ヒト接合上皮細胞は, 採取することが難しく, 採取量が少ないなどの点から, 培養が困難であった。そこで, 以下の方法で培養した細胞に対して免疫細胞化学的ならびに超微形態学的検討を加え, 効果的に接合上皮細胞を培養する方法の確立を試みた。すなわち, 抜歯前に接合上皮と他の上皮をメスで分離し, 抜歯した後, 歯の表面に付着した組織をexplant法で培養した。継代培養には, マトリゲル上で無血清培地KERATINOCYTE™-SFM (0.09mmol/
lCa
2+) を用いた。得られた細胞は, keratin抗体に対して陽性反応を示し, 上皮細胞であることが確認された。ヒト歯肉組織では, Dolichos biflorus agglutinin (DBA) が接合上皮と特異的に反応し, 接合上皮のマーカーになり得ることを確認した。培養細胞では, 付着組織由来細胞はDBAおよびdesmoplakin I+II抗体の両方に陽性反応を示したのに対し, 歯肉組織由来細胞は, desmoplakin I+ II抗体のみに陽性反応を示した。また, 微細構造においては, 付着組織由来細胞は, 細胞質内の小器官が発達しヒト接合上皮細胞の培養に関する研究 21ており, その一方でトノフィラメントは, 発達していなかった。以上の結果より, ヒト歯肉から採取した付着組織由来細胞は, 歯肉組織由来細胞とはその細胞表面の糖残基, 微細構造の点で異っており, 接合上皮細胞である可能性が示唆された。
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