日本歯周病学会会誌
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37 巻, 4 号
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  • 上田 信男
    1995 年 37 巻 4 号 p. 605-617
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Actinobacillus actinornycetemcornitans Y4株から抽出精製したリポ多糖 (lipopolysaccharide; LPS) および英膜多糖の骨吸収活性および破骨細胞形成能を調べた。5日齢マウス頭蓋骨を用いた骨器官培養系でY4株由来のLPSおよび英膜多糖は強い骨吸収活性を発現した。また, マウス骨髄細胞から破骨細胞が分化誘導されるか否かについて調べたところ, Y4株由来のLPSおよび英膜多糖は著しい数の破骨細胞の形成を誘導した。さらに, この培養系でマウスIL-1α に対する抗体, マウスIL-1β に対する抗体およびインドメタシンが破骨細胞形成にどのような影響を及ぼすかについて調べたところ, マウスIL-1α に対する抗体およびインドメタシンはY4株由来の葵膜多糖による破骨細胞の形成を阻害した。そこで, 骨髄細胞培養液中のIL-1量, プロスタグランジンE2量を測定したところ, Y4株由来葵膜多糖で刺激したマウス骨髄細胞の培養上清中には, 多量のIL-1とプロスタグランジンが存在していることが明らかとなった。以上の結果から, Y4株由来の英膜多糖による破骨細胞の分化誘導には炎症性メディエーターであるIL-1およびプロスタグランジンが深く関与している可能性が強く示唆された。
  • 町頭 三保
    1995 年 37 巻 4 号 p. 618-627
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患の進行に伴い歯周ポケット内細菌叢には変化がみられる。Actinomyces viscosusは健常者および歯肉炎患者から多く分離される細菌のひとつで, 一方Porphyromonas gingivalisは主要な歯周病関連細菌のひとつである。歯肉炎から成人性歯周炎へ移行する段階において, これらの細菌間では相互作用を示すと考えられる。そこで, A. viscosusP. gingivalisに対する作用のひとつとして, 抗菌作用について検索した。穿刺培養法によって発育抑制作用について調べた結果, A. viscosusは明らかにP. gingivalisの発育を抑制した。そこでA. viscosus T14AV株の培養上清から, 硫酸アンモニウム塩析, DEAE sepharose CL-6B, Phenyl sepharose CL-4B, HPLCにより抗菌物質の精製を行った。抗菌活性は, P. gingivalis 381株を指示菌として, 拡散法により調べた。得られた抗菌物質の蛋白質あたりの活性は378倍に上昇し, 回収率は26%であった。また, SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法より分子量を求めたところ58kDaであった。その活性は易熱性, trypsin感受性であったが, 糖分解酵素であるendo-α-N-acetylgalactosaminidase, neuraminidase, O-glycanase, N-glycanaseには耐性であった。さらに, P. gingivalis381株に対し殺菌的に作用した。以上の結果よりA. viscosusP. gingivalisに対し抗菌活性を有する物質を産生することが明らかになった。
  • 荻原 和孝, 加藤 千穂美, 斎藤 和子
    1995 年 37 巻 4 号 p. 628-640
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本実験は, 歯周病原性細菌に対する多形核白血球 (PMN) の活性酸素産生 [Chemiluninescence CL) 反応] , 食・殺菌能への補体・抗体の影響を明らかにすることを目的とした。 PMNは カ (ゼイン刺激マウス腹腔内から採取した。また, 歯周病原性細菌としてActinobacillzas actinomycetemcomitans; Aa, Porphyromonas gingivalis; Pg, Fusobacterium nucleatum; Fnを使用した。マウスに生菌免疫を施し, 超音波破砕抗原に対する抗体価をELISA法で測定した。 IgGがAaとPg免疫マウス, IgMがFn免疫マウスで高かった。CL反応はルミノール依存性のCL反応を測定した。食菌能は各反応液をスライドガラスに塗抹・乾燥し, メイ・グルンワルド・ギムザ染色後, 顕微鏡を使用して観察した。菌の生残は, 血清, 抗体, PMN単独または組み合わせて反応させ, 平板培地上でカウントした。CL反応の増加は, Aaが補体, Pgで補体・抗体の両方に依存したが, Fnは補体, 抗体のどちらにも反応性を示さなかった。またFnはD-ガラクトース, N-アセチルーD-ガラクトサミン, マンナンによって抑制された。食菌能はAaとFnが補体, Pgが補体・抗体の両方の存在で増加した。しかし, 補体, 抗体, PMN単独または組み合わせによる殺菌効果は得られなかった。
