アメリカの歴史的環境保全の流れを考える場合、主に都市計画制度との関連から都市内の歴史的街区の保存を中心に記述する立場においては、20世紀初頭の建築保全運動は単発的に行われた建築物単体の保全としてその前史の扱いを受ける。 しかしながら、新大陸と呼ばれる場所で彼らが空間の中に残そうとしてきた歴史とは果たしてどのようなものだったのだろうか。またそれは日本のものと共通の要素を持つのだろうか。 本稿では、この時期の最も有名な建築保全運動の一つであるニューイングランド古物保存協会の最初期の活動について、大森貝塚の研究で知られるEdward S. Morse博士が関東大震災の後東京大学に寄贈された当時の機関紙の内容を紹介し速報の形で報告する。