本稿の目的は、東京の土地利用規制と交通の問題を考えるにあたり、基礎となるデータの共有化を図ることである。著者らは、主要用途別の交通発生集中原単位を手段別・時間別に算出し、混雑への影響を直接的に比較した。この結果、事務所による鉄道朝ピーク時の負荷量は約220/tr/ha/hと圧倒的に大きいこと、店舗による負荷は朝の鉄道では小さいが昼間の自動車では事務所の2~3倍になること、住宅の負荷は顕著に小さいこと等を示した。また、こうした原単位は変化するものであり、事務所の1人当たり床面積が近年大幅に拡大したこと、20年間に東京都区部の事務所床面積が倍増したにもかかわらず、業務目的の自動車交通量は6割程度に減少したこと等を指摘している。
本研究の目的は、景観イメージから街路を類型化し、それらが街路の空間的構造および景観要素とどのように関連しているかを明らかにすることである。研究方法として、1)街路のイメージによる類型化、2)空間的構造の分析、3)沿道建築物の色彩との関連性の分析、を行った。そして最後に、色彩景観コントロールの提案を行った。結果として、1)街路構造と景観構成要素の植栽は歩行者に心地よさなどの内面的な印象を与える、2)景観構成要素の意匠や色彩は街路の再生を行う際に有用である、3)提案した色彩誘導手法により街路にまとまりを与えることが可能である、ということが明らかにされた。
本研究においては、先ず、市民参加、合意形成、パブリックインボルブメント等の一連の概念との関係において、地域が自ら計画を発案する手法(地域発案型アプローチ)を位置づけた。次に、交通計画において、海外や我が国の事例を通じ地域発案型アプローチの担い手としての非行政組織の役割と成立条件について明らかにした。3つめに、交通計画事例を比較分析することにより、地域発案型アプローチの評価を行った。以上より、交通計画における地域発案型アプローチのあり方を示すことを目的とする。
本研究は住民の時間的側面に着目し、地域活動の人的資源(地域資源)が潜在化している原因を探るとともに、それを顕在化させるための知見を得ることを目的とする。前半では、住民が地域活動に参加してもよいと考える時間と実際の時間との乖離を示し、後半で住民の属性別、時間帯別に地域資源の所在をに明らかにし分析・考察を行なった。主要な結論は以下の通りである。・現時点で地域活動に関わっていない住民は41%だが、今後地域活動に関わりたくないと考える住民は3%に過ぎない。地域活動に関わっていない常時雇用者なども無関心ではなく、夜間や休日などの参加を希望している。・約半数の住民は1日2時間程度の短い時間で地域活動に関わることを希望している。そのような細切れな労働力を受け入れられる活動が少ないことも地域資源が潜在化する一因である。
大畑町は下北半島北部に位置し、海と森に囲まれている。その大いな自然の胎に棲みつづけるまちづくりを目指し、2000-01年度にまちづくりプランを作成した。同プランは都市計画マスタープランであり、10回以上の住民ワークショップを経て作成されたものであり、住民のことばでまちの資質と将来像が描写されている。同プランの概要とその後の動向について報告する。
本稿では,基本構想と基本方針を中心に,日本の計画制度について考察を行い,日本の法定計画制度のあり方について提言を行うことを目的とする.具体的には,1)現在の計画制度を体系的に整理することによって,問題点を抽出し,2)市町村はどのようにその問題を解決しようと取り組んでいるかを明らかにするとともに,3)欧米諸国の計画制度から学ぶべきものは何かを,体系的に検証する.以上の分析から得られた教訓を生かすべく取りまとめ,日本の計画体系のあり方について提言を行っている.
東京都の公共空地や公園は、諸外国と比較して狭いことが以前から指摘されてきた。こうした中で総合設計制度を活用することによる公開空地の供給が、特に大規模開発の際に多く行われてきた。しかし、公開空地は容積のボーナスをもらうための手段として設置され、目的や意図が不明瞭となり、周辺地域との整合性がとれていないところも多い。本研究では、東京都において総合設計制度により創出されてきた公開空地に着目し、まず年代、地域、手法別に現状を整理した。さらに、特徴的な地域を複数選定した上で現地調査を実施し、整備状況や利用実態を把握し、地域の現状にあった公開空地を創出するための問題点や改善点を明らかにした。
本研究の目的は人間の行為と空間の関連を考察することにある.このため,アイテムによってしつらえられた空間であるアイテム空間に着目し,コンビニエンスストア前での人間行動の観察に基づき,空間選択の諸相を分析した.観察は東京都の多摩市永山と調布市柴崎で各一か所の店舗で行った.前者の店舗は前面道路から駐車スペース分の広い「ひき」があるが,後者にはない.結果として,行動の回数と積算時間はともに店舗入口からの距離減衰傾向があることが判明した.ただし,この傾向は単独で行われる事の多い行動とインタラクションを起こして行われる事の多い行動では異なる.またゴミ箱などのアイテムも空間選択に影響を及ぼす.
犯罪不安喚起空間(一般の人が犯罪に遭うかもしれないと感じる空間)と犯罪発生空間(犯罪者の目から見た犯行しやすい空間)の関係を,アンケート調査と,実際の犯罪発生場所把握によって考察するものである.安全で安心な都市空間を構築する為には,これらの空間の関係を解明し,各々の空間特性に応じた,犯罪抑止・不安感軽減策を導くことが大切である.本研究ではその基礎研究として,アンケート調査によって導き出された犯罪不安喚起空間と,代表的な路上犯罪である,ひったくりの発生空間を地図上にプロットし,2つの空間を比較し考察することを目的とする.
本研究では、土地利用パターンのマルチエージェント都市シミュレーションによって、空き家の発生とその集積の特性を解析した。都市は20×20個のセルによる正方領域で、そのセルには4タイプ(産業、住宅、商業、空き地)のエージェントが生成する。空き地以外の3タイプのエージェントは空き家になり得る。エージェントの生成や消滅は、周辺との相互作用によってモデル化した。また、コンヴァージョン費用や、人口の増減、空き家の集積による影響、中心市街地における地代の上昇の概念も考慮した。その結果、都市の衰退は常に都市の外周部から徐々に内側に浸透すること、空き家の集積による影響は都市の衰退を加速させることがわかった。
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