本稿では,農業後継者不足問題が深刻している巴彦〓尓市烏拉特前旗先鋒鎮において農業後継候補者の就農意向に関する現地調査に基づき,数量的に農業後継候補者の自家農業への就農意向とそれを可能にする条件との関係を考察した.また,農業後継候補者の属性と関連させて,農業後継者になる可能性が高い後継者候補タイプを検討した.その結果,以下の諸点が明らかになった.まず,当地域では,一般的に農業後継候補者の就農意向は弱い.就農条件や生活条件が現状のままである場合,将来的に50%以上の就農可能性を持つ農業後継候補者は一人もいない.すなわち,現状より就農条件や生活条件が大幅に改善しないと,当地域の農業後継者を確保するのが難しい.しかし,当地域の現状から判断すると,就農条件や生活条件を大きく改善するのは大変困難である.ある程度の農業後継候補者育成対策が実施されても,将来的に農業後継者が大幅に減少していくと予測できる.ただし,年間農業所得が4割増加,農繁期1日当たりの労働時間を8時間,巴彦〓尓市中心部への移動時間を2時間と想定した場合,50%以上の就農可能性がある農業後継候補者のタイプは存在している.そうしたタイプの後継候補者に共通しているのは,すべて地元で暮らしている点である.そうしたタイプのなかでも,タイプ18(フリーター,地元,30〜35歳未満,男性)に該当する後継候補者は比較的人数が多い.したがって,今後は,農業後継候補者タイプ18(フリーター,地元,30〜35歳未満,男性)のような農業後継候補者を中心に農業後継者育成対策を実施することが必要である.したがって,上述の想定目標を追求するためには,土地生産性の向上や枸杞のブランド化の推進と同時に,就農労働時間の短縮を実現するための枸杞の品種改良あるいは新品種の開発が重要であると考えられる.また,農村での生活利便性をよくするための道路改良及ぶ高速道路利用料金の値下げも必要である.
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