目的 チーズへの糸巻返し中に糸切れが発生した場合の刻々と変化するチーズ巻玉直径に対して, 常に効果的な糸口出しフード形状の設計指針を得るため, チーズの巻玉直径並びにその周速度が糸口出しに及ぼす影響について検討し, 又, その結果に基づき最適糸口出しフードの試作を試み検討する.成果 (1) チーズ巻玉直径の変化に伴い, それに近接して位置するフード近傍の気流状態は大きく変化し, これまで検討してきた糸口出しフード形状ではチーズ巻玉直径が小さい場合, 大きい場合と比較して糸口出しが困難になることがわかった.このことに鑑み, これまでの研究成果を基に試作した糸口出しフード型式D型は, チーズの巻玉直径の大小にかかわらず, 小さな動力でも糸口出し効率を低下させない有効なフード形状であることが認められた.(2) チーズ周速度の遅いほど糸口出しの確実性は増すが, 生産性は低下する.糸口出しフードの吸引圧力・流量 (レイノルズ数Re) により, その周速度の限界値は変化するが, フードD型の場合でレイノルズ数Re=1, 7×104, すきま寸法δ=2.0mmでは, その周速度を0.6m/secとするのが最適で, それ以上で行うと糸口出し効率を100%に保てない.(3) チーズ周速度が増大するに伴って, チーズ壁面近傍の流速ベクトルの方向は, チーズの回転方向と同じ向きを持つようになる様子が認められる.しかし, 各フード型式に対する流れの特徴は, チーズを回転させても, チーズを静止させた場合の特徴が大きくは失われておらず, 従来から模型化して考察してきた研究の有効性を確認することができた.
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