日本胸部疾患学会雑誌
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34 巻, 7 号
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  • 吉田 勉, 松井 薫, 高田 実, 楠 洋子, 益田 典幸, 梁 尚志, 牛島 淳, 澤 祥幸, 田村 研治, 福岡 正博
    1996 年 34 巻 7 号 p. 741-746
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    非観血治療を行った小細胞肺癌498症例のうち2年以上生存者61例の中で発生した, 第2癌の頻度と種類, および危険度について検討した. 第2癌は7例に認められ (相対危険度3.2倍), 肺癌4例 (相対危険度10.3倍) 胃癌2例 (相対危険度3.5倍) 前立腺癌1例であり海外の文献に比べ胃癌の割合が多かった. また喫煙歴, 胸部放射線治療の有無, 癌の家族歴の有無, 治療後の喫煙の有無で第2癌発生の相対危険度を検討すると, 小細胞肺癌治療後の継続喫煙歴と家族歴に第2癌発生の要因となる可能性が示唆された. 治療後の喫煙継続例における喫煙関連癌 (Smoking-related cancer) の発生は喫煙継続のない集団に比べ相対危険度で約3倍に増加していた. また第2癌は経時的に増加が認められることから, 小細胞肺癌の長期生存例が多くなれば肺および肺以外の部位についても第2癌の発生に注意を払って経過観察する必要があると考えた.
  • 安ケ平 英夫, 金沢 武道, 高梨 信吾, 小野寺 庚午
    1996 年 34 巻 7 号 p. 747-754
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Sephadex G-75 (SG-75) 注入による肺塞栓モデルを作製し, 肺塞栓急性期における血液ガス分析値ならびに血小板凝集能の変動について検討した. 家兎の耳静脈からSG-75浮遊液を注入し, 肺塞栓モデルを作製した. SG-75浮遊液の注入後10分時をピークとした低酸素血症が認められた. 病理組織学的には肺動脈領域にSG-75の塞栓所見とその周囲への血栓形成が認められた. 血小板数は10分時に最も低下し, 血小板凝集率は adenosine diphosphate (ADP), platelet-activating factor (PAF) による何れの凝集惹起でも40分時をピークに低下した. この結果から, 肺動脈の閉塞による虚血により血小板は活性化され, 塞栓周囲に動員されて消費されたであろうと推測された. SG-75の注入による血小板機能の変動は, 肺動脈周囲の組織の血流を一層悪化させることになり肺塞栓急性期病態の増悪因子であると考えられる.
  • 北田 正博, 久保 良彦, 平田 哲, 八柳 英治, 山崎 弘資, 野坂 哲也, 笹嶋 唯博
    1996 年 34 巻 7 号 p. 755-758
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    当科で経験した10例の肺アスペルギルス症手術例を検討した. 臨床症状は血痰, 喀血が6例, 非特異的症状または検診で発見されたのが4例であった. 肺結核に対する肺葉切除後の遺残腔発生例が2例あった. 術前診断で, 喀痰検査陽性は50% (5/10), 血清反応陽性は43% (3/7) であり, fungus ball は7例に確認された. 術式は肺葉切除が3例, 区域切除が2例, 肺部分切除が4例であった. 区域切除の1例に胸郭形成術を, 遺残腔発生の2例に筋肉充填と胸郭形成術を追加した. 肺部分切除は, 症状が乏しく, 術中病理上周囲への浸潤がない例に施行したが, 再発は認めていない. また, 合併症により2例に再手術を施行したが, 残存肺膨張不全が要因であり, 初回手術時の胸郭形成や筋肉充填術の必要性が示唆された. 手術は, 臨床症状, 病態に合わせた術式の選択が重要と考えられた.
