食品添加物に指定されている食用タール色素について, 使用基準は設けられているが, 使用量は規定されていない。これは実用的使用量が微量であることと, 食品中のタール色素の定量が容易でないためと考えられる。
著者らは高木による液体食品中タール色素の定量法の定量操作に改良を加え, うめぼし, ドロップ, ようかんなどの固形食品中の食用タール色素の定量に適用を試みた。
1. 試験方法は羊毛染色法, ロ紙クロマトグラフィー, 分光測光法を定量的に操作し, 特に羊毛に対する染色, 溶出の終末点を吸光度の測定により定めた。
2. 本試験操作による色素の回収率は, ようかんに添加した食用赤色102号および食用黄色5号の他は良好な結果を得た。
3. うめぼしに添加されていた各色素の最大使用量と最小使用量の差は, 食用赤色2号が約12倍, 食用赤色102号が約200倍, 食用黄色4号が約70倍のひらきを示した。
4. ドロップおよびようかんに添加されていた食用タール色素の使用量の差はわずかであった。
以上, 本実験によって, うめぼし, ドロップ, ようかんなどの固形食品中のタール色素の定量が可能であることを認めた。また, 本実験によって, うめぼしのような同一色の食品に対しても, 製造者が異なると色素の使用量にかなり大きな差異を認めたが, 食品添加物を必要以上に添加することは, 食品添加物が指定されている主旨に反するものであり, 好ましい傾向ではない。
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