本研究では地方都市における郊外住宅団地再生に資する住民活動の活動内容と組織形態について、以下の基礎的研究を行った。(1)「全国のニュータウンリスト」に基づき団地の分類を行った結果、地方都市は大都市に比べ短期間かつ小規模な開発であった。ただし、県庁所在都市は最も長期間かつ小規模な開発である。(2)全国の地方都市8・大都市13の住民活動から得た調査票調査の結果より、組織形態は地域自治組織(町内会・自治会)が多いが、近年ではNPO法人や任意団体の活動も見られた。(3)事例とした福島市蓬莱団地では、その二つの組織形態が並立されていた。これにより、既存の地域自治組織と齟齬を来さず運営がなされていた。また、住民258件から回答を得た調査票調査の結果より、住民活動には住民の意見を聞く役割が求められていた。
本稿は、福島県内の全59市町村に対するインタビュー調査や現地調査の結果などに基づき、原発事故が発生してから8ヵ月以上が経過した現時点での市町村による除染計画、復旧計画、復興計画の策定状況を概観した上で、放射性物質汚染対処特措法の全面施行前における非法定の除染計画の内容を明らかにし、大量かつ広範囲に拡散した放射性物質の除染を出発点として、今後数十年以上にわたって続くであろう福島の復興に向けた計画行為の最初期を記録することを目的とするものである。福島の復興を実現する上では、生活環境の最も基本的な価値である安全と安心を取り戻すための除染こそ喫緊の課題であるが、その出発点からして大きな困難が立ちはだかっている。しかし、いまは、それでも、と思っている。
「5+2広域経済圏」を基本とする李明博政権の地域発展政策は、1960年代以来続いてきた地域発展政策とは考え方を異にする。これまでは、首都圏への人口集中抑制と国土均衡発展であったが、5+2広域経済圏政策は全国土を七つの広域圏に区分し、各々の経済活性化と地域競争力強化を進んでいくことである。本稿では李明博政権の地域発展政策の内容及び推進状況を調べ、批判的視点から考察を行うことを目的とする。大きく四つのイシューを取り上げる。①広域経済圏政策の基本方向と広域経済圏設定、②5+2広域経済圏を設定した基準と方法、③広域経済発展委員会、④広域経済圏発展計画。これらの議論を通じて「5+2広域経済圏政策」の評価を試み、今後韓国の地域発展政策の方向性までを考える。
本研究では、東京都23区内の景観条例等に基づき選定された9区の景観資源に着目し、景観資源の分類調査から景観資源の対象を把握するとともに、選定主体、選定方法との関係、選定後の支援策等を調査した。景観資源は有形型、無形型の2タイプに大きく分類した。結果、有形型は多く指定されていたが、無形型は多くは指定されていなかった。多く選定される条件として、景観資源のコンセプトが関係していた。また、景観として直接行政支援の実績があるのは、特定の有形型のみであり、その他の景観資源は、選定だけで役割が終わっているのが現状であり、景観を「選ぶ」だけでなく「守る」へと変化させ、その担い手を増やしていくような仕組みづくりを考えていくのが重要である
本稿は、地域コミュニティ組織として代表的な自治会を取り上げ、その活動がどのようなものであったかを示すことをねらいとしている。具体的には、東日本大震災後の浦安市内の自治会活動の実態をアンケート調査により把握し、自治会が果たす役割や取り組むべき課題を明らかにするための基礎的資料を提示することが目的である。
社会的包摂の観点から雇用,教育,健康など重要性の高いサービスや活動機会へのアクセスを確保することは,少子高齢・人口減少時代を迎えたわが国にとって大きな課題である。本稿は,同様の問題意識のもとで2000年代中盤から英国・イングランドで進められてきたアクセシビリティ・プランニングの取り組みを取り上げ,その背景や枠組み,アクセシビリティ評価手法を概観する。また,交通施策だけでなく土地利用計画との統合を通じてアクセシビリティの問題に対処すべく,アクセシビリティの定量的評価を空間計画に反映させている(またはその方向で進めようとしている),グレーターロンドン,ウエストミッドランド,リバプールの事例を報告する。
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