とくに地方部においては、県境を越えた広域的な道路交通ネットワークの強靭性と代替性を確保することが重要である。本報は県境道路の整備による期待効果と実効果を明らかにする。そのため、25の県境自治体に対しアンケート調査を行った。AHPを用いて分析した結果、道路整備による期待効果と実効果が定量的に明らかとなった。そして、期待効果と実効果の評価値の比較から両者の関係について考察した。
フランスの地方都市における公共交通は,事業権委託制度に基づき民間運輸事業者が大きな役割を果たしてきた.しかしながら,1970年代の経営改革を契機として,交通税による財政補助,地方自治体による関与が始まり、国による法制度の対応,地方分権政策の推進を経て,地方自治体の責務が位置づけられ,現在の枠組みが確立した.その過程において,公共交通における民間運輸事業者は,独自の地位を保ちながらもその役割は変質していった.わが国に対する示唆として,公共交通の経営環境はフランスの1970年代に類似点があり,地方自治体の責務及び国の適切な関与の必要性を明らかにした.
我が国の国立公園制度では地域制が採用されているが、公園計画には目標やビジョンが定められず、その決定手続では地権者でさえ参加機会が保障されていない。国立公園における土地所有と地種区分の状況をみると、全公園の合計では私有地と普通地域がそれぞれ約4分の1の面積を占めているが、いずれも国立公園によって大きく異なっている。今後とも国立公園制度によって我が国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地を保護し続けるためには、普通地域内の私有地などで営まれる多様な土地利用者の暮らしやなりわいの持続的な活性化という視点を国立公園制度の中に組み入れる必要があるが、根本的には、国土利用計画法と個別計画・規制5法の抜本的な再編を通じて総合的・一元的な土地利用計画・規制制度を構築することが必要である。
2004年12月26日に発生したインド洋津波の被災地であるスリランカでは、住宅復興目的で「エコビレッジ」が建設された。8つの異なる被災地から55世帯が住宅移転を実施している。環境に優しい生活を送るのが目的としてあり、①ごみ分別、②生ごみのコンポスト化、③太陽光発電や雨水利用といった自然資源の活用、④環境に配慮した住宅設計、⑤NGOによる環境活動といった項目が実施されている。本事例では、「エコビレッジ」という環境がテーマとして付加された新しい住宅移転に着目し、2006年と2010年時における移転者たちの生活変化について質問紙調査及び聞き取り調査を実施した結果と、そこから考察される今回の移転方法の課題を示す。
本研究では大都市圏郊外の戸建て住宅に対する自治体の空き家対策に着目し、アンケート調査とヒアリング調査の2つで、自治体の空き家対策の取り組みの現状と課題を明らかにした。対象都市は三大都市圏の郊外部に立地する都市である。調査の結果、近畿圏と首都圏では半数近くの自治体が対策を行っておらず、実施しているのは近畿圏で28.3%、首都圏で15.9%であることが判明した。空き家の増加が問題視されているが、大都市圏近郊では空き家の増加がまだ起きていないと言える。最も行われている対策は適正管理の依頼であり、環境保全に関する法律で対応している。また、適正管理の依頼をする上で、所有者が亡くなっており、空き家の所有者が特定できないことが問題であることも判明した
今回、木更津市における市街化調整区域の土地利用方針と地位計画のガイドラインの策定について、報告するものである。<br>線引き制度が導入され43年が経つが、その間、市街化調整区域内の既存集落は人口減少と高齢化により衰退し、山林や農地の荒廃を生じている。また、山砂採取、残土、産業廃棄物等の問題が生じており、土地利用を明確にするため、保全すべき地域と再生・振興すべき地域のゾーニングを行った。さらに地域振興のための地区計画ガイドラインを策定した。
本論は、人工基盤に侵入、回復した自然と景観美のかかわりを明らかにするため、人工構造物である雨水調整池を事例にその可能性を検討した。その結果、雨水調整池は構造上、眺望の対象となり得ること、植生等の自然の回復は調整池のコンクリート面という人工物や周囲の都市というテクノスケープとの間にコントラストを生み、人工物の廃退やうつろいの美を醸し出し、美的な景観の対象となり得ることが示された。また、周辺の住民意識調査より、自然の豊かさに対する考えと景観美との関連が示された。自然の回復した人工的基盤は景観美の対象となり得る可能性があり、今後、産業基盤など余剰な空間として回帰される空間における景観形成に関しても本知見は適応できると考えられる。
マレーシアペナン島の歴史都市ジョージタウンでは、この数十年間多くの歴史的建造物が姿を消し、2008年世界遺産に登録されたにもかかわらず都市部の人口減少が続いている。歴史的街区に形成されたコミュニティの急激な消失は、必然的に都市アイデンティティの喪失につながる。本研究は、ジョージタウンのアルメニアン通りで実施された住民参加による歴史的建造物保存の試験的プラグラムを対象として、都市アイデンティティにおける住民の役割に関する調査をおこなった。