    結論として, 補体はAaのCL反応と食菌能の増加に, 補体と抗体の両方がPgのCL反応と食菌能に関与した。また, FnはCL反応でレセプターの相互作用が関係したが, 食菌能には補体を必要とした。しかし, 補体, 抗体は殺菌効果を示さなかった。
  • 関口 一実, 渋川 義宏, 大串 勉, 島 信博, 山田 了
    1995 年 37 巻 4 号 p. 641-649
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, イヌに限局した歯齦退縮を起こし, GTRとMucogingi valsurgeryを併用し, 新生線維性付着と角化性組織が得られるかを検索することを目的とした。実験には, イヌの下顎第4前臼歯と第1後臼歯を用い, 歯の近心根の粘膜骨膜弁を形成し, 頬側歯槽骨と歯齦を一部切除した。実験的歯周炎を惹起させるため, 根面にプラークを蓄積させる目的でリガチャー・ワイヤーを歯に固定し4カ月間放置した。その後, GTR応用に先立ち, 退縮を伴った健康な歯齦を得るためスケーリング・ルートプレーニングとプラークコントロールを2カ月間行った。実験群ではテフロン膜を応用し, 歯銀弁歯冠側移動術とGTRを併用した。対照群では膜を応用せず歯槽粘膜を歯冠側に懸垂し歯面に密着させ縫合固定した。実験群ではGTR応用後4週で膜を除去した。実験群, 対照群とも実験開始後8カ月で屠殺し, 標本を作製, 病理組織学的検索を行った。その結果, 実験群では新生白亜質, 骨の新生を伴った線維性付着と角化性組織の形成が認められた。一方対照群では長い上皮性付着が認められ, 骨の新生は起こらなかった。以上より, 限局した歯齦退縮に対しGTRとMucogingival surgeryを併用することによって骨と白亜質の新生を伴った線維性付着が得られることが示唆された。
  • スフェロイドにおけるヒト歯根膜由来線維芽細胞 (HPLF) の特徴について
    辻上 弘, 出口 眞二, 菅谷 彰, 茂木 信道, 堀 俊雄
    1995 年 37 巻 4 号 p. 650-657
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    我々は第1報においてヒト歯周組織由来細胞を用いてスフェロイドを形成させ, 構成細胞の増殖能や基質産生を検索し, 歯周組織再生療法への応用の可能性を示唆した。本実験はスフェロイドを構成している細胞の特徴を明らかにする目的で, 特に歯周組織の再生に重要な役割を果たす歯根膜線維芽細胞を用いて行った。スフェロイド形成後, 内部が基質で充たされる7日および経時的な収縮がおおむね完了したと考えられる40日例について観察した。ヒト歯根膜由来線維芽細胞 (HPLF) の有する骨系細胞としての特徴についてオステオカルシン (OC) を指標とし免疫組織化学的手法を用いて検索した。また, 細胞の増殖や分化に関与する線維芽細胞増殖因子 (FGF) についても, 免疫組織化学的手法を用いて検索した。その結果, HPLFはスフェロイドという培養形態において, OCを産生した。OCの発現はスフェロイド形成7日例と比較して40日例に多く認められた。また, 生体組織の恒常性維持に関与し, 中胚葉由来細胞等の増殖促進因子であるFGFっいて検索し, その存在が観察された。さらにfluoresceindiacetate-propidiumi odide (FDA-PI) 蛍光染色法によりスフェロイド構成細胞の生死を検索した結果, ほとんどの細胞が生細胞であり, 、まとまった壊死層は観察されなかった。これらの結果, スフェロイドを形成したHPLFはin vitroでOCを発現するとともに, スフェロイドという環境が, その発現に関し影響を及ぼしているものと考えられた。また組織修復に関与するFGF等のさまざまな生理活性物質を含有する可能性が大きく, 組織再生療法への応用に対する可能性を示唆するものと思われた。
  • 和泉 雄一, 笠毛 甲太郎, 平岡 孝志, 谷口 拓郎, 濱田 義三, 末田 武
