歯周疾患に罹患した抜去歯を用いて, 清拭処理, ルートプレーニング処理, 象牙質露出+ルートプレーニング処理の3種類の前処理を施し,
35S (Na
235SO
4水溶液) に浸漬後, 無処理 (前処理のみ), ロビンソンブラシによる清掃処理, ルートプレーニング処理の3種類の後処理を根面に対して行ない, 35Sの歯根歯質への浸透性を, 研磨切片の透過光像とオートラジオグラムにより検討した。結果は次の通りである。
1. 前処理において根面にセメント質が残存している場合。
前処理において, ロビンソンブラシによる清掃処理, およびルートプレーニング処理を行なった根面は, 無処理の根面に比べ, オートラジオグラムにおける黒化度は低く, その幅も狭い傾向がみられた。
このことから,
35Sはセメント質の残っている根面において主に付着していることが考えられた。
2. 有細胞セメント質と無細胞セメント質の浸透性については, 後処理のロビンソンブラシによる清掃処理面のオートラジオグラム所見より, 有細胞セメント質において
35Sの浸透がみとめられた。
3. 前処理において象牙質を露出させた場合。
前処理において, ルートプレーニング処理を行なった根面では, ロビンソンブラシによる清掃処理を行なった根面とくらべて, オートラジオグラムにおける黒化度は低く, その幅も狭い傾向がみられた。
一方, 無処理の根面とロビンソンブラシによる清掃処理の根面との問には, 著明な差は認められなかった。このことから, 根面直下の象牙質内部で, 象牙細管を介して,
35Sが浸透していることが考えられた。
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