現在, 歯肉縁下プラークのコントロール法のひとつとして, 抗生物質の歯周ポケット内投与が行われている。今回われわれは, 歯周ポケット底部への到達性に優れ, 塩酸ミノサイクワンを含有し, 投与直後より徐々に局所で溶解 (ローカルドラッグデリバリーシステム) するストリップスタイプの薬剤 (Strip type Drug for Periodontitis: SDP) の臨床効果を既存の歯科用塩酸ミノサイクリン軟膏 (Periocline ® : PER) と比較検討した。
対象とした患者は, 全身疾患がなく, 4mm以上の歯周ポケットを有する歯周炎の症状を呈し, 過去3カ月以内に抗生物質の投与を受けていない68人とし, SDPを33人に, またPERを35人に局所投与した。投与は1週毎に4回連続投与した。7週後まで臨床症状の変化を観察し, 併せて細菌検査を培養法によって行った。細菌検査実施時期は薬剤投与開始時および4週後 (薬剤投与終了1週後) とした。臨床症状の観察項目は, プロービングデプス (probing depth: PD), プロービング時出血 (bleeding on probing: BOP), 排膿 (suppuration: S), 歯垢指数 (plaque index: PlI), 歯肉炎指数 (gingival index: GI) および歯肉溝滲出液 (gingival crevicular fluid: GCF) 量の変化とした。細菌は
Porphyromonas gingivalis,
Prevotella intermedia,
Prevotella melaninogenica,
Fusoacteriumz nucleatum,
Eikenella corrodens,
Capnocytophaga spp.,
Actinobacillus a ctinomycetemcomitansの7菌種を選択培地等で分離・検索し, 黒色色素産生性グラム陰性i嫌気性桿菌数, 生菌数は非選択性血液平板培地で生育させて測定した。
その結果, BOP, S, GI, およびPDにおいて, 投与開始時と比較して3週後, 4週後および7週後で, 両群とも有意な減少が認められた。GCFではPER群のみ全観察期間において有意な減少が認められた。また, 臨床主要症状の改善度では両群ともに高い有効率を示したが, 両群問に有意な差は認められなかった。
細菌学的検索において黒色色素産生性グラム陰性嫌気性桿菌数の変化, 生菌数の変化ともに投与の前後で有意な減少が認められ, 両群間で有意差は認められなかった。さらに上記7菌種別の消失率をみても両群問に有意な差は認められず, 両薬剤とも各菌種に対して有効であった。
塩酸ミノサイクリンの局所投与における臨床的・細菌学的効果を調べたところ, 良好な結果が得られた。また, 剤型の違いによる比較を行ったところ, 臨床的・細菌学的効果に大きな差は認められず, ともに有効であることが示された。
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