農業生産技術管理学会誌
Online ISSN : 2424-2403
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18 巻, 4 号
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  • 周 雪〓, 能美 誠
    原稿種別: 本文
    2012 年 18 巻 4 号 p. 151-158
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2019/04/11
    ジャーナル フリー
    本稿では,農業後継者不足問題が深刻している巴彦〓尓市烏拉特前旗先鋒鎮において農業後継候補者の就農意向に関する現地調査に基づき,数量的に農業後継候補者の自家農業への就農意向とそれを可能にする条件との関係を考察した.また,農業後継候補者の属性と関連させて,農業後継者になる可能性が高い後継者候補タイプを検討した.その結果,以下の諸点が明らかになった.まず,当地域では,一般的に農業後継候補者の就農意向は弱い.就農条件や生活条件が現状のままである場合,将来的に50%以上の就農可能性を持つ農業後継候補者は一人もいない.すなわち,現状より就農条件や生活条件が大幅に改善しないと,当地域の農業後継者を確保するのが難しい.しかし,当地域の現状から判断すると,就農条件や生活条件を大きく改善するのは大変困難である.ある程度の農業後継候補者育成対策が実施されても,将来的に農業後継者が大幅に減少していくと予測できる.ただし,年間農業所得が4割増加,農繁期1日当たりの労働時間を8時間,巴彦〓尓市中心部への移動時間を2時間と想定した場合,50%以上の就農可能性がある農業後継候補者のタイプは存在している.そうしたタイプの後継候補者に共通しているのは,すべて地元で暮らしている点である.そうしたタイプのなかでも,タイプ18(フリーター,地元,30〜35歳未満,男性)に該当する後継候補者は比較的人数が多い.したがって,今後は,農業後継候補者タイプ18(フリーター,地元,30〜35歳未満,男性)のような農業後継候補者を中心に農業後継者育成対策を実施することが必要である.したがって,上述の想定目標を追求するためには,土地生産性の向上や枸杞のブランド化の推進と同時に,就農労働時間の短縮を実現するための枸杞の品種改良あるいは新品種の開発が重要であると考えられる.また,農村での生活利便性をよくするための道路改良及ぶ高速道路利用料金の値下げも必要である.
  • 深澤 秀夫, 中司 敬
    原稿種別: 本文
    2012 年 18 巻 4 号 p. 159-166
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2019/04/11
    ジャーナル フリー
    サツマイモ塊根を家畜の飼料として活用するために,低コストで省工程,高品質に加工するための天日乾燥飼料化技術の可能性について検討した.慣行法として乾燥サツマイモを豚に給与することが行われていたが,飼料調製自体が多労で,多頭飼育には不向きなことから,一部を除き廃れてしまった.そこで,農業用プラスチックハウス内での天日乾燥による乾燥サツマイモの調製条件を捉えるために試験したところ,サツマイモの細切形状は千切りが適切で,コンテナ箱内容量の30 %を積載して多段式に設置する方法が有効であることがわかった.これにより晴天日を含む冬期間の7〜8日で,初期含水率70%w.b.から乾燥含水率8%w.b.まで乾燥することが可能であることを示した.また,一旦,コンテナ箱を多段式に設置すれば,乾燥期間中の操作は不要であるため省力的で,作業時間は生いも1t当たり14.3時間と試算された.乾燥サツマイモの飼料としての品質も標準的であった.したがって,サツマイモの収穫が終了した後の冬期間に,有効利用されない廃棄いも等を飼料用にハウス内で乾燥調製できる可能性が示された.
  • 土橋 豊, 田中 祥子
    原稿種別: 本文
    2012 年 18 巻 4 号 p. 167-172
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2019/04/11
    ジャーナル フリー
    エキウム属植物が,養蜂における蜜源植物の可能性を評価した.商業的養蜂に用いられるセイヨウミツバチの吸蜜行動とエキウム属植物の吸蜜可能期間と株および単位面積当たりの花数を調査した.エキウム・カンディカンスはエキウム交雑種に対してセイヨウミツバチの吸蜜行動か有意(P<0.05)に多く,吸蜜可能期間,1株当たりの総花数および株および単位面積当たりの花数が多いことから,セイヨウミツバチによる養蜂における蜜源植物として有望であると考えられた.これらの結果から,セイヨウミツバチによる商業的養蜂にはエキウム・カンディカンスが,ニセアカシアおよびゲンゲの代替植物の蜜源植物として有望であることが示された.
