2011年3月に発生した東日本大震災によって甚大な被害を受けた被災地のうち、6都市が環境未来都市に選定されている。本研究は、この6都市を対象として、「環境未来都市」構想に関わる事業進捗の概況と、同構想についての自治体の認識を分析した上で、それぞれの都市における特徴的な取組事業・活動について詳細に分析し、「環境未来都市」構想の取り組み実態を明らかにすることを目的とするものである。現段階では各都市における「環境未来都市」構想の取り組みが新たな価値の創造につながっていくのかどうかを評価することは難しい。既に環境未来都市に固有の予算措置はなくなっている中で、今後、各都市が創意工夫のもとに、自立的に「環境未来都市」を構築していくことができるのかが問われている。
本研究は、エコツーリズムガイドの問題点とその対策に関する基礎的な知見を得ることを目的とするものである。「裏磐梯エコガイドの会」の会員を対象とするアンケート調査から、十分な収入を得ることができず、高齢のガイドが兼業でまたは退職してから、ガイド活動を行っているということが明らかになった。また、全国のエコツーリズム地域推進団体に対するアンケート調査から、大半の地域では「ガイドの高齢化・後継者不足」に関する対策は行われていない一方、多くの地域では「ガイドの質の維持・向上」に関する対策が行われているということが明らかになった。今後、エコツーリズムを発展させるためには、それぞれの地域において、住民や行政などがエコツーリズムを推進する意義や目標を再確認し、今後のガイドのあり方を検討することが必要である。
本研究は、磐梯朝日国立公園に指定されている福島県北塩原村の住民を対象として、国立公園と国立公園制度に関する住民意識を分析した上で、先行研究によって明らかにされた自然保護官の認識と比較しながら、国立公園制度の再構築に向けた課題を明らかにすることを目的とするものである。本研究を通じて、住民も自然保護官も、既存制度の枠組みのままでは、今後は国立公園の保護と利用の増進を図り続けることは難しいと認識しており、国立公園の管理体制に関しては多様な関係者の協働による管理体制への転換、管理手段に関しては暮らしやなりわいの持続的な活性化施策の充実が必要だと認識していることが明らかになった。結論として、こうした住民と自然保護官の共通認識を踏まえて、国立公園制度を再構築することが必要であることを指摘している。
高度経済成長期、住宅不足に対応するため、多くの住宅が郊外部に建設された。このような地域では、居住者の高齢化、地域コミュニティの崩壊、空き地・空き家の増加など様々な問題が生じている。本研究では、福島市蓬莱団地を事例に、世帯主と子ども世代双方を対象としたアンケート調査に基づき、居住状況や生活環境の評価を分析することで、郊外住宅団地の持続可能性を検討する。主要な結論は以下の通り。(1)居住実態や居住意向からは、今後も人口減少が進行することが予想される。(2)それでも、子ども世代の約40%が住宅継承について積極的な考えを持っていることに加え、子ども世代の約55%は住宅継承について、まだ決めていない。(3)蓬莱団地の持続可能性を高めるためには、魅力的な生活環境整備、例えば、買い物環境や公共交通環境の改善が必要である。
本研究の目的は、通りの名称の認知度の程度と賃料や地価との関係を分析することである。このため、全国の政令市・中核市の中心市街地のうち、福岡市の天神地区・博多地区、さいたま市の大宮地区・浦和地区、浜松市、熊本市、高松市を対象として実証分析を行った。地方都市の中心市街地認知度の指標として、GoogleとTwitterの件数を用い、歩行者数との相関関係を把握し,重回帰分析を行った.説明変数としては,認知度、建築物の特性、立地、街路形状、歩行者数を用いた。その結果、賃料は建築物の指標と関係があり、地価は認知度の指標と関係があった。
本研究では、再開発事業によって新たに形成された商業集積地と既存の商業集積地がどのような棲み分けを行い、年月を経てどういった融合分離を繰り返しながら1つの商業集積として馴染み、広がり浸透していくのかを視覚的に示し分析することを目的とする。このため、本研究は、再開発の中でも近年増加をみせている複合商業施設に着目し、オリナス錦糸町及びその周辺の商業集積を分析した。その結果から、再開発は周辺地域に馴化することはできるが、特定の施設種別に偏った集積を生む傾向があり、結果的には再開発と周辺地域また施設種別ごとにおいても異なった展開をするため、相互の浸透という点では困難が残ることが示唆された。
近年、コンパクトシティの構想による職住遊を近接した都市づくりが進められている。しかし、一方で人の行動範囲が狭まり、様々なものや情報を得る機会、多様性といったものが失われる可能性も示唆される。密度の制限を設けるとすれば、様々な機能が集約しているため立ち寄りのための施設の数自体は減少する。そこで本研究では、都市における職住遊の配置と職住割当に着目して立ち寄り易さを分析する。仮想都市における分析の結果、利用できる時間と立ち寄る経路によっては、用途ごとに分かれている都市構成の方が立ち寄りがしやすい場合があることが分かった。
本論文では、米国のミシンガン州、オハイ州の事例からランドバンク設立の背景とバンドリング制度の仕組みを述べ、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて、バンドリングの課題を指摘する。
北米2都市(トロントとポートランド)における屋上緑化に関する条例やインセンティブを調査した。両都市とも、屋上緑化施策は屋上緑化の雨水管理効果に起因するものであった。加えて、トロントの屋上緑化施策は都市への経済効果に着目したスタディに基づき実施されたものであった。これは、トロントが北米で初の屋上緑化義務化条例を施行した理由ともいえる。2都市の屋上緑化施策の調査から、ヒートアイランド現象緩和に着目した日本(東京)の屋上緑化条例との比較、検討を行った。
建築研究所では,地方公共団体の都市計画・まちづくり分野における地理空間データの整備・利活用状況に関するアンケート調査を2015年2月に実施した.回答は83.4%の団体から得た.本稿はそのアンケートの結果より,都市計画区域を有する団体についての単純集計結果の速報である.