近年、地方都市では人口減少や少子高齢化に直面している。そこで、いくつかの地方自治体は定住人口を増加させるのが困難になっているため、地域活性化のために交流人口を増やすことを試みている。その中で、ガイド型まち歩き観光は交流人口を増やす一つの方法として注目されている。本調査研究では、75の観光ボランティアガイド組織に対してアンケート調査をし、ガイド型まち歩き観光の地域活性化の効果を明らかにしようとした。その結果、観光ボランティアガイド組織は組織型とグループ型に大別でき、組織型はグループ型より効果をあげ、公益性を強く有している傾向がとらえられた。
本研究では、小学校5年生の総合的な学習の時間を対象に、地域の「歴史・伝統」をテーマとしたまちづくり学習プログラムを立案・実施する。歴史に着目したまちづくり学習の実践と評価より、児童の地域への関心がどう変化するか、児童の主体的関与の意識がどれだけ高まるかを検証し、今後のまちづくり学習のあり方を提言する。現存する歴史資源から変遷を結び付けて地域を捉えることができた児童は、主体的関与の意識が向上したことと2居住者と非居住者に関係なく、日本橋地域への主体的関与の意識が上昇したことから「第二の故郷意識」が児童の中で芽生えたのではないかと考える。歴史ある地域の資源の変遷を学ぶことで、非居住者の地域への関心の喚起に有効であった。
この研究の目的は、孤立死の問題を解決するための方策として実施された活動についての効果を把握することである。横浜市都筑区勝田団地で実施された活動を対象に、アンケート及びインタビュー調査により、住民にどのような意識・行動変化があったのかを把握した。この調査により、多くの住民が孤立死を身近に感じ、積極的に挨拶をしたり、他の住民と話をするようになるなどの意識・行動変化があったこと、また、各団体との連携が密になると言う効果が把握できた。
本論文の目的は、どのような景観要素が商業地域の回遊行動において誘発的または抑止的要素となるのかという点を明確にすることである。12地点の路地空間の景観構成要素を把握し、その上で、ビデオによる印象をアンケートで把握することにより要素抽出を行った。結果は、高彩度の看板と緑と落ち着いた壁面の組み合わせ、低彩度看板と緑の組み合わせなどが誘発要素となり、抑止要素は、高彩度看板と単調な壁面の組み合わせや落書きなどである。
研究は、港北ニュータウンの地区公園を対象に、この地域の特徴である活発な公園愛護会活動と他団体との連携及び役割を明らかにした。各公園愛護会会長の思想や会の母体となっている組織、活動内容、公園内・近辺の施設等の連携の違いによって、活動のタイプが①管理メイン、②管理と年中行事メイン、③管理と周辺との交流メインの3タイプに区分できる。
京都・大原は古くから都人の隠遁の地であり、また薪炭の行商人である大原女の里としても知られてきた。本研究では、外部者がもつ大原のイメージを絵画によって明らかにしたうえで、大原に生まれ育った人が営む実際の生活とその風景をスケッチと口述を用いて把握することを目的としている。大原を描く画家が最もよく好んだ主題は「大原女」であり、彼らは自給自足の生活を営み、自ら労働する女性の姿に“素朴の美”を見出していた。一方で、大原女経験を持つ個人の語りから明らかになったのは、美しさの背後にある労働の苛酷さや悲哀や苦悩を抱いた生身の人間の姿であり、本研究では口述とスケッチを通して人とその人の営み(暮らし)の風景を描き出した。
2004年10月23日に発生した新潟県中越地震によって集団移転を行った新潟県北魚沼郡川口町(現長岡市)小高集落を対象に、住民、移転前の近隣集落の住民を対象に聞き取り調査を行った。人々や集落が、集団移転による居住地の変化に対応していく過程とそこから見出された課題について考察することを目的とした。その結果、場所は変わっても地域の祭りや薬師堂、運動会の存続とともに、場所が移動することにより集落が消滅するのではなく、場所が変わっても同じ集落であり続けるとはどういうことかということを振り返っている。
「市民参加」という言葉は都市計画でよく使われている。我が国のまちづくり分野でも市民参加の計画やプロセスが導入されている。しかしながら、「市民参加のまちづくり」によって得られる効果は地域性やまちづくりの手法などによって異なる。本研究は市民参加のまちづくりのために関わる市民団体の意向を明らかにすることを目的とする。調査対象は寝屋川市のまちづくり事業である。まず、寝屋川市の協働のまちづくりへの取り組みに参画している市民団体(Nクラブ)へのヒアリング調査と現地調査を行った。次に、Nクラブ会員を対象にしたアンケート調査を行い、まちづくり事業への参加の活動、積極性、満足度について明らかにした。さらに、AHPを用いて市民参加の意向を定量的に示した。
本研究は、国土政策としての主に首都圏を中心とした都市・地域計画と交通計画の課題とその方向性の一案を提案するものである。圏央道等周辺については、筆者が土地市場動向を行った結果、次の要因によって、当該区域への企業等の立地が進んでいる傾向があると推察している。<br>要因①広域道路交通網体系の整備と一部通行料金の低廉化<br>要因②商業の立地動向の変化<br>要因③災害に対するリスクマネジメント<br>それらの解決方法は、居住、産業、商業、農業の4つの空間をゾーニングして、その間をつないで、めぐって、楽しめる交通環境を整え地域全体として発展していく方策を提案する。
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