  • 石田 直, 橋本 徹, 有田 真知子, 藤森 直子, 伊藤 功朗
    1996 年 34 巻 7 号 p. 759-764
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1994年7月から1995年6月までの1年間に当院に入院した全ての市中肺炎患者の起炎微生物を prospective にした. 喀痰の品質評価, 定量培養を行い厳格な診断基準を設定し, クラミジア属やレジオネラ属も含めた検索を行った. 合計110例111 episode の市中肺炎について検討を行った. 起炎微生物は61 episode (55.0%) にて決定され, Streptococcus pneumoniae が最も多く認められ (18%), 次いでHaemophilus influenzae, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosa, Mycoplasma pneumoniae, クラミジア属が多く認められた. レジオネラ属による肺炎は認められなかった. 5 episode において複数菌が検出された. 本邦における市中肺炎の起炎微生物に関する prospective study は少なく, 抗菌剤の適切な使用のためには全国的な調査が必要と思われる.
  • 中野 博, 大西 徳信, 前川 純子, 石井 良子, 中村 武彦, 松澤 邦明, 成田 亘啓
    1996 年 34 巻 7 号 p. 765-770
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    睡眠呼吸障害において, 気管音は無呼吸時は消失し, 低呼吸時は周期的変動を呈することが多い. 今回このような気管音変動をパソコンを用いて解析するプログラムを作成し, その診断能に関して検討した. 対象は睡眠呼吸障害を疑い終夜睡眠ポリグラフ (PSG) を施行した33名で, その中でAHI 15以上の例は18例であった. 通常のPSGに加え, 前頸部での気管音をVTRに収録, その気管音終夜記録をA/D変換しパソコンにより自動解析した. 気管音パワーの移動平均曲線の12dB以上の一過性低下をTS-DIP, その中でも背景音+5dB以下になるものをTS-APとして検出した. TS-DIPの回数は無呼吸低呼吸回数と (r=0.95), TS-APの回数は無呼吸回数と (r=0.97) 高い相関を認めた. PSGでのAHI 15以上を陽性としたとき, TS-DIP 15以上を基準とした方法の診断能は, 感度89%・特異度60%であった. 気管音モニタリングは単独でスクリーニング検査として用いることが可能であると考えられる.
  • 濱田 泰伸, 坂谷 光則, 上田 英之助
    1996 年 34 巻 7 号 p. 771-777
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    KL-6は間質性肺炎の血清中, 気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中において高値を示すことが報告されている. 今回各種の間質性肺炎において血清中, BALF中のKL-6の測定を行い, BALF中の細胞数および呼吸機能検査など臨床的パラメーターと比較しその有用性について検討した. 間質性肺炎患者の血清中KL-6値は高率に高値を示し, BALF中のリンパ球数と有意の正相関を認めた. さらに, 経過を追って血清KL-6を測定しえた間質性肺炎患者において, KL-6の変動はその臨床経過をよく反映していた. 一方, BALF中KL-6値も間質性肺炎患者で高値を示し, BALF中の総細胞数, リンパ球数, 好中球数および好酸球数と有意の正相関を認めた. 血清中, BALF中KL-6値は%VC, %DLCO, %DLCO/VAとの間にそれぞれ有意の負の相関を示した. KL-6は各種の間質性肺炎患者において, 胞隔炎の程度と呼吸機能の状態を反映するマーカーであり, 疾患活動性の有用な指標であると思われた.
  • 塚口 勝彦, 米田 尚弘, 吉川 雅則, 徳山 猛, 夫 彰啓, 岡本 行功, 山本 智生, 竹中 英昭, 岡村 英生, 成田 亘啓
    1996 年 34 巻 7 号 p. 778-784
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    栄養素摂取や代謝の変化が, 多くの進行癌患者でみられる進行性の体重減少の原因であると一般的に考えられている, もっとも未だにはっきりしたメカニズムは明らかでない. ストレス状態では, ある種のサイトカイン, 例えばIL-1β, TNFα, IL-6は代謝亢進作用を持っており, 筋肉, 脂肪組織に働き蛋白, 脂肪分解を引き起こす. 食事摂取量が正常の肺癌患者での栄養障害のメカニズムを解明するために, 我々はこのような肺癌患者での栄養障害とこれらのサイトカインとの関係に注目した. 肺癌患者で栄養障害の存在することが確認され, また, この栄養障害が内蔵蛋白, 血漿アミノ酸, 身体計測値から代謝亢進によって引き起こされていると考えられた. これらの患者では, 血液単球のIL-1β, TNFα, IL-6産生能は正常コントロールと比較し有意に高値を示し, いくつかの栄養パラメータと有意の負の相関を示した. 今回の結果は肺癌患者での栄養状態とこれらのサイトカインとの密接な関係を示唆している. IL-1β, TNFα, IL-6は抗癌作用を示す生理的活性分子として働いている可能性があるが, その過剰な作用は代謝亢進状態を惹起し, その結果このような癌患者での栄養障害, すなわち, 癌悪液質の原因になると考えられる.
