群には認められなかった。以上の結果より両移植材料共に骨移植材として使用し得る材料であるが歯周領域に応用する際には, この相違を考慮し, 症例により選択的に使用することが望ましいと考えられた。
  • 横田 誠, 濱田 敦子, 末田 武
    1987 年29 巻1 号 p. 198-204
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, 歯間離開度と歯周組織破壊の関係および歯間離開の初期治療による変化を調べることである。特に歯間離開度と歯周ポケットあるいは動揺との関係について検討を加えた。全被験歯の歯間離開度を, コンタクトゲージを用いて, 50μ>, 50μ, 110μ, 150μ, 150μ<の5群に分類した。初期治療により歯間離開度は減少する傾向がある。無変化群 (59.5%), 増大群 (14.0%), 減少群 (25.9%) である。初診時の歯間離開度が大きいものほど歯周ポケットも深い傾向がある。しかし初期治療後では, 初診時ほどの関係は認められなかった。初診時の歯間離開度は初期治療による歯周ポケットの深さの減少には影響しないようである。歯間離開度と動揺度との関係にはp<0.05) で相関性がみられたが, 強い一致性を示さなかった。
    (深い歯周ポケットを有する歯の歯間離開度は初期治療によって大きく変化する可能性がある。
  • 動揺度測定装置 (TMC-01) を用いての検討
    森田 学, 鶴見 真由美, 平岩 弘, 坂田 真理子, 岸本 悦央, 近藤 充宏, 渡邊 達夫
    1987 年29 巻1 号 p. 205-210
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯口清掃による歯の動揺度の改善を, より客観的に評価することを日的として, 動揺度測定装置 (TMC-01) を考案し, 臨床応用を試みた。この装置は, 歯を水平方向に移動させるのに必要な荷重を連続量 (g) で表示するものである。外来患者20名 (被検歯総数216本) を対象に, 来院時毎に, 徹底した歯口清掃と歯間部の清掃を主日的とした刷掃指導を行った。動揺度は, 初診時, 2週, 4週, 8週後にTMC-01を用いて測定し, 同時にプラーク付着状態も診査した。その結果, (1) 動揺歯の荷重平均は, 初診時101g, 2週後141g, 4週後147g, 8週後157gであり, 短期間のうちに著明な改善が認められた。 (2) 2週後で74%, 8週後で85%の動揺歯に改善が認められた。 (3) 初診時, 79g以下の力で動揺を示した歯は, 2週以後の改善傾向が減少したが, 809以上の力で動揺を認めた歯は, 期間全体を通じて改善した。以上より今回用いた装置は, 動揺度の測定に応用できる可能性が示唆された。
  • 福原 弘喜, 森田 健司, 弓立 淳, 米村 隆司, 恵比須 繁之, 岡田 宏
    1987 年29 巻1 号 p. 211-221
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    歯学部附属病院歯周病診療室に来院し, 辺縁性歯周炎と診断された患者から, 無作為に47人 (20~59表歳, 平均41.6歳) を抽出し, 歯周疾患罹患程度および臨床的病因因子と罹患程度との関連性について検討を行った。
    全被験者における歯周疾患の程度はポケット深さで3.8±0.8mm, 5mm以上のポケット深さを有する罹患歯の割合は65±25%であった。また, 歯槽骨吸収は歯根長の29.4±7.5%であり, 近心側または遠心側において30%以上の骨吸収率を示す罹患歯の割合は平均56±24%であった。これら歯周疾患り程度を年代別に分類して検討したが, 各年代において差は認められなかった。歯種別の歯周疾患の程度は, 歯周ポケット深さでは上顎の切歯部, 大臼歯部, 下顎の大臼歯部で, また, 骨吸収率では, 上顎の切歯部, 大臼歯部, 下顎の切歯部でそれぞれ大きい傾向を示した。
    臨床的病因因子として歯肉縁上プラーク, 歯間離開, 歯肉縁下修復物, 転位, 支台をとりあげ, 歯周疾患の程度との関連性について検討したが, これらが歯周疾患の程度におよぼす影響は小さいことが示唆された。
  • 西沢 光生, 中川 清, 浅野 正男, 佐藤 正俊, 大島 基嗣, 西原 英志, 高橋 利次, 斎藤 毅
    1987 年29 巻1 号 p. 222-227
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯科診療に関連する一連の処置は, 血液や唾液を排除しての診療は不可能であり, 歯科に来院する患者からの感染については十分な注意と予防が必要である。現在行われているHBs抗原検出検査は, 通常R. P. H. A. 法を用いた血清検査であるが, 静脈血の採血は歯科外来での応用には抵抗があるようである。
    そこで本研究では, 歯科外来で実施できるHBs検出法として耳朶および歯肉穿刺ロ紙血を応用し検出法を検討した結果, 次の結論を得た。
    1. ロ紙に吸着乾固させた血液を用い, その溶出液についてR. P. H. A. 法に準じた検査方法でHBs抗原の検出を行うことが可能であり, ロ紙血の溶出に5時間が必要であった。
    2. HBs抗原陽性者2名を含む22名について, 耳朶および歯肉から採取したロ紙血法と従来の血清法とを定性的に比較した結果, 全例で一致した。
    3. 定量検査をしてロ紙血を応用し且Bs抗原価の測定を行った結果, 血清法と同様に測定が可能であった。
  • 太田 紀雄, 村上 弘, 橋本 京一, 渡辺 達夫, 笠原 浩, 徳植 進
    1987 年29 巻1 号 p. 228-232
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    24歳の男性の軽度精神発達遅滞をともなう脳性小児麻痺患者に併発したダイランチン歯肉増殖症を保護者と介助者の十分な理解と協力によって, 電動ハブラシを使用してプラークコントロールを行い歯肉の炎症を軽減させた後, 全身麻酔下で全顎の歯肉切除, 歯肉整形術を併用して行い術後約2年間再発もなく, 良好な経過を得ている症例を報告した。
  • 深井 浩一, 大滝 晃一, 長谷川 明, 石川 和光
    1987 年29 巻1 号 p. 233-241
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉症状初発の帯状疱疹2例を経験したので報告する。第1例は, 右側三叉神経, 上顎神経領域を中心とし, 29歳男性であった。初発症状は右上顎臼歯部の疹痛と水疱形成であり, その後右上顎部顔面に拡大した。第2例は左側三叉神経, 下顎神経領域を中心とする58歳の女性で経過中にRamsay-Hunt症候群を併発した。初発症状は左下顎臼歯部歯肉の違和感と水疱形成, つづいて左顔面への放散痛であった。両例とも補体結合反応によりVZVウイルスの関与が認められている。
    以上の臨床所見より次の結論を得た。
    1. 定型, 非定型 (Ramsay-Hunt症候群) の帯状疱疹2例を経験した。
    2. 両例で従来稀とされた歯肉症状を認めた。
    3. 口腔帯状疱疹の前駆症状としては一般的な歯痛の他, 歯肉, 粘膜部痛も存在する。
  • 1987 年29 巻1 号 p. 242-298
    発行日: 1987/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
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