    1995 年 37 巻 4 号 p. 658-666
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病関連細菌のひとつであるPorphyomonas gingivalis (P.g) のextracellular vesicles (ECV) が, 好中球の各種機能を発現させるために必要な基本的因子である細胞形質膜流動性に与える影響を検討した。P.g ATCC 33277から硫安塩析法にCECVを調製し, 透過型電子顕微鏡観察, 電気泳動, および化学組成分析を行うことによってECVが分離調製されたことを確認した。好中球は全身的に健康でかつ歯周疾患の認められない成人の末梢血から分離した。調製されたECVを各種濃度 (0, 10, 50, 100μg/ml) で好中球に作用させた後, 5-あるいは16-stearic acidラベル剤 (5-SAL, 16-SAL) を好中球に取り込ませ, 電子スピン共鳴装置を用いたスピンラベル法にて膜流動性の測定とcytochrome C還元法による活性酸素産生量の測定を行つた。その結果, 好中球形質膜表層 (5-SAL) で膜流動性を有意 (p<0.01) に低下させた。しかし, ECVは各濃度において形質膜深層 (16-SAL) では膜流動性に有意な影響を及ぼさなかった。さらに, ECV (100μg/ml) はN-formyl-methionyl-leucyl-phenylalanine, phorbol myristate acetate刺激下で好中球の活性酸素産生を有意p<0.01, p<0.05) に抑制した。以上のことから, 歯肉溝あるいは歯周ポケットや歯肉組織中に遊走した好中 (球は歯周病関連細菌由来ECVによって影響を受け, 膜流動性および細胞機能が低下する可能性が示唆された
  • 遠矢 東昭, 吉成 伸夫, 稲垣 幸司, 酒井 清美, 石川 和弘, 大原 盛勝, 野口 俊英
    1995 年 37 巻 4 号 p. 667-675
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 歯周組織再生誘導法に用いた摘出後のePTFE (expanded polytetrafluoroeth-ylene) メンブレンに付着, 侵入した細胞および細菌を病理組織学的に観察し, さらに, その臨床経過と比較検討することである。すなわち, 成人性歯周炎患者に適応した18症例の摘出メンブレンを観察した。臨床的には, 術後6ヵ月でプロービングデプスは, 平均3.8±0.4mm減少し, アタッチメントレベルは, 平均1.6±0.3mm獲得され, 良好な経過を示している。一方, 細胞と細菌は, 歯冠歯根側方向ではメンブレン歯冠側部で最も多く, 歯根側方向へ向かうにつれ減少傾向を示した。細胞の種類は, 単核の細胞が最も多く, 赤血球, 線維芽細胞の順であった。また, 細菌の大部分は, グラム染色陽性菌であった。術後6ヵ月で, 術前より有意なクリニカルアタッチメントゲインが得られたが, その獲得は, メンブレンへ付着した細菌数に影響されていた。本研究の結果より, 歯周組織再生を最大限獲得するためには, メンブレンへの細菌付着を防止する様々な試みが必要であると思われた。
  • 音琴 淳一, 佐藤 秀一, 五十嵐 建夫, 織井 弘道, 難波 幸一, 森谷 良智, 伊藤 公一, 村井 正大, 瀧原 孝宣, 角田 隆巳
    1995 年 37 巻 4 号 p. 676-684
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    茶葉の可溶成分であるカテキン類を含む含嗽剤は, 化学的プラークコントロールとして, 実験的歯肉炎発症の予防効果があると報告されている。そこでカテキン含有含嗽剤単独使用によるプラーク形成抑制, 歯肉炎の進行抑制ならびに口臭抑制効果について検討した。被験者は全身的疾患のない22歳から48歳までの成人42名とした。試験7日前に臨床検査と共に口腔内のプラークおよび歯石を除去した。試験開始前7日間は通常のブラッシングを行った。カテキン群は茶カテキン1.0%含有含嗽剤を, コントロール群はカテキンから茶エキスのみを除いた含嗽剤を使用した (1日3回, 10ml, 30秒間含嗽) 。試験開始後7日間は機械的プラークコントロールを中止させ, 含嗽のみとした。2種類の含嗽剤使用は二重盲検法で行った。臨床パラメーター (PlI, GI, GCF, 口臭) およびポケット内細菌の採取は試験0, 3, 7日目に行った。その結果, 茶カテキン含有含嗽剤は口臭の抑制効果を示した。PlI, GI, GCFはカテキン群の方が低い値を示したが, 統計学的有意差を認めず, 茶カテキン含有含嗽剤はプラーク形成の抑制, 歯肉炎の進行抑制についてはその傾向を示すのみであった。