本研究は、豊川市を対象として、海軍工廠をはじめとする旧軍用地が、何に転用され、戦後の市街地形成にどのような影響を与えたのかを明らかにすることを目的としたものであり、以下の点が指摘できる。豊川土地区画整理事業において、旧軍用地の利用は、公共用地の確保という点から、減歩率を低下させる効果があったと考えられる。1975年の用途をみると、海軍工廠の跡地には工場誘致をおこない、巨大な工業地を再形成し、その南側に隣接する付帯施設群の跡地には、市の主要施設を集てめシビックコアを創出している。もともと、海軍工廠を中心とした職住近接の都市構造であったが、戦後もそれら旧軍用地を転用して市街地形成が図られたことで、職住近接という性質が引き継がれた。
近年、LRTの整備は欧米諸国を中心に進んでいる。日本でも2006年に富山のLRTの新規開業がはじまった。そして、現在、路面電車の会社は、LRVやバリアフリーの電車の導入を進めている。また、横浜市や宇都宮市はLRTの導入を検討している。しかし、現在のところ、新規開業に至った事例は富山市のみである。本研究では、日本にある20の路面電車の会社を対象に、「生産面」、「経営面」、「サービス水準面」、「環境配慮面」の4つの側面について包絡分析法を用いて評価した。
1950年代後半から1960年代にかけて、日本は高度経済成長期であった。都市機能の大都市圏への集中が進む中、無秩序に都市が拡張していくスプロール化が各地で問題になった。そして、この問題を解決するため、街を計画的に整備するというニュータウンの建設が進められた。港北ニュータウンもその一つである。港北ニュータウンは1974年に造成が始まったものの、地区内の公共交通機関はバスのみとなっていた。1993年に、地下鉄がやっと開通した。本研究ではその経緯を踏まえ、地下鉄の開通が土地利用に与える影響を分析した。
長期的土地利用計画では災害を複合的に捉えるだけでなく、人口増減も考慮する必要があり、それを事前復興計画の策定を通じて検討することが重要であることが、東北地方太平洋沖地震の教訓として得られた。そこで本研究では、人口増減と複合災害の情報を含む空間データベースを構築し、それを用いた長期的土地利用計画の検討例を示すことで、事前復興計画策定技術の向上を図り、減災都市計画の展開に寄与することを目的とする。<br>具体的には、データベースを活用した長期的な市街地の移転シナリオを構築するモデルを示すこととする。このモデルは、移転前後の市街地の面積や人口の移動量を把握可能とするため、土地利用計画を検討する際に有用なものとなる。
本稿は、2013年度からの2年間(2期)にわたり静岡県南伊豆町において実施された「石廊崎ジャングルパーク跡地利用計画策定ワークショップ」における住民参加による基本構想案、基本計画案策定の経過を通して、空間整備の計画手法としてのワークショップの有効性を示すとともに、住民参加WSを進める上での課題を明らかにすることを目的としている。考察より以下の点が明らかとなった。(1)ワークショップにより、地域における観光の方向性が示された。(2)地元の地区において、今後の展開へもワークショップの手法を取り入れる意識が共有された。(3)ワークショップの実践の中で、町の職員がファシリテーターとしての創造的な力を身につけることにより、行政と市民が協働し創造力が発揮されるまちづくりが実現されると考えられた。
本研究は、神戸市長田区の伝統行事である縁日と地蔵盆を対象に、それが地域住民の交流の拡がりに果たす役割を検証する。長田区の住民を対象にアンケート調査を行い、それらの行事が新しい交流をどのように生み出しているのか、そしてそのつながりから人々がどのようにコミュニケーションをとっているのか等を把握する。分析の結果、縁日と地蔵盆は、主として、その行事がなければ出会わなかったであろう同質的な人同士の出会いの場となっており、また、災害発生時に有効となりうるつながりを生み出していることがわかった。さらに、行事の幹事役は地域のネットワークのハブとして機能している事実も把握した。これらの結果から今後の持続的な行事の運営や地域ネットワークの発展についても考察する。
本項では、北九州市において、超小型モビリティの地域導入事業として、先導・試行的に平成24年度より継続的に実施している「北九州市超小型モビリティ導入促進事業」の平成26年度について報告する。平成26年度は特に下記の3つの事業を実施した。1.門司港レトロ地区における観光レンタカー事業、2.小倉南区における防犯パトロール(青色回転灯つき)試行事業、3.小倉南区における買い物支援等試行事業。また、上記の事業に関連する調査を実施した。本報告は、これら平成26年度の実践・調査の活動成果を取りまとめたものである。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら