胆道
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1 巻, 1 号
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  • 亀田 治男
    1987 年 1 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
  • 特に胆石症治療を中心として
    佐藤 寿雄
    1987 年 1 巻 1 号 p. 3-4
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    1882年,LaRgenbuchにより初めて胆嚢摘出衛が行われた.それから,すでに1世紀を経過したが,その間,今世紀前半における抗生物質の開発,体液調整法の進歩,そして気管内麻酔法の確立などにより大きな手術が安全に行えるようになり,胆道外科もめざましい進歩をとげた.その中にあって胆道外科の分野では,今日でも古くて新しい問題点が次々と提示されている.1980年代も半ぽを過ぎた今日,わが国における胆石症を中心とした胆道外科の今日までの流れを顧みながら,先人諸賢の思考過程に触れ,少しく将来にも展望を加えてみたいと思う.
  • EDTA・4NaとMethyl tert.-butyl ether(MTBE)の併用効果
    新谷 史明, 北山 修, 伊勢 秀雄, 鈴木 範美, 佐藤 寿雄
    1987 年 1 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    コレステロール結石の溶解剤として最近臨床応用されている,tert.-ブチルメチルェーテル(MTBE)をエチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩と併用し,ビリルビンカルシウム石(ビ石)の溶解を試みた.厚さ10μのビ石切片をMTBEに浸漬後,37℃ 暗所で1%EDTA・4Na溶液に浸漬すると,MTBE非浸漬群に比べてビリルビンの溶解は有意に促進した.MTBE浸漬時間はわずか10秒間で十分であった.また結石そのものをMTBEで20秒間前処理し,同様に1%EDTA・4Naに浸漬,24時間毎にEDTA・4Na溶液を交換,その際20秒間ずつMTBEを作用させると,72時間後に結石は溶解前の乾燥重量の43.96±13.27%にまで縮小した.
    一方MTBE処理を行わなかった場合には,72時間後には溶解前の76.87±14.45%にまでしか縮小せず,MTBEの効果は有意であった.MTBEはEDTA・4NaのCaキレーティング作用を促進し,副作用もほとんどないことから考えて,ビ石の直接溶解の併用薬剤として有用であると思われた.
  • 鬼島 宏, 渡辺 英伸, 岩渕 三哉, 石原 法子, 内田 克之, 近藤 公男, 白井 良夫, 吉田 奎介
    1987 年 1 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    早期胆嚢癌37症例43病変を用いて,癌病巣内およびその周囲粘膜にみられる化生性変化を検索し,さらに早期胆嚢癌の組織発生について検討を行った.腸型化生の組織所見として,杯細胞・Paneth細胞を指標とし,胃型化生のそれとして,III型粘液を指標とした。また,好銀性細胞を,腸型および胃型の化生の指標とした.早期胆嚢癌43病変のうち,6病変は腺腫内癌であり,37病変は通常型早期癌であった.
    腺腫内癌は,癌部・腺腫部ともに,主として胃幽門腺型の性質を強く持っていた.通常型早期癌の86.5%に,化生性変化が認められ,特に腸型化生が高頻度にみられた.また,その周囲粘膜の91.9%にも化生性変化が認められ,特に腸型と胃型とを合わせもつ化生が高頻度にみられた。また,最大径1cm以下の小胆嚢癌で,胆嚢癌の組織発生を検討したところ,腺腫内癌3病変は主として胃幽門腺型の性質を強くもつ腺腫の癌化により発生したと考えられ,通常型胆嚢癌の67%(6/9病変)は,化生粘膜の上方部より発生したと考えられた.
  • 佐々木 睦男, 森 達也, 伊坂 直紀, 宮城島 堅, 稲葉 安正, 福嶋 貴, 朝倉 靖夫, 遠藤 正章, 鈴木 英登士, 小野 慶一
    1987 年 1 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝内結石症の成因解明の目的でイヌを用いた実験モデルを作製,胆汁の生化学的分析・細菌学的・病理組織学的検討を加えた.
    実験モデル1:肝左外側葉胆管へ胆管径と同じ内径のシリコンチューブを挿入,他端を十二指腸へ誘導.実験モデル2:モデル1と同じチューブを肝左外側葉胆管に問置.モデル1では25頭中2頭に結石生成が認められ,結石は脂肪酸カルシウム石であった.モデル2は15頭作製,経門脈的にE.coli1×106を注入した2頭中1頭に黒褐色の結石生成が認められた.
    胆汁中の中性糖および蛋白質の定量では,ヒト肝内結石症では対照と比較しいずれも著明に増加していた.一方,イヌうっ滞胆汁はヒトとほぼ同様の成績であった。SDS-PAGEにより高分子糖蛋白質の増加していることが確認され,この胆汁変化に細菌感染が負荷されることにより結石生成へと進むことが示唆された.
  • 山本 隆久, 内田 清久, 斉藤 洋一
    1987 年 1 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    ラットに回腸広範囲切除を行い,最長12カ月までの胆汁酸代謝の変化につき検討した.回腸切除により糞中胆汁酸排泄量は増加し,胆汁中胆汁酸分泌量,胆汁酸プールサィズ,胆汁酸の腸肝循環回転数,胆汁酸の吸収効率は低下した,これらの変化は術後4週よりみられ,術後12ヵ月経過しても改善されなかった.
    肝では回腸切除により,胆汁酸特にCAの生合成が亢進し,CA系胆汁酸:CDCA系胆汁酸の比は術後6ヵ月まで増加した.反転小腸を用いた胆汁酸の吸収実験では,回腸切除後6ヵ月経過しても残存上部小腸に胆汁酸の能動吸収は認められなかった.以上の結果より,回腸広範囲切除により招来された胆汁酸吸収障害は,長期経過後も改善され得ないと結論される.
  • 金光 敬一郎, 田代 征記, 平岡 武久, 宮内 好正
    1987 年 1 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    115例の自験胆嚢癌症例のうち,手術時肉眼的にS0の21例を対象に,癌進展度および予後からS0症例の手術方針を検討した.S0症例での壁深達度はm癌6例,pm癌2例,ss癌8例,se癌4例で,ss癌以上が60%も存在した.m・pm癌ではリンパ節転移,脈管侵襲ともになく,ss癌では半数にリンパ節転移,全例に脈管侵襲を認めた.se癌では全例にリンパ節転移,脈管侵襲を認めた.壁深達度別生存率ではm・pm癌は5生率100%,ss癌16.0%,se癌30.0%であった.
    以上から,術中に深達度がpmまでかss以上かの診断は重要で,その診断に術中エコーを用いているが,その成績は10例中9例にその深達度,肝浸潤を診断しえた.手術方針として術中エコーでpm癌までは肝床切除+R2,ss癌以上では肝床切除+胆管切除+R2,リンパ節転移状況,肝浸潤の程度により膵頭十二指腸切除また肝区域切除の追加が必要である.
  • 特に前癌病変との関連について
    鈴木 不二彦, 江口 正信, 水口 国雄, 松本 道男, 徳丸 忠昭, 宮野 武, 須田 耕一
    1987 年 1 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    先天性総胆管拡張症50例の切除総胆管,胆嚢上皮について病理組織学的に検討した.これらの総胆管拡張症では膵・胆管合流異常を伴っており,胆道系への膵液の逆流により炎症から癌化をも引ぎ起こすと考えられている.今回検索した非癌例の総胆管上皮では,炎症性の変化を伴うびらん,上皮の過形成から異型性を示すもののほかに,粘液腺や杯細胞の出現など化生性変化も多くみられた.特に,総胆管の異型上皮は4例に認められ,過形成や化生性変化を合併し,パネート細胞も2例にみた、胆嚢上皮では胆石の有無にかかわらず炎症所見がみられたが,4例に過形成を,また1例に腺腫を認めたのみで,粘膜上皮の変化は総胆管に比較し乏しかった.一方,3例の癌合併例でも癌部,非癌部の上皮に化生や過形成が認められた。以上の化生,過形成,異型性などの変化は癌化の一要因となり,総胆管拡張症が胆道癌の背景因子となることが示唆された。
  • 発癌との関連を中心として
    船曵 孝彦, 杉上 勝美, 落合 正宏, 天野 洋, 藤田 真司, 二渡 久智, 山口 久, 松原 俊樹, 亀井 克彦, 福井 博志, 長谷 ...
    1987 年 1 巻 1 号 p. 77-83
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    膵胆管合流異常の合併症,特に胆道癌発生に関与する障害物質を解明する目的で,合流異常7例の胆汁中胆汁酸分画を測定した.
    1)総胆管拡張症・非癌例では,胆汁組成比は小児と成人の間に大差はなかった.胆嚢胆汁中のDCA分画が合流異常のない胆石例(対照)と比べて減少していた.拡張部胆管内胆汁ではDCA分画が増加しており,これは拡張部胆管内での胆汁うっ滞の結果,二次胆汁酸への移行が起こったものと考えられた.
    2)総胆管拡張症・拡張部発癌例では,胆管胆汁中のTDCAが増加していた.
    3)胆管非拡張・胆嚢癌例では,胆嚢胆汁中に遊離型DCAが出現し,LCAが増加していた.
    以上の結果は,膵胆管合流異常においては胆汁が膵液の逆流を受けて胆道内でうっ滞中に胆汁中胆汁酸組成の変化が起こり,発癌に関連することを示唆するものと考える.
  • 山本 敏雄, 小倉 嘉文, 水本 龍二
    1987 年 1 巻 1 号 p. 84-94
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    傍乳頭憩室を伴った良性胆道疾患30例の手術経験に基づいて,本症の外科的治療法を検討した.憩室の大きさは,20mm以上が20例(66.7%)と多かった.憩室最大径および総胆管径は,Lemmel症候群が最も大きく,次いで総胆管結石,胆嚢結石の順で,傍乳頭憩室が原因で再手術が行われた7例の憩室最大径は25.9±8.5mmと有意に大きかった.手術術式は胆摘あるいは胆摘兼総胆管切開Tチューブ挿入のみのものが13例であり,その他の手術を加えたものが17例であって,うち7例に憩室を切除しているが,憩室切除のみのものは3例である,その他は乳頭形成7例,乳頭形成兼膵管口形成5例,総胆管空腸吻合2例であり,全例2年1ヵ月から10年5ヵ月の現在術後経過良好である.
    以上,傍乳頭憩室が乳頭の口側に位置し,大きさが20mm以上のものは胆道や膵への影響が認められるため憩室切除や,乳頭形成,膵管口形成など個々の症例に応じた適切な術式を選択することが必要である.
  • 胆石の関与について
    岡田 周市, 土屋 幸浩, 大藤 正雄, 高井 英一, 中村 広志, 松谷 正一, 江原 正明, 木村 邦夫, 税所 宏光, 奥田 邦雄
    1987 年 1 巻 1 号 p. 95-100
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌における胆石の関与,および,胆石に合併する胆嚢癌の頻度を明らかにし,胆嚢癌の背景因子としての胆石の意義についてretrospectiveに検討した。胆嚢癌における胆石保有率は54.2%(117/216例)であり,進行度別にみると,早期例の胆石保有率は65.4%(17/26例),進行期例では52.6%(100/190例)であった.腹部超音波検査により診断された胆石保有例の胆嚢癌合併率は1.5%(10/681例),非保有例は0.1%(6/4,817例)であった.人間ドック例をコントロールとした,胆石保有例における胆嚢癌の相対危険度(オッズ比)は26.0と有意(P<0.001)に高値であった.
    以上より,胆石と胆嚢癌の明らかな関連性を認めた.したがって,胆嚢癌の早期診断には,高危険群である胆石保有例の慎重な経過観察が重要と考える.
  • 斎藤 和好, 大森 英俊, 菅野 千治, 阿部 正, 平田 善久, 鈴木 俊輔, 村上 弘治, 中館 興一
    1987 年 1 巻 1 号 p. 101-105
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆嚢壁が広汎な石灰化をきたし,その外観および硬度が陶器様変化をきたす,珍らしい疾患である陶器様胆嚢4例について,胆嚢壁石灰化部分の詳細な化学的,結晶学的分析を行い,その結果と生体内石灰沈着について検討を加えた.化学分析にて灰分は49.6%であり,その中でもCaが最も多く平均16.6%,次いでPが平均8.2%を占めていた.Ca/Pモル比は平均1.58であった.
    結晶学的には,赤外線吸収スペクトル(K Br錠剤法)にて,標準試料とした合成リン酸カルシウムのパターンを示した.さらに,X線回折スペクトル(粉末法)でも,同様にリン酸カルシウム(hydroxyapatite)であることが確認された.しかし,そのピークは比較的幅広くなっており,虫垂結石のそれに比して結晶化が良好でないことが示唆された.
  • 原田 貞美, 湯ノ谷 誠二, 久次 武晴
    1987 年 1 巻 1 号 p. 106-110
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆管に存在する結石の原発部位,つまり胆嚢結石の逸脱か胆管原発かを明らかにするため,胆嚢と胆管に同時に結石を有する4症例,胆管にのみ結石を有する4症例,肝内胆管にのみ結石を有する2症例,計10症例の結石のコレステロール含有率を示差走査熱貴計(DSC)を用いて測定し,従来の化学定量分析法と比較すると共にその臨床的意義について検討した.
    DSCによる測定法は極めて簡便で捌定時間も短く,結果も従来の化学定量分析法と比べ遜色はなかった.胆嚢と胆管に同時に結石を有する場合は,形態学的観察に加えコレステロールの含有率から結石の原発部位が判定できたが,胆管にのみ存在する結石ではその原発部位を推定しにくいものが多かった.肝内原発結石については,通常のビリルビン石に比べコレステロール含有率が高かった.
    胆石の原発部位を推定する時,少なくとも結石のコレステロールを定量することは臨床的に有用なことである。
  • 松田 徹, 山口 尚, 深瀬 和利, 成澤 信之助, 門馬 孝, 大泉 晴史, 古澤 晃宏, 佐藤 信一郎, 水戸 省吾
    1987 年 1 巻 1 号 p. 111-116
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    :内視鏡的逆行性膵胆管造影上,十二指腸乳頭部より20mm以内に胆嚢管分枝部を有するか,または胆嚢管分枝部が明らかに膵内に存在する症例を下部分枝胆嚢管症と定義した.792例の胆嚢管分枝部位の明らかな症例中,上記の定義を満たす症例は12例(1.5%)で,うち11例に胆石症の診断で手術を行い,他の1例は急性胆嚢炎の診断で保存的治療を行った.
    手術を行った11例中10例に胆嚢内結石が認められ,そのうち5例が総胆管結石を合併した.結石はコレステロール系結石6例,ビリルビンカルシウム石4例で,胆嚢胆汁有菌率は75.0%,胆嚢炎は90.0%に認められた.以上より,下部分枝胆嚢管症は胆石症を合併しやすい形成異常と考えられた.
  • 胆嚢穿刺吸引法
    高田 道明, 木南 義男, 横田 啓, 山本 広幸, 斉藤 人志
    1987 年 1 巻 1 号 p. 117-123
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    超音波誘導下胆嚢穿刺吸引法による胆嚢内容の吸引と抗生剤の注入は,穿孔などの合併症を有していない急性胆嚢炎症例に対し,有効な治療手段である.筆者らは急性胆嚢炎36症例に対し,局麻下で右肋間より経皮経肝的に胆嚢を穿刺し胆嚢内容の吸引後,胆嚢造影と抗生剤の注入を行った。
    その結果,本法を実施した全症例に炎症の消退がみられた.なお,有胆石症例は胆嚢炎鎮静後手術が施行されたが,無石10症例中8例は経過良好であり,他の2例は胆嚢炎後胆石形成がみられたため手術が施行された.また,抗生剤の全身投与のみの症例では,炎症消失に平均9日を要したのに対し,本法を行った症例では炎症が1日で鎮静化した.以上の成績より,本法は炎症の消退に有効なことより,急性胆嚢炎の治療法として有用であることが示唆された.
  • 大城 久司, 丸林 誠二, 田中 一誠, 山本 泰次
    1987 年 1 巻 1 号 p. 124-132
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    5年間に胆嚢癌40例の手術を施行し,非切除は26例(65%),非治癒切除は10例(25%),治癒切除は4例(10%)である.非切除の平均生存期間は3.4ヵ月で,1年生存例はない。非治癒切除の平均生存期間は約1年で,1生率40%,3生率10%である.治癒切除は全例がstageIで,生存中である.
    非治癒切除でも高度の胆管浸潤や肝非内直接浸潤が原因のものは,症例によっては術後照射療法や肝動注などの集学的治療による延命効果を得ることがある.
    治癒切除の症例はstageIとIIが大部分であるが,それ以上のstageでも拡大手術を行うことにより治癒切除となりうる症例もある.m癌では単純胆摘でもよいが,pm癌になると拡大胆摘+R2が,胆嚢頸部占居癌になると胆管切除が必要となる。ss癌以上になると,さらに癌の進展度に応じて胆管切除,膵頭十二指腸切除,肝右葉切除などの拡大手術を要することになる.
  • 梛野 正人, 二村 雄次, 早川 直和, 神谷 順一, 塩野谷 恵彦, 新村 建司, 北川 茂久, 金井 道夫
    1987 年 1 巻 1 号 p. 133-138
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性で,発熱と右季肋部痛を主訴に来院した.US,CTで肝左葉内側区に90×70mmの単房性嚢胞が認められ,孤立性肝嚢胞が疑われた.しかし,経皮経肝嚢胞造影では,嚢胞と胆管との交通が証明され,また,嚢胞からさらに末梢の細い胆管枝も造影された.嚢胞内視鏡検査による直視下生検では,粘液産生性の高円柱上皮が認められた.Biliary cystadenomaまたは孤立性嚢状肝内胆管拡張症を疑い,肝左葉内側下部切除と胆嚢摘出術を施行した.
    病理所見では,嚢胞上皮は大部分脱落していたが,一部に上皮が認められた.嚢胞壁は線維芽細胞を主体に細胞成分に富んだ厚い間質から形成されていた.本症例は,孤立性肝嚢胞やBiliary cystadenomaにも類似しているが,嚢胞の造影所見より孤立性嚢状肝内胆管拡張症と診断した.肝内胆管拡張症は,Caroli病を除き明確な疾患概念が確立されているとはいえず,今後の検討が必要である.
  • 深井 泰俊, 堀田 敦夫, 桜井 隆久, 白鳥 常男, 大石 元, 打田 日出夫, 堤 雅弘, 高橋 精一, 小西 陽一
    1987 年 1 巻 1 号 p. 139-145
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    著者らは,胆嚢に原発したと考えられる悪性リンパ腫の1手術例を経験したので報告する.症例は68歳の女性で,黄疸を主訴として他院に来院した.他院入院後PTCDを施行,肝門部より三管合流部にかけての上部胆管の狭窄が認められ,胆管癌と診断した。しかし1ヵ月後PTCDが自然抜去されたにもかかわらず,黄疸は増強せず,当院入院後のERCの結果でも胆管の狭窄は消失していたが,胆嚢頸部に陰影欠損が認められ,再度施行したPTCD後の選択的胆嚢造影でも,胆嚢頸部の陰影欠損が確認された.
