日本歯周病学会会誌
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38 巻, 1 号
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  • 病理組織学的および組織計量学的検討
    小池 薫
    1996 年 38 巻 1 号 p. 1-19
    発行日: 1996/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 咬合機能の喪失とその回復が歯周組織におよぼす影響を検討するために, 実験的にラットを用いて為された。咬合機能喪失群は, 上顎左側臼歯歯冠を削除し下顎との対合関係を喪失させ, 歯冠修復群は, 削除21日後に同部の歯冠修復を行った。対照群は無処置のラットを用い, 3群とも採取した下顎左側第1臼歯の歯周組織を病理組織学的および組織計量学的に経時的に検索した。
    咬合機能の喪失により, 歯根膜には速やかに萎縮性変化が発現し, 2~3日後には歯根膜線維の機能的配列はほとんど消失した。一方, 歯槽骨には著しい骨の新生がみられ, 4~5日後には歯根膜腔は対照群の約1/2まで狭窄し, 21日後には正常の機能構造はほとんど失われた。歯冠修復群においては, 1~2日後から多数の破骨細胞による骨吸収像がみられた。骨の吸収は骨髄側から歯根膜側へ進展する傾向を示し, 歯根膜腔の比較的緩徐な拡大がみられた。歯冠修復後間もなく, 歯根膜には線維芽細胞の増加と線維の新生がみられた。咬合機能回復後の修復の過程は, 比較的緩徐に進展するが, 28日後には歯周組織の機能的構造がほとんど修復された。咬合機能の変化に対して, 歯周組織は速やかに反応することが明らかになった。歯根膜の線維芽細胞, 骨芽細胞, 破骨細胞, セメント芽細胞はそれぞれ異なった反応様式を示すが, 日細胞とも咬合機能喪失と回復の過程の中で重要な役割を演じていることが示唆された。
  • 松山 孝司
    1996 年 38 巻 1 号 p. 20-31
    発行日: 1996/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ヒト接合上皮細胞は, 採取することが難しく, 採取量が少ないなどの点から, 培養が困難であった。そこで, 以下の方法で培養した細胞に対して免疫細胞化学的ならびに超微形態学的検討を加え, 効果的に接合上皮細胞を培養する方法の確立を試みた。すなわち, 抜歯前に接合上皮と他の上皮をメスで分離し, 抜歯した後, 歯の表面に付着した組織をexplant法で培養した。継代培養には, マトリゲル上で無血清培地KERATINOCYTE™-SFM (0.09mmol/lCa2+) を用いた。得られた細胞は, keratin抗体に対して陽性反応を示し, 上皮細胞であることが確認された。ヒト歯肉組織では, Dolichos biflorus agglutinin (DBA) が接合上皮と特異的に反応し, 接合上皮のマーカーになり得ることを確認した。培養細胞では, 付着組織由来細胞はDBAおよびdesmoplakin I+II抗体の両方に陽性反応を示したのに対し, 歯肉組織由来細胞は, desmoplakin I+ II抗体のみに陽性反応を示した。また, 微細構造においては, 付着組織由来細胞は, 細胞質内の小器官が発達しヒト接合上皮細胞の培養に関する研究 21ており, その一方でトノフィラメントは, 発達していなかった。以上の結果より, ヒト歯肉から採取した付着組織由来細胞は, 歯肉組織由来細胞とはその細胞表面の糖残基, 微細構造の点で異っており, 接合上皮細胞である可能性が示唆された。
  • 鈴木 丈一郎
    1996 年 38 巻 1 号 p. 32-47
    発行日: 1996/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    1991年にMcCoyがDental Compression Syndrome (D. C. S.) という概念を発表した。今回その臨床症状を比較検討するために, 特に歯周病と歯に現れる一般的な症状の2点に着目し, 鶴見大学歯学部付属病院保存科来院患者の中からD. C. S. 群, 医局員の中からControl群を10名ずつ選び被験者とした。臨床パラメーターとして, 動揺度, 唇頬側と舌口蓋側のアタッチメントレベル (B-PAL & L-PAL), 咬合接触面積および咬合力を用いた。また, D. C. S. 群のくさび状欠損の出現部位についても調べた。