  • 佐藤 聡, 吉田 聡, 松村 彰子, 大崎 忠夫, 鴨井 久博, 北谷 修一, 長弘 謙樹, 鴨井 久一
    1995 年 37 巻 4 号 p. 685-694
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    これまでに電動歯ブラシの清掃効果について手用歯ブラシとの比較研究が数多く報告されている。しかし, 歯肉退縮によって露出した根面についての清掃効果に関する検討はなされていない。そこで本研究は, 歯肉退縮を想定した模型を作製し, 反回転式電動歯ブラシによる露出根面に塗布した人工プラークの清掃効果についての検討を行った。
    実験に使用した歯ブラシは, 電動歯ブラシとして反回転式電動歯ブラシインタープラーク ®を, また対照には, 手用歯ブラシとしてバトラー社製GUM#211を使用した。歯根露出模型は, CEJ相当部より1.5mm歯根部を露出させたもの (1.5mm歯根露出模型) と, CEJ相当部より3.0mm歯根部を露出させたもの (3.0mm歯根露出模型) の2種類を用いた。また, 対照として非歯根露出模型を用いた。清掃効果は, 歯根露出模型上での人工プラークの除去率をもって評価した。すなわち, 実験方法は, それぞれ単一加重測定装置によって規格化された250gの一定圧において, 電動歯ブラシでは, 歯表面に植毛部を垂直にあて一歯面あたり15秒間のブラッシングをおこなわせ, 手用歯ブラシにおいては, スクラッビング法に準じた方法で一歯面あたり15回おこなわせ, それぞれ10回測定をおこなった。ブラッシングを行った後の被験歯の残存プラーク量を, 各歯面ごとの規格写真からデジタイザーを用いて計測した。測定部位は, 各モデルにおいて上顎右側第一大臼歯, 中切歯, 左側第二小臼歯, 下顎右側第二小臼歯, 左側第一大臼歯, 中切歯とした。統計的検索は, Wi1coxon法を用い) て以下の結果を得た。全プラーク除去率は, 1.5mm歯根露出模型群で, 電動歯ブラシ使用が94.2%, 手用歯ブラシ使用が79.4%, 3.0mm歯根露出模型群で電動歯ブラシ使用が92.7%, 手用歯ブラシ使用が83.1%, 非歯根露出模型群で, 電動歯ブラシ使用が96.2%, 手用歯ブラシ使用が90.9%であった。
    1.5mm歯根露出模型群と3.0mm歯根露出模型群において前歯歯面を除く全ての歯面で電動歯ブラシ使用が手用歯ブラシ使用より高い清掃効果を示し, 前歯を除く全ての歯面において統計的有意差を示した。反回転式電動歯ブラシと手用歯ブラシに人工プラークの除去効果を歯肉退縮量の異なる顎模型を用いて比較検討したところ, 特に, 臼歯部の隣接面において, 電動歯ブラシが手用歯ブラシに比較して高いプラーク除去率を示した。
  • 歯肉が退縮した歯問隣接面での人工プラークの除去効果について
    西門 忍, 田中 秀高, 三原 日出子, 長田 豊, 加藤 伊八
    1995 年 37 巻 4 号 p. 695-705
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉が退縮した歯間隣接面でのキャビテーション効果による人工プラークの除去効果について検討を行った。
    歯冠部のみが露出した場合と歯根面まで露出した場合の, 歯間部歯肉の退縮程度の異なる2種類の顎模型を作製し, それぞれの1,4の近心隣接面, 6の遠心隣接面の歯冠部分と歯根部分を被験面とし, 水中でプラーク除去用チップの超音波振動により発生されるキャビテーションを頬側・口蓋側のいずれか一方向から照射した場合と両側から照射した場合の被験面の人工プラークの経時的な除去率を測定した。さらに, それぞれの歯肉退縮モデルにおける歯間空隙の形態についても測定を行い, 人工プラークの除去効果との関係について検討を加えた。
    その結果, 歯冠部のみが露出されたモデルでは, 頬側・口蓋側のいずれの方向から照射した場合も, チップと被験面の距離および照射方向から影となる程度が小さい1の被験面において最も高い除去率が得られた。また, 歯根部が露出されたモデルでも同様に1で最も高い除去率が認められた。さらに, 他の被験面についても, 人工プラークの除去率はチップと被験面の距離や歯間空隙の形態学的要因が関与することが示唆された。また, 両側より照射するといずれの被験面においても片側より照射した場合と比較し, 短時間でより劾率的に人工プラークが除去されることが確認された。
  • 歯科用塩酸ミノサイクリン軟膏との比較
    浅井 昭博, 村瀬 尚子, 高田 敬子, 山田 泰生, 藤城 治義, 大島 康成, 金山 昌樹, 島田 英太, 白水 紀充, 中罵 淑子, ...
