オウトウの主要作業における作業能率と労働負荷を垣根仕立て樹と立ち木仕立て樹で比較した.垣根仕立て樹は,立ち木仕立て樹より人工受粉と整枝・剪定の作業時間が大幅に削減できたが,新梢管理,収穫には,立ち木仕立て樹より作業時間が多く掛かった.作業の種類によって作業能率は異なり,調査した前述の4項目の作業の合計では,垣根仕立ての作業時間が104時間56分,立ち木仕立ては121時間49分であった.脚立使用率は,全ての作業で垣根仕立て樹より立ち木仕立て樹の方が高かった.立ち木仕立て樹より作業時間が多く掛かった新梢管理・収穫の作業は脚立の移動,昇降回数が多かった.新梢管理・収穫の推定仕事量は,垣根仕立て樹より立ち木仕立て樹の方が少なく,作業負荷は脚立の移動,昇降回数が大きく影響することが明らかとなった.新梢管理の体幹傾斜角は,両仕立てともほぼ同じ傾斜を示したが収穫作業では立ち木仕立て樹の方が体幹傾斜角の大きな姿勢の出現頻度が高かった.さらに収穫作業の特徴として,立ち木仕立て樹には垣根仕立て樹にない体幹の傾斜が大きな姿勢の出現頻度が高かった.さらに収穫時の特徴として,垣根仕立て樹には体が反り返った体幹傾斜角0°以下の姿勢が2.9%あった.垣根仕立て樹は側枝がトレリスに添って水平誘引され整理されたことで作業が単純化していることと,列方向の樹幅の膨らみが抑えられ作業姿勢の改善により作業能率も向上し,労働時間の短縮にもつながった.しかし作業の種類によっては脚立の移動、昇降回数が増えて身体負荷が増えることが明らかになった.
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