日本歯周病学会会誌
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42 巻, 4 号
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  • 渡辺 和志
    2000 年 42 巻 4 号 p. 235-246
    発行日: 2000/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病原性細菌Porphyromonas gingivalisの宿主細胞ならびに歯冠修復材への付着が, 歯周炎の発症に関与する可能性が推察される。しかし, 本菌の歯冠修復材への付着機構についての詳細な研究は必ずしも多くない。そこで, 本研究では臨床的に頻用されている歯冠修復材へのP. gingivalisの付着, 特に本菌線毛による付着をより臨床的な口腔内環境を再現した状態で唾液中成分の影響について検討を行った。その結果, 歯冠修復材へのP. gingivalis付着には, 本菌線毛が深く関与すること, 歯冠修復材を唾液及びフィブロネクチンで処理することにより, その付着が増加することが確認された。さらに, 唾液処理した歯冠修復材を抗フィブロネクチン抗体で処理することにより, その付着の増加は有意に抑制され, 特にRTPRでは著しかった。唾液中のフィブロネクチンとP. gingivalis線毛との関連性を検討したところ, フィブロネクチン処理により本菌線毛による歯冠修復材への付着は有意に増加し, その付着量の増加はフィブロネクチン濃度依存的であった。以上のことから, 唾液中のフィブロネクチンはP. gingivalisの線毛による歯冠修復材への付着を調節する因子の1つであることが示唆された。
  • 宮治 裕史, 菅谷 勉, 加藤 熈
    2000 年 42 巻 4 号 p. 247-254
    発行日: 2000/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は歯肉結合組織によって根面に硬組織を形成する新たな歯周組織再生療法を開発する第一段階として, rhBMP-2で処理した象牙質が歯肉線維芽細胞のALP活性と石灰化物形成に及ぼす効果を検討した。象牙質片をEDTAで脱灰し, 5群に分け, 歯肉0, 1, 5, 10群は0, 1, 5, 10μg/mlのrhBMP-2で, 歯根膜群はrhBMP-2を含まないD-MEMで処理した。まず, 歯肉0, 1, 5, 10群は象牙質片上に歯肉線維芽細胞を播種し, 歯根膜群は歯根膜細胞を播種して1, 3, 7日間培養し, 象牙質片に付着した細胞のALP活性と総蛋白量を測定した。次に各群の象牙質片を歯肉線維芽細胞と歯根膜細胞のcell layer上に静置し, β-グリセロリン酸を含むα-MEMで5, 7, 10日間培養し, Von Kossa染色して石灰化物形成量を計測した。その結果, 歯肉1, 5, 10群のALP活性は1日目は上昇せず, 3日目に歯肉0群と比較し約6倍で, 歯根膜群と同程度まで上昇した。7日目は歯肉1, 5群は低下したが, 歯肉10群は低下が少なく歯根膜群と有意差のない高い値だった。歯肉1, 5, 101群の石灰化物形成量は7日目に歯肉0群と比較し約2.5倍で, 歯根膜群と有意差のない値だった。以上の結果から, rhBMP-2で処理した象牙質は, 付着した歯肉線維芽細胞のALP活性と石灰化物形成能を上昇させることが明らかとなり, 根面をrhBMP-2で処理することで歯肉結合組織が根面に硬組織を形成する可能性が示唆された。
  • 木村 喜芳, 菅谷 勉, 加藤 熈
    2000 年 42 巻 4 号 p. 255-266
    発行日: 2000/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は歯根が垂直破折した場合の歯周組織破壊を病理組織学的に明らかにする目的で行った。ビーグル犬4頭の上下顎前臼歯を分岐部で分割後, マイセルとマレットで歯根を頬舌側に垂直破折させ, gingival index (GI), probingdepth (PD), probingattachmentloss (PAL) を臨床的に診査した。破折後3日, 1, 2, 4週後に屠殺し, X線写真撮影, 病理組織学的観察と計測を行った。その結果, 3日~1週後はPD, PALがわずかに増加し上皮の根尖側移動はなく, 細菌は根管内にわずかに認められたのみで歯根膜の炎症は極めて軽度であった。2週後はPD4.6±1.7mm, PAL3.0±1.6mm, 上皮の根尖側移動は0.2±0.2mmで, 根管と破折面に細菌がみられ破折部に沿って歯根膜に炎症が生じ, 骨と歯根の吸収もわずかに認められた。4週後はPD5.5±1.4mm, PAL4.6±1.3mmで, 上皮の根尖側移動は0.5±0.3mmであった。破折部根表面にプラークが付着して, 歯根膜の炎症は強く線維は消失し, 骨と歯根の吸収は拡大してX線写真でくさび状骨吸収が認められた。
    以上の結果から, 破折後2週頃までの初期はPDが増加しても付着の喪失は少なく, 根管内の細菌が破折部に沿って歯根膜に炎症を引き起こし, 2~4週後は破折部根面に沿って付着の喪失が進みプラークが付着し, 歯周病変が合併して歯周組織破壊が急速に進行したと考えられた。
  • 小西 秀和, 川浪 雅光, 加藤 熈
    2000 年 42 巻 4 号 p. 267-281
    発行日: 2000/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 細菌性因子と外傷性因子により急速に進行するラット実験的歯周炎に, ビスフォスフォネート (インカドロネート) を投与し, 骨吸収への影響を検索する目的で行った。10週齢Wistar系雄性ラット53匹を用い, 正常群 (N群) 5匹, wire挿入結紮群 (P群) 24匹, wire挿入結紮+ビスフォスフォネート投与群 (PB群) 24匹に分けた。 P群とPB群は, 上顎両側第一, 第二臼歯の歯間部にligature wire (直径0.25 mm) を接触点を囲むように挿入結紮し, 歯周炎を惹起させた。さらにPB群は, wire挿入結紮時からインカドロネート溶液 (1.0mg/kg) を24時間毎に腹腔内投与した。実験期間は, N群はwire挿入結紮前 (0日), P群とPB群はwire挿入結紮後1, 2, 3, 5, 7日とし, 病理組織学的観察および組織学的計測を行った。その結果, P群は歯肉の炎症やアタッチメントロス, 破骨細胞の出現や歯槽骨吸収が経時的に進行したのに対し, PB群では破骨細胞の出現や歯槽骨吸収が少なく, とくに7日目ではP群に比較して有意に骨吸収が少なかった。またPB群の破骨細胞では刷子縁の消失や, 核の異常増加, 濃縮, 空胞化などの変性が経時的に進み, アポトーシスに陥った細胞も観察され, PB群の骨細胞や骨芽細胞にはあまり悪影響が観察されなかった。以上の結果から, 急速に進行するラット実験的歯周炎にインカドロネートを投与することにより, 破骨細胞の出現と活性を減少させ, 歯槽骨吸収を抑制できる可能性が示唆された。
  • 薮田 英司, 坂上 竜資, 加藤 熈
    2000 年 42 巻 4 号 p. 282-297
    発行日: 2000/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 垂直性骨欠損を伴う歯周炎罹患歯にルートプレーニングを行った後の歯周組織の治癒に咬合性外傷と歯肉辺縁の炎症がどのような影響を与えるかを知る目的で行った。サル5頭の下顎両側臼歯を抜歯し, 被験歯はその両隣在歯とした。抜歯窩治癒後, 両隣在歯に3壁性骨欠損を作成し, 欠損底部にノッチを付与しモールを挿入した。4週後にモールの除去とSRPを行い, 被験歯を炎症と咬合性外傷をコントロールする群C群), 咬合性外傷のみコントロールする群 (I群), 炎症のみコントロールする群 (T群), 両者ともコントロールしない群 (IT群) の4群に分けた。炎症は綿糸結紮とソフトフードで惹起し, コントロールはブラッシングとSRPで行い, 咬合性外傷はアンレーとパワーチェーンを装着して発生させた。観察期間は10週とし臨床的, X線学的, 病理組織学的観察と組織学的計測を行った。その結果, C群はPD, CAL, 垂直性骨欠損とも改善し, T群はPDとCALは改善したが垂直性骨欠損が残存し, 1群は垂直性骨欠損は改善したがPDとCALは悪化し, IT群はPDとCAL, 垂直性骨欠損とも悪化した。これらから, 垂直性骨欠損を伴う歯周炎罹患歯にSRPを行った後の治癒は術後の咬合性外傷と炎症のコントロールが大きく影響し, 炎症のコントロールは臨床的付着の改善に, 咬合性外傷のコントロールは骨欠損の改善に影響することが示唆された。
  • 山本 恒之
    2000 年 42 巻 4 号 p. 298-306
    発行日: 2000/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究はラットとヒトの歯を比較観察し, 中間セメント質とホープウエルースミスの透明層の構造と由来を明らかにするために行われた。未完成, および完成したヒト歯とラット臼歯の研磨切片とパラフィン切片を作成し光顕で観察した。ラット未完成臼歯では脱灰および未脱灰超薄切片を作成し透過電顕でも観察した。オリジナルの定義に基づいた場合, ラットとヒト歯のいずれにおいても, 中間セメント質とホープウエルースミスの透明層は外套象牙質に属した。これは, 両組織とも象牙芽細胞由来であることを意味する。ヒト未完成歯では外套象牙質全体が石灰化の遅れを示した。一方, ラットでは, 外套象牙質表層の約1μm幅の線維稀薄層のみが石灰化の遅れを示した。線維稀薄層が将来のセメント象牙境となることはすでに確かめられている。線維稀薄層はしばしば中間セメント質あるいは透明層と呼ばれてきた。この方が場合によってはオリジナルの定義よりもわかりやすいからである。しかしながら, 同時に, このような用語の使い方の違いがオリジナルの定義との混乱を生んできた。結論として, 本研究は以下の3点を提案する: 1) ホープウエルースミスの透明層は外套象牙質と相同のものする。2) 中間セメント質という用語はいかなる構造物にも使用しない。3) 線維稀薄層を介在接着層と名づける。
  • 大場 堂信, 赤沢 佳代子, 二宮 洋介, 桐野 晃教, 明丸 倫子, 石本 智子, 戸野 早由利, 中村 輝夫, 片岡 正俊, 篠原 啓之 ...
    2000 年 42 巻 4 号 p. 307-313
    発行日: 2000/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    わが国で腎不全により人工透析を受けている患者は現在約18万人いると言われている。透析処置では腎臓のすべての機能を補うことはできず, 例えばエリスロポエチンの産生やビタミンD3の活性化といった生体にとって重要な反応が行われなくなる。これらの腎機能障害に由来した骨病変は透析患者にみられる主要な副作用の一つである。著者らは人工透析処置を受けている慢性腎不全患者は歯周病に対する感受性の高い集団ではないかと考え, その関連を追求するために透析患者38名の歯周組織診査を行った。対照群として同年代の健常者42名を選び, 同様の歯周組織診査を行った。CPITN (歯周治療必要度指数) を調べた結果, 透析患者群は対照群より高い値を示した (2.4±0.1 vs. 1.9±0.1; p<0.05)。CI-S (簡略化歯石指数) では, 2群間に有意差は認められなかった。欠損歯数では, 透析群の方が2.2倍多かった (6.1±1.3 vs. 2.8±0.8; p<0.05)。次に, 透析期間の違いによって患者を4グループに分けて分析したところ, 指標値に差は認められなかった。また, 透析患者の血中PTH (副甲状腺ホルモン) 濃度と歯槽骨レベルならびにCPITNとの相関を調べたが, 有意な相関は見い出せなかった。一方, 透析患者38名のうち7名が糖尿病由来で人工透析に至った患者 (糖尿病性腎症) であり, これらの患者のほとんどに重度の歯周炎が認められ, 残り31名の透析患者と比較すると, 欠損歯数の増加 (15.9±3.6 vs. 3.9±1.1; p<0.05) および歯槽骨レベル (%) の低下 (58±60 vs. 79±1; p<0.05) が認められた。さらに, 糖尿病性腎症以外の透析患者31名と対照群とを比較した場合, CPITNにおいて有意差が認められ (2.3±0.1 vs. 1.9±0.1; p<0.05), 糖尿病性腎症を除いた透析患者においても健常者より歯周病罹患度が高いことが示された。以上の結果から, 人工透析処置を受けている慢性腎不全患者の歯周病罹患度は健常人より高く, 慢性腎不全が歯周病のリスクファクターになりうる可能性が示唆されるとともに, 人工透析処置を受けている糖尿病性腎症患者はそれ以外の疾患由来の患者よりも重度の歯周病を有する傾向が強いことが示された。
  • 尾崎 幸生, 國松 和司, 原 宜興, 加藤 伊八
    2000 年 42 巻 4 号 p. 314-322
    発行日: 2000/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    代表的な薬剤誘発性歯肉増殖症の一つであるフェニトイン (PHT) 歯肉増殖症における細胞増殖能の変化, また, 同疾患と炎症との関わりを検討することにより歯肉増殖のメカニズムを解明する目的で, PHT歯肉増殖症患者 (PHT-GO群), プラークに起因する増殖性歯肉炎を有する患者 (ND群) および臨床的健康歯肉を有する患者 (Control群) から得られた歯肉に対して, 免疫組織学的検索を行った。各群からそれぞれ5名ずつ被検者を任意に選択し, 歯周外科時あるいは抜歯時に試料を採取してパラフィン包埋連続切片を作製した。これらの切片に, マウス抗増殖細胞核抗原 (PCNA) モノクローナル抗体を用いて免疫染色を施した。その結果, 各群の線維芽細胞および上皮細胞にPCNA陽性所見が認められ, 特にPHT-GO群では多数みられたが, 不規則に伸長した上皮脚ではPCNA陽性細胞はほとんど発現していなかった。各群の口腔上皮直下の結合組織における単位面積あたりの全線維芽細胞数は, PHT-GO群が他群に比べて有意に多く, ND群とControl群との間には有意差はなかった。さらに, PCNA陽性線維芽細胞の単位面積あたりの存在密度はPHT-GO群>ND群>Contro1群の順に高く, PHT-GO群とND群との間, PHT-GO群とControl群との間およびND群とControl群との間にそれぞれp<0.05, p<0.01およびp<0.01で有意差を認めた。また, 結合組織内の炎症性細胞浸潤密度の低い領域と高い領域での陽性線維芽細胞の比率をPHT-GO群, ND群で比較したところ, 両群共に領域間で有意差を認めなかった。これらのことから, PHT歯肉増殖症では線維芽細胞の増殖能が増強されていることが示唆されたが, 炎症性細胞浸潤数と増殖線維芽細胞との関連は明らかにはできなかった。今回の研究の結果から, PCNA陽性線維芽細胞の明らかな増加とそれに伴う歯肉線維芽細胞の増加が歯肉増殖の一因となっている可能性が推測された。
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