    1995 年 37 巻 4 号 p. 706-724
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    現在, 歯肉縁下プラークのコントロール法のひとつとして, 抗生物質の歯周ポケット内投与が行われている。今回われわれは, 歯周ポケット底部への到達性に優れ, 塩酸ミノサイクワンを含有し, 投与直後より徐々に局所で溶解 (ローカルドラッグデリバリーシステム) するストリップスタイプの薬剤 (Strip type Drug for Periodontitis: SDP) の臨床効果を既存の歯科用塩酸ミノサイクリン軟膏 (Periocline ® : PER) と比較検討した。
    対象とした患者は, 全身疾患がなく, 4mm以上の歯周ポケットを有する歯周炎の症状を呈し, 過去3カ月以内に抗生物質の投与を受けていない68人とし, SDPを33人に, またPERを35人に局所投与した。投与は1週毎に4回連続投与した。7週後まで臨床症状の変化を観察し, 併せて細菌検査を培養法によって行った。細菌検査実施時期は薬剤投与開始時および4週後 (薬剤投与終了1週後) とした。臨床症状の観察項目は, プロービングデプス (probing depth: PD), プロービング時出血 (bleeding on probing: BOP), 排膿 (suppuration: S), 歯垢指数 (plaque index: PlI), 歯肉炎指数 (gingival index: GI) および歯肉溝滲出液 (gingival crevicular fluid: GCF) 量の変化とした。細菌はPorphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Prevotella melaninogenica, Fusoacteriumz nucleatum, Eikenella corrodens, Capnocytophaga spp., Actinobacillus a ctinomycetemcomitansの7菌種を選択培地等で分離・検索し, 黒色色素産生性グラム陰性i嫌気性桿菌数, 生菌数は非選択性血液平板培地で生育させて測定した。
    その結果, BOP, S, GI, およびPDにおいて, 投与開始時と比較して3週後, 4週後および7週後で, 両群とも有意な減少が認められた。GCFではPER群のみ全観察期間において有意な減少が認められた。また, 臨床主要症状の改善度では両群ともに高い有効率を示したが, 両群問に有意な差は認められなかった。
    細菌学的検索において黒色色素産生性グラム陰性嫌気性桿菌数の変化, 生菌数の変化ともに投与の前後で有意な減少が認められ, 両群間で有意差は認められなかった。さらに上記7菌種別の消失率をみても両群問に有意な差は認められず, 両薬剤とも各菌種に対して有効であった。
    塩酸ミノサイクリンの局所投与における臨床的・細菌学的効果を調べたところ, 良好な結果が得られた。また, 剤型の違いによる比較を行ったところ, 臨床的・細菌学的効果に大きな差は認められず, ともに有効であることが示された。
  • 野口 俊英, 浅井 昭博, 小出 雅則, 酒井 秀人, 森田 佳宏, 森 厚, 高田 哲夫, 村瀬 元康, 上田 信男, 黒柳 隆穂, 西山 ...
    1995 年 37 巻 4 号 p. 725-736
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では, 歯周ポケット底部への到達性に優れ, 塩酸ミノサイクリンを含有し, 投与直後より徐々に局所で溶解するストリップスタイプの薬剤の歯周炎の急性症状に対する局所投与の臨床的・細菌学的研究を行った。対象とした患者は, 歯周病の急性症状を呈し, 全身的疾患を有さず過去3ケ月以内に抗生物質の投与を受けていない43名とした。43名全てに歯周炎局所由来の痛みを伴う発赤・腫脹または膿瘍形成が認められた。塩酸ミノサイクリン含有のストリップスを歯周ポケット底部にまで挿入した。ストリップスを挿入後, 0, 3, 7日後の臨床症状の変化を観察し, 細菌学的変化を0, 7日後に観察した。歯肉の発赤, 腫脹, 疼痛, プロービング深さ (probing depth, PD), プロービング時出血 (bleeding on probing, BOP), 排膿 (suppuration, S), リンパ節所見および歯肉溝滲出液 (gingival crevicular fluid, GCF) 量の変化を記録した。黒色色素産生性グラム陰性嫌気性桿菌 (Black Pigmented Gram-Negative Anaerobic Rods, BPNAR) 数, 生菌数は非選択性血液平板培地で生育させて測定した。疼痛, 腫脹 (口腔内), BOPおよびSは, 薬剤投与後3日目および7日目で投与開始時に比較して有意に減少していた。さらに, PDおよびGCF量においても7日目において有意な減少が観察された。投与前に優勢であったBPNARの構成比率は投与開始直前と比較し, 7日後では明らかに減少していた。これらの結果から, 歯周ポケット内への塩酸ミノサイクリン含有ストリップスの局所投与は, 歯周炎の急性症状の改善に有効であることが示唆された。
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