目的 模擬皮膚としてガラス繊維濾紙を用い外部から水を注入することによって, 熱板上に含水濾紙を置く従来法の改良を行う.また注水量, 注水速度および水温の制御とともに放熱量のリアルタイム積算を行い, 任意の発汗状態の再現や急激な放熱量変化の追跡の可能性を調べる.さらに, 各種試験布の熱・水分移動特性の評価を行い従来法の結果と比較する.成果 測定ごとの濾紙交換が不要であり, 測定の間の環境の安定化に要する待時間がなく, また試料を設置したまま乾燥および湿潤定常状態のデータが1回の測定で求められることから, 測定の簡便・迅速化が実現できた.水の注入によって起こる急激な放熱量変化の追跡が可能であり, 測定値は注水量および温度から求めた値と一致することを確めた.これにより過渡的な熱・水分移動の測定への適用が可能となった.また側面からの水分の漏れ率を2%以下と見積ることができた.一方, 注入水の気化に要する熱量は気化熱の計算値よりも最大6%大きくなることを見い出し, それが蒸発に伴う顕熱移動の促進によることを示した.この方法で測定した顕熱抵抗および潜熱抵抗は従来法と同等の精度を有し, 布の相対評価に使用できることが分かった.
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