    術前診断は諸検査成績と考え合わせて胆嚢結石または胆嚢癌であった.手術所見では,胆嚢頸部には結石はないが硬い腫瘤が触知され,上部胆管周囲には特に異常はなく,No.12b2リンパ節の腫大が認められた.以上から胆嚢癌と診断し,拡大胆嚢摘出術,R2リンパ節郭清を行った.術後の組織学的検索にて,non-Hodgkin's malignant lymphomaと診断された。
  • 安藤 久實, 伊藤 喬廣, 安井 徹郎
    1987 年 1 巻 1 号 p. 146-149
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    ERCPで右肝管起始部の膜様狭窄,術中胆道鏡で径約2mmの狭窄が認められた先天性胆道拡張症の2歳女児例に対して,Dotter balloon dilatation catheter(Cook Inc.4Fr・4mm)による拡張を行ったところ,出血を伴うことなく容易に狭窄を解除することができた.
    肝内胆管の狭窄を伴った先天性胆道拡張症においては,肝切除などが施行される場合もある。しかし,balloon cathterを用いた狭窄部の拡張術は容易かつ安全であるので,この方法を行えば,肝内胆管の狭窄を伴っている場合でも肝外胆管を切除するのみの術式でよい.
  • 布施 修一, 佐藤 薫隆, 庄司 佑
    1987 年 1 巻 1 号 p. 150-155
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    原発性硬化性胆管癌(PSC)は,本邦ではまれである.PSCの診断は胆管癌との鑑別が特に難しく,また重要である.
    われわれは,PSCの1症例を経験した。患者は52歳男性で,黄胆を主訴としていた.PTCでは,上部胆管に限局性狭窄を,肝内胆管にびまん性拡張を,そして胆嚢内に3個の結石を認めた.
    PSCの臨床診断には,PTCが最も有用と考える.さらに臨床経過,病理所見,術中所見,糖質コルチコイド治療に対する反応,検査所見も重要であり,われわれは以上を総合して胆管癌と鑑別した.
  • 近間 敏治, 川端 規弘, 佐藤 隆啓, 夏井 清人, 大村 卓味, 杉本 友照, 小井戸 一光, 堀田 彰一, Hiroyuki TSUK ...
    1987 年 1 巻 1 号 p. 156-160
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    大腸ポリープの内視鏡的ポリペクトミーを目的に入院した55歳男性.入院時,黄疸はもちろん,血液生化学検査には全く異常所見は認められなかった.軽度ではあったが,腹部膨満感を訴えていたため,諸検査を行ったところ,中部胆管に約2cmの陰影欠損像が認められた.さらに,本症例に対し,内視鏡的乳頭切開術(EPT)を施行.切開口より鉗子を挿入し,同部位よりの生検にて悪性像を認めた.また,親子方式による経口胆道鏡を挿入し,腫瘍の観察にも成功した.
  • 相川 勝則, 杉本 元信, 島田 長樹, 勝田 緒里枝, 石井 耕司, 吉田 直哉, 羽鳥 知樹, 住野 泰清, 佐川 寛, 伊東 高仁, ...
    1987 年 1 巻 1 号 p. 161-166
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は82歳男性,昭和60年12月,出血性胃潰瘍にて入院時,腹部USおよびERCPにて著明に拡張した総胆管内に最大26×21mm,計3個の結石像を認めた.患者は心筋症,慢性心嚢炎,脳動脈硬化症のため歩行困難で手術不能のため,外来経過観察としたが,3ヵ月後,心不全と閉塞性黄疸をきたし再入院した.