以上より下記の結果を得た。1) 動揺度については両群問に有意差は認められなかった。2) B-PALについては, 両群間に有意差 (p<0.01) が認められた。L-PALについては, 前歯部および大臼歯部において両群間に有意差 (P<0.05) が認められた。3) 咬合接触面積および咬合力については, 両群間に有意差 (p<0.05) が認められた。4) D. C. S. -W群において動揺度とL-PAL間, 咬合接触面積と咬合力間, 咬合接触面積とL-PAL間, B-PALとL-PAL間に相関関係 (P< 0.01) が認められた。5) D. C. S. 群におけるくさび状欠損の出現部位は上下顎第1小臼歯部においては100%認められた。以上のことより, D. C. S. 群においては, B-PAL, L-PAL (前歯部, 大臼歯部), 咬合接触面積および咬合力がControl群に比べ有意に大きいことが示唆された。
  • Hiroshi Nakaya, Kyuichi Kamoi, Ann M. Tran, David L. Cochran
    1996 年 38 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 1996/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    マトリックス・メタロプロテナーゼは歯周疾患における組織破壊に重要な役割をはたしている。モネンシンは, 培養線維芽細胞におけるメタロプロテナーゼの局在を免疫細胞化学的に検索するために用いられている。本研究は, マトリックス・メタロプロテナーゼ3 (MMP-3) を免疫細胞化学的に観察するために用いられるモネンシンの影響を検証することを目的として, ヒト歯根膜由来の細胞におけるMMP-3の局在とそのmRNA発現とを比較検討した。歯根膜由来の細胞にIL-1β を24時間, さらに5mMのモネンシンを3時間作用させた。MMP-3の局在は, 酵素抗体法にて観察した。MMP-3mRNAの発現は, RT-PCR法を用い定量した。歯根膜由来の細胞におけるMMP-3の局在は, モネンシンを作用させないときは, IL-1β を作用させたとしても観察されなかった。一方, MMP-3mRNAの発現には, モネンシンによる影響はなかった。MMP-3陽性細胞数とMMP-3mRNA発現量とは, 相反するものではなかった。以上の結果より, モネンシン処理は, MMP-3 mRNA発現に影響を及ぼすことなく, 免疫細胞化学的にMMP-3を観察するための有効な方法であることが示唆された。
  • 篠原 啓之, 石田 浩, 小笠原 都, 白石 良文, 清水 保樹, 大谷 理己, 西川 聖二, 小野 恒子, 三宅 洋一郎, 永田 俊彦
    1996 年 38 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 1996/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    漢方の一種である加味清胃散 (漢方) は昔から歯周炎に有効であると言われている。今回, ハムスターにActinomyces viscosus ATCC 15987 (Av) を感染させ, 歯槽骨吸収を伴う実験的歯周炎を惹起させたモデルを用いて, 加味清胃散がこの歯槽骨吸収に対してどのような効果があるかについて検討した。その結果, 加味清胃散投与群では, 本剤を投与しない対照群の歯槽骨吸収量の約1/2であり著明に吸収抑制効果が認められた。しかしながら, 本剤は, in vivoおよびin vitroのいずれの実験条件でも, Av菌に対して静菌あるいは殺菌作用を示さなかった。以上の結果は, 古来から伝えられている本剤の歯周炎に対する有効性を支持するものであるが, 本実験モデルにおいて, その作用機序は細菌に対する直接的効果でなく, それ以外の機序により歯槽骨代謝に影響を与え吸収抑制が起こったものと考えられる。
  • プラークフリーゾーンにおける歯周病-関連細菌の走査免疫電顕法による検索
    野杁 由一郎, 尾崎 和美, 藤中 恵子, 岡本 妙, 松尾 敬志, 恵比須 繁之
    1996 年 38 巻 1 号 p. 60-68