  • 浜本 康平, 江村 正仁, 橋本 圭司, 橋平 誠, 大迫 努, 立石 昭三
    1996 年 34 巻 7 号 p. 785-789
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    呼吸不全を伴う両側同時喀血は稀であり, その治療には多くの困難を伴う. 症例は51歳と63歳の女性で肺結核と喀血の既往歴があり, 前者は在宅酸素療法を, 後者は気管支動脈塞栓術を受けている. 喀血部位は左肺底枝と舌枝で, 対側は右上葉後枝と前枝であった. 出血のコントロールは左主気管支をフォガティカテーテルによるバルーンタンポナーデと, 対側主気管支への片側挿管で気道を確保し, レスピレーターによる呼吸管理下に出血に係わる体循環動脈をゲルフォームで塞栓した. 対側同時喀血には片側挿管チューブのカフによる上葉気管支入口部への圧迫止血を試み, 止血した. その後, 後者では時に喀血を来し, 胸部X線でも肺浸潤影の増悪を認め, 非定型抗酸菌を検出した. エリスロマイシンと抗結核剤の投与で肺浸潤影の改善とともに喀血は消失した.
  • 岸本 伸人, 丹生谷 通
    1996 年 34 巻 7 号 p. 790-795
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 女性. 血痰, 皮疹, 消化管出血を認めた. 胸部X線上左上肺野に浸潤陰影を認めた. 気管支肺胞洗浄液中にヘモジデリンを貪食したマクロファージが多数あり, 肺胞出血と診断した. 皮膚と大腸の生検にて, 血管炎の所見が得られ, 腎生検では半月体形成性糸球体腎炎の所見を認めた. 抗好中球細胞質抗体 (ANCA) は, cytoplasmic pattern (C-ANCA) が陽性であった. 以上より, ANCA関連の血管炎症候群と診断した. C-ANCAは Wegener 肉芽腫症で比較的特異性が高いが, 本症は Wegener 肉芽腫症に特徴的な所見はなく, 否定的であった. 本邦では, Wegener 肉芽腫症以外の血管炎では, perinuclear pattern のANCAが陽性となることが多く, C-ANCAが陽性となるのは比較的稀であり, 貴重な1例と考えられた.
  • 福原 徳子, 宮澤 輝臣, 土井 正男
    1996 年 34 巻 7 号 p. 796-803
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    大量気管支肺胞洗浄が著効した肺胞蛋白症の2例を経験する. 1例は29歳男性. 職業は建築設計士. 初診時労作時呼吸困難を覚え, room air 下でPaO2が57.8mmHgと低下していた. 大量気管支肺胞洗浄を4回施行しPaO2は106.4mmHgまで改善した. 10年経った現在も経過良好である. 2例目は58歳の女性. 職業は建築業事務. 労作時呼吸困難にて受診し, PaO2が64.4mmHgと低下. 4回の大量気管支肺胞洗浄にて110.6mmHgまで軽快した. 大量気管支肺胞洗浄は手技は熟練を要するが非常に治療効果を挙げることが出来る. 肺胞蛋白症は間質性病変との関連性が問題となっており, 我々の経験した2例も厳重な経過観察が必要と思われる.