    通常のPTCD施行後,徐々にドレナージチューブを24Fr.まで交喚し,痩孔を拡張させ,オリソパス社製機械式砕石バスケットカテーテルを瘻孔より直接挿入し,透視下操作し,すべての結石の把持破壊回収に成功した.最近EST,EEL,レーザーなどの併用による砕石衛が報告されているが,本法はより安全かつ簡便に反復操作可能な点が優れているので報告する.
  • 加藤 岳人, 中井 尭雄, 大場 清, 奥村 武夫, 松浦 豊, 宮崎 芳機, 佐藤 達郎, 湯浅 典博, 上床 邦彦, 伊藤 直史, 川端 ...
    1987 年 1 巻 1 号 p. 167-173
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は46歳男性.閉塞性黄疸を呈し,経皮経肝胆管ドレナージにて乳頭部に腫瘍を認め,十二指腸内視鏡検査ならびに経皮経肝胆道鏡検査(PTCS)の生検で腺癌の所見を得た.また,PTCS後の胆汁細胞診にて扁平上皮癌細胞を認めた.膵頭十二指腸切除を施行し,Child変法で再建した.切除標本では21×17mmの露出腫瘤型乳頭部癌であった.組織学的検索では,乳頭管状腺癌と高分化扁平上皮癌の混在した腺扁平上皮癌であり,扁平上皮癌成分の方がやや多かった.
    癌はOddi括約筋への浸潤を認めるもののそれを越える浸潤はなく,早期癌の範疇に入ると思われたが,膵後部リンパ節に転移を認め(Acbp,od,w0,P0,H0,n1,stageII),さらに術衛後5ヵ月にて肝転移を認めた.十二指腸乳頭部腺扁平上皮癌は稀な腫瘍で,本邦報告例は8例にすぎない.その検討から,本症例を含めその予後は通常の乳頭部癌に比べ不良の傾向があり,外科治療上重要と考えられた.
  • 斉藤 康子, 高田 忠敬, 安田 秀喜, 内山 勝弘, 長谷川 浩, 土屋 繁之, 三須 雄二, 四方 淳一
    1987 年 1 巻 1 号 p. 174-182
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝内結石症に対し,肝切除や胆道鏡下切石術などが積極的に行われ,その治療成績は向上しつつある.しかし,肝内胆管の合流異常や多発性の胆管狭窄を伴うLR型肝内結石症では,治療が困難なことが多い.
    最近,われわれは発熱,右季肋部痛を主訴とした62歳男性の,左肝内胆管ならびに右後区域胆管内に多数の結石をみるLR型肝内結石症を経験した.肝左葉外側区域切除,右後下区域の胆管切開,切石を行ったが巨大結石が肝門部側に充満し,嵌頓状態であったため胆管外瘻を設置した.術後胆道鏡下に電気水圧砕石器URAT-1Mを用い砕石し,右肝内胆管結石を切石することができた.また,右後区域胆管は左肝内胆管から分岐しており,この部にpin-hole様の狭窄をみたため,胆道鏡下にブジーを行い拡張せしめた.
  • 竹市 弥生, 早川 富博, 宮治 真, 星野 信, 片桐 健二, 竹島 彰彦, 大西 勇人, 川村 益生, 武内 俊彦
    1987 年 1 巻 1 号 p. 183-188
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性.主訴は心窩部痛.16年前に胆嚢摘出術の既往歴あり.腹部超音波検査では,拡張した総胆管とその中に移動性のあるacoustic shadowを伴うstrong echo,ERCPでは,嚢状に拡張した遺残胆嚢管と総胆管内に6×9mmの不整形で移動性のある透亮像を認めた.
    以上より,総胆管結石と診断し,内視鏡的乳頭切開術および截石術を施行した.採取した結石は不整な5×6×9mmのビリルビン結石で,中心部にループ状の絹糸を認めた.本症例は,遺残胆嚢管が嚢状に拡張していたことより,胆嚢摘出術時の胆嚢管断端処理に使用された絹糸が核となって遺残胆嚢管内で結石が形成され,その後,総胆管内へ落下して症状が発現したものと考えられた.
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