    発行日: 1996/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ヒト歯周ポケット底部, 特にいわゆるプラークフリーゾーンに棲息する細菌種を同定するため, 重度成人性歯周炎に罹患し抜去された30歯を, 4種類の歯周病関連細菌に対する特異抗体を用いた走査免疫電顕法により検索した。プラークフリーゾーンを2次電子像にて形態学的に観察したところ, わずかながら存在する細菌の中では, スピロヘータや長・短桿菌が優位にみられ, 桿菌の中にはglycocalyx様の構造物を介して歯根面あるいは他の菌体と付着している菌体が観察された。Porphyromonas gingivalisは7試料中4試料の, Tleponema denticolaは9試料中5試料のプラークフリーゾーンから実際に検出され, これらの細菌と歯周炎の進行との関連が示唆された。一方, Prevotella intermediaが検索した7試料のうち1試料のプラークフリーゾーンからしか検出されなかったのに対し, Actinomyces viscosusはプラークフリーゾーンにおいても7試料中4試料から検出され, A. viscosusが歯周ポケット底部におけるプラークの形成にも関与していることが示唆された。しかしながら, 歯周ポケット底部の2次電子像で観察されたスピロヘータや桿菌の半数以上の菌体は4種の特異抗体に陽性反応を示さず, 4菌種以外に未同定の細菌が多数存在していることが明らかとなった。
  • 増永 浩, 松江 美代子, 遠藤 弘康, 田原 洋, 松江 一郎
    1996 年 38 巻 1 号 p. 69-77
    発行日: 1996/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 歯列および歯周組織の位置的, 形態的な違いと咬合の状態の関係を解析することであり, 健常者の歯列弓の中での, あるいは隣在歯との位置的な関係が, 接触面積, 咬合圧にどのように係わっているのかについて検索を行った。臨床的に歯周組織が健康であり, 正常咬合を営む調和のとれた歯列弓を有する9名 (年齢22~25歳) を被検者とした。被検者の下顎第1小臼歯から第2大臼歯に対して規格模型上, X線写真上での計測ならびに咬合診査をプレスケール, Tスキャンを用いて行った。その結果を以下に示す。プレスケールにより測定した咬合圧および接触面積は, いずれも第2大臼歯で最大を示した。歯槽骨幅/歯冠幅を歯の支持を判定する資料として検索すると, 咬合圧あるいは接触面積と明らかな関係を認めなかった。咬合平面から下顎切端咬頭頂連続曲線の最下点までの距離が2mm以上の低下幅を示すグループには, 第1大臼歯が多く, その接触面積は他のグループの1/2程度であり, 接触点 (面) の位置が偏位している可能性が考えられた。Tスキャンにおいて早期接触は認めなかったが, Malposition Indexで第1大臼歯の位置偏位を観察すると, 捻転グループで咬合圧は特に差異を認めず, 接触面積は他の1/3程度であった。
    以上の結果より, 咬合圧および接触面積の状態は, 歯列の中での上下顎の接触部位の位置関係, あるいは歯そのものの位置に影響されることが推察された。
  • 金属修復物の電位
    西田 哲也, 内山 寿夫, 郷家 英二, 伊藤 公一, 村井 正大, 野元 成晃
    1996 年 38 巻 1 号 p. 78-87
    発行日: 1996/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    電解により調製された酸化水は, その殺菌効果から医科および歯科領域で応用され, とくに歯周領域では含嗽によりプラーク形成に対して抑制効果が認められている。しかし, 酸化水は低いpH, 高い塩素濃度といった特性から, 口腔内金属修復物の腐食を加速する可能性が懸念されるが, それらについての報告はない。
    そこで, ヒト口腔内で金属修復物の腐食挙動が酸化水によって影響されるか否かを口腔内金属の電極電位測定法を用いて検討した。
    被験者21名を対象に酸化水10mlで10秒間の含嗽を行わせ, 口腔内の全金属修復物について電極電位測定を行った。なお, 含漱および電位測定は3回連続的に行った。
    アマルガム修復物の電位は, 酸化水による含嗽によって貴になったが, そのほとんどは50mV程度以内の変化であった。金合金, 白金加金および金・銀・パラジウム合金による修復物の電位変動は100mVを越える例が多数認められた。ほとんど全ての金属修復物の口腔内電位が材料, 部位あるいは形態によらず, 酸化水による含嗽によって貴になり, 酸化水が口腔内金属の腐食を加速する可能性があることが示唆された。含嗽時間とその頻度を考慮した詳細な検討が別に必要と考えられた。
  • 第2報: 暫間固定前後の変化について
