非等方性流体の流れに関する研究の第一段階として, ニュートン流体の希薄繊維懸濁液を連続体として捉え, 平行平板流路内の流れ中における繊維の配向について次のことを調べた.まず, 十分に発達した流れ中における繊維の配向状態を, 2次のclosure近似を用いて2階の配向テンソルの変化を表す式を流線に沿って数値解析することにより求めた.次に, このclosure近似が妥当であるかどうかを確かめるために流路入口でランダムな配列で流入した多数の繊維の姿勢の変化をJefferyの運動方程式を用いて数値計算し, 配向テンソルを求めて比較した.最後に, 助走域における繊維の配向状態を配向テンソルの変化を表す式を数値解析して求め, 流速場が及ぼす影響を明らかにした.アスペクト比が小さい繊維の場合には, アスペクト比の大きい繊維と比較して姿勢の変化が速いため, 繊維全体がx方向へ配列するのに十分な時間がなく配向状態は悪くなる.さらに, アスペクト比が小さい繊維の場合には, 突然短時間のうちに姿勢を変えるflip-overと呼ばれる現象が顕著にみられる.次に, 2階の配向テンソルの変化を表す式を数値解析するとき用いた2次のclosure近似は, 繊維がある方向に比較的良好に配列しているときには有効であるが, 配列が乱れてくると妥当でないことがわかった.一様流れから十分に発達した流れへ至る助走域では, 十分に発達した流れ中での場合に比べて, 流路の中心部に近い領域では繊維は流れ方向に配列しやすいが, 壁面に近づくにつれてより長い移動距離を必要とすることが明らかになった.
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