  • 冨田 和宏, 橋爪 一光, 笠松 紀雄, 中村 晃, 半澤 儁, 籾木 茂, 佐々木 一義, 岡本 一也, 小沢 享史, 亀井 克彦
    1996 年 34 巻 7 号 p. 804-809
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    72歳女性. 平成元年9月左下葉無気肺にて入院, 気管支鏡的に粘液栓の除去を行い無気肺の改善を認め, 病理組織学的に肺真菌症の診断を得た. 組織学的にはアスペルギルスが疑われるも確定診断には至らなかった. amphotericin B ネブライザー吸入, flucytosine 経口投与により軽快退院. 平成6年8月中旬より全身倦怠感を自覚し近医を受診. 末梢血好酸球増多を指摘された. 数日後呼吸困難感出現し再び近医受診. 胸部X線写真上異常陰影を指摘され当院紹介入院となった. 左上葉無気肺を認め, 好酸球増多を伴うことより肺真菌症の再発を考え, 気管支鏡を施行した. 左上葉を閉塞する白色粘液栓を認め経気管支鏡的に抜去した. 粘液栓の病理組織学的検索では著明な好酸球浸潤と菌糸を認めた. 気管支鏡検体の培養よりスエヒロタケを同定し本菌によるABPMと診断した. 深在性肺真菌症の原因として本菌が同定されるのは, 極めて稀なため文献的検討を加え報告する.
  • 小林 義昭, 長谷川 隆志, 佐藤 誠, 鈴木 栄一, 荒川 正昭
    1996 年 34 巻 7 号 p. 810-815
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は47歳の女性. 平成2 (1990) 年から慢性肝疾患の診断で某院に通院していた. 平成5年4月に肝硬変と診断され, 中国産漢方薬「片仔廣」の内服を開始したところ, 5月頃より湿性咳嗽が出現, 増悪したため, 7月当科に入院した. 両背下部に fine crackle を聴取し, 胸部X線写真で両下肺野に網状影を認めた. 血液ガス分析ではA-aDO2の軽度開大がみられ, 呼吸機能検査では拘束性障害と拡散能の低下を認めた. 薬剤性肺炎を疑って, 片仔廣を中止して無治療で経過観察したところ, 自覚症状, 画像所見, 呼吸機能のいずれも改善した. また, 白血球遊走阻止試験では, 片仔廣による遅延型過敏反応が認められた. 以上の結果から, 片仔廣による薬剤性肺炎と診断した. 本症例は, 本邦における片仔廣による薬剤性肺炎の第1例と思われる.
  • 沖塩 協一, 工藤 新三, 勝元 栄一, 大塚 敏広, 少路 誠一, 藤井 達夫, 金澤 博, 平田 一八, 栗原 直嗣, 吉川 純一
    1996 年 34 巻 7 号 p. 816-821
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    亜急性知覚神経障害で発症し, 症状出現から5ヵ月後に診断された anti-Hu antibody (以下抗Hu自己抗体) 陽性小細胞肺癌の1例を経験した. 患者は60歳男性, 約2ヵ月の経過で四肢の表在知覚および深部知覚が障害された. 胸部のレントゲンおよびCTで前縦隔に腫瘍を認め, 血中抗Hu自己抗体を測定したところ陽性で, その後喀痰細胞診で小細胞肺癌と診断した. シスプラチンとCPT-11 (塩酸イリノテカン) の併用化学療法によりCR (complete remission) の効果を得たが, 末梢神経障害は改善しなかった. この症例では亜急性知覚神経障害から小細胞肺癌を診断する上で抗Hu自己抗体が鍵となった.