    苗代 明, 沼部 幸博, 東 綾美, 鴨井 久一
    1996 年 38 巻 1 号 p. 88-96
    発行日: 1996/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    イニシャルプレパレーションの一つである暫間固定法を行うことで動揺歯の咬合力がどのように変化するかについて, デンタルプレスケール ® (富士写真フイルム株式会社, 東京) を用いて検索を行った。成人性歯周炎患者10人に対して, 十分なプラークコントロール・スケーリング・ルートプレーニングを行った後, 歯周組織に関する臨床診査およびデンタルプレスケール ® による咬合力に関する診査を行った。そして, A-Splintを応用した暫間固定を行った。その直後, 2週後, 4週後にも同様の診査を行い, 術前に対する経週的変化について統計的検索を行った。その結果, 臨床診査項目については各々減少傾向を示し, 4週後には有意な差が認められた。咬合力については, 咬合接触面積および咬合力では, 固定直後および4週後に増加した。とくに口腔全体において, 咬合接触面積では固定直後に, 咬合力では4週後に有意な増加がみられた。一方, 平均圧力および最大圧力では, 固定直後はやや増加するがその後減少し, 口腔全体および被験歯でその値が近似する傾向がみられた。また, 正中からみた咬合接触面積および咬合力の左右のバランスでは, 被験歯側で経週的に増加し, 左右でより均等になる傾向にあった。
    これらのことから, 動揺歯に暫間固定を行うこととともに, 動揺歯の歯周組織の炎症が改善され, 咬合力は増加し, 同時に調和のとれた咬合に近づくことが示唆された。
  • 苗代 明, 浅木 信安, 奈良 あかね, 小川 智久, 鴨井 久博, 伊藤 明子, 鴨井 久一, 角田 隆巳
    1996 年 38 巻 1 号 p. 97-106
    発行日: 1996/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    日本茶には抗う蝕作用, 口臭予防作用があることが知られ, その有効成分であるカテキンは抗菌, プラーク付着抑制, 歯肉炎進行抑制作用などを示すことが報告されている。一方, 薬液を用いた歯周ポケット内洗浄は, 歯肉縁下プラークの除去, 抑制に有効とされている。そこで, 本研究は茶葉成分含有溶液による歯周ポケット内洗浄の有効性について検索を行った。成人性歯周炎患者10人に対し, スケーリング・ルートプレーニング後に茶葉成分含有溶液による歯周ポケット内洗浄を滅菌蒸留水による洗浄と対比させながら実施し, 臨床症状および細菌叢の変化について観察した。その結果, 臨床症状では, 茶葉成分含有溶液群で特に, GI, GCF量, BOPにおいて高い改善傾向を示した。また, 細菌叢の変化においても, 総菌数に占める運動性桿菌の比率の減少程度において, 茶葉成分含有溶液群の方が優れていた。以上のことから, スケーリング・ルートプレーニングと併用した茶葉成分含有溶液による歯周ポケット内洗浄は歯周炎に対して有用な補助的治療法の一つとなり得ることが示された。
  • 大塚 秀春, 中島 啓次, 小原 俊彦, 須藤 洋太郎, 河田 克之, 市村 光, 池田 克已
    1996 年 38 巻 1 号 p. 107-119
    発行日: 1996/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 埼玉県比企郡鳩山町在住の40~45歳の年齢層の成人を対象に, 基本健康診査, CPITNによる歯周疾患に関する診査, そして生活習慣や生活環境に関するアンケートを実施し, 成人性歯周炎の実態と個人の生活環境とのあいだに, どのような関連性が認められるかについて検討をおこなったものである。本調査とそれにともなう指導の対象者は, 1992年と1993年の2年間の調査に訪れた計184名の成人である。2年間の診査結果は, CPITNのコードは, 0が6 0%, 1が6 5%, 2が41 3%, 3が38 6%, 4が7 6%であった。
    クロス集計の結果, (1) 居住地域, および (2) 性別の項目でCPITNのCode 0, 1, 2とCode3, 4のあいだに有意差 (X2 Test P<0 05) が認められた。本研究から, 疫学的データのうえで, 成人性歯周炎の発症や進行程度は, 少なからず生活環境や全身状態などと関連のあることが示唆された。
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