  • 山岸 哲也, 吉田 信一, 福武 勝幸, 内海 健太, 市瀬 裕一
    1996 年 34 巻 7 号 p. 822-828
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は25歳, 男性. ヒト免疫不全ウイルス (HIV) 感染による著しい免疫能低下が認められていた. カリニ肺炎 (PCP) に対し sulfamethoxazole-trimethoprim (ST) 合剤の予防投与を開始したところ, 67Gaシンチグラムで両肺野にびまん性の集積像, CTで肺間質に網状影の増加を認めた. 米国防疫センターの後天性免疫不全症候群の診断基準に準拠し, これらの画像所見はPCPによるものと診断し, ST合剤を継続した. しかし間質性肺炎を示唆する画像所見は発熱, 皮疹, 肝障害の出現に一致して増悪した. 気管支肺胞洗浄でカリニ原虫は検出されず, ST合剤の中止後に症状, 肝機能検査値, 画像所見は軽快した. 本症例の間質性肺炎像は, ST合併が原因となった薬剤性の肺障害による変化と臨床的に診断した. ST合剤はPCPに対し第一選択薬だが, HIV感染患者では副作用の出現頻度が高い. ST合剤が投与されているHIV感染患者では, 同剤による肺障害の可能性に留意すべきと考えられた.
  • 赤井 雅也, 石崎 武志, 佐々木 文彦, 飴島 慎吾, 重森 一夫, 東 徹, 中井 継彦
    1996 年 34 巻 7 号 p. 829-832
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 男性. 三年前より反復する気道感染のため当科を紹介され受診した. 低γグロブリン血症を認め, 精査の結果, 胸腺腫に伴う原発性免疫不全症 (Good症候群) と診断した. 本例は胸腺腫摘出後, 外来にて定期的にγグロブリン製剤補充療法を行っているが気道感染の再発, 増悪は認めていない. 本症例のように胸腺腫の合併した免疫不全例は本邦では比較的稀で, 特に胸部単純レントゲン写真上, 腫瘤陰影を明らかにし得ないときは, X線写真上は副鼻腔気管支症候群, また低γグロブリン血症からは Common variable immunodeficiency (CVI) などの反復性感染をきたしうる疾患との注意深い鑑別診断が必要と考えられる.
  • 野守 裕明, 堀尾 裕俊, 伊賀 六一, 小林 龍一郎, 森永 正二郎
    1996 年 34 巻 7 号 p. 833-836
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 男性である. I期胸腺腫に対し胸腺腫胸腺全摘術を施行した. 術後6ヵ月目に上行大動脈と上大静脈の間に再発し, 再手術により腫瘍を完全切除した. 再発時の腫瘍は非浸潤性胸腺腫であり, 遺残胸腺組織からの多中心発生による再発と考えられた. 組織学的には初回と再発時の腫瘍は同一所見を示し, リンパ球優位型で上皮細胞は polygonal の胸腺腫であった. I期胸腺腫でも多中心性発生により術後局所再発する事があるので拡大胸腺全摘術が必要であり, またその早期発見のためにCTによる長期間の経過観察が必要であると思われた.
  • 小林 淳, 塚越 正章, 萩原 真一, 北村 諭, 広田 紀男, 斉藤 建
    1996 年 34 巻 7 号 p. 837-842
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は44歳, 男性で, 1ヵ月前からの進行性の呼吸困難のために入院した. 胸部X線写真では両側中下肺野に小粒状影・網状影を認め, 低酸素血症を伴った. 気管支肺胞洗浄ではリンパ球比率の上昇とCD4/CD8比の低下を認め, Trichosporon cutaneum 間接蛍光抗体価が陽性であった. 経気管支肺生検では間質のリンパ球浸潤と肉芽腫形成を認め, 環境暴露試験も陽性であるところから本例は夏型過敏性肺臓炎と診断した. すでに抗原から隔離されているため無治療で自然経過観察したが, 胸部X線所見が遷延したので入院の4週間後からステロイド剤を使用し軽快した. 本例ではII型肺胞上皮細胞に発現する糖蛋白であるKL-6を間質性肺炎の新しい血清 marker として注目し, その経時的変化を検討した. 血清KL-6値は入院後も約10日間上昇を続けたのちに低下傾向となった. 抗原暴露後においても約10日遅れて最大値となり, 以後は病態の沈静化とともに低値となった.
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