  • 末吉 武志, 岩崎 浩一, 白澤 繁清
    原稿種別: 本文
    2012 年 18 巻 4 号 p. 173-178
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2019/04/11
    ジャーナル フリー
    1節苗を利用したサトウキビ栽培体系の開発を目的として,苗の切断面にワセリンを塗布した場合の苗の乾燥抑制効果,生育特性と収量について調査を行った.まず室内において行った乾燥抑制実験では下記の結果が得られた.(1)ワセリン塗布による乾燥抑制効果は1節苗,2節苗何れでも確認できた.(2)ワセリンを塗布した苗の含水率は無処理の場合に比べ30日後で約1.5〜1.6倍の値であった.(3)断面処理の有無に関わらず2節苗が1節苗に比べ水分の蒸散量は少なかった.つづいてほ場で行った栽培実験では下記の結果が得られた.(4)発芽率は1節苗処理区が最も大きな値となり,続いて1節苗無処理区,2節苗の順であった.(5)茎長は2節苗が1節苗に比べ有意に大であった.(6)原料茎重では1節苗処理区が2節苗区とほぼ同程度の値となったが,1節苗無処理区は有意に小さかった.(7)ブリックスは試験区の違いによる差はみられなかった.これらの結果より乾燥しやすいと言われている1節苗であっても,切断面にワセリンを塗布することによって苗内部の水分蒸発が抑えられ,慣行2節苗と同程度の収量を得られる可能性があることが示唆された.今後の課題としては,生育初期の詳細な調査(分げつや枯死苗数),土壌水分と発芽の関係,ハウス等の環境条件を一定に制御した場合での苗質の調査や,ワセリン等の苗切断面への塗布方法,南西諸島に多く点在する小区画ほ場に対応可能な小型苗植付け機の開発等が考えられた.
  • 富田 晃, 猪股 雅人
    原稿種別: 本文
    2012 年 18 巻 4 号 p. 179-183
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2019/04/11
    ジャーナル フリー
    垣根仕立てに適する甘果オウトウの苗木育成を目的に甘果オウトウ'佐藤錦'の1年生苗木の新梢発生に対するベンジルアデニンと芽傷の処理効果について検討した.BAの新梢発生促進効果は,全てのBA処理区で無処理に対して有意な差があり,BAの休眠期処理は新梢発生に有効であった.また600および1,200 mg・L^<-1>の新梢発生促進効果は300 mg・L^<-1>の処理より有意に高かった.BAと芽傷の処理を併用すると新梢の発生本数が増加した.先端から基部まで広範囲に新梢が発生し,新梢の発生位置と発生角度に違いが認められた.さらに,BAは樹液が流動する前の3月上旬に処理すれば,樹液流動が始まる3月下旬に比べて,新梢発生に対するBAの効果が高いことが判った.これらの結果から,BAと芽傷処理を樹液が流動する前に処理すれば垣根仕立てに適した優良な苗木を生産することができることが示された.
  • 脇坂 勝, 杉村 輝彦
    原稿種別: 本文
    2012 年 18 巻 4 号 p. 185-189
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2019/04/11
    ジャーナル フリー
    カキ(Diospyros kaki Thunb.)幼苗接ぎ木苗を用いた接ぎ木2年目(台木の播種2年目)から3年間の初期生育,着果状況および果実品質について調査した.カキ'法蓮坊'実生もしくは'アオソ'実生を台木とした幼苗接ぎ本苗を,1年目(台木の播種2年目)はプラスチック鉢を用い大苗育苗し,2年目以降は,圃場へ定植もしくはポット栽培を行い,慣行苗との比較を行った.幼苗接ぎ木苗は,接ぎ木翌年には全て発芽し,両台木実生の接ぎ木苗に生育差は見られなかった.幼苗接ぎ木苗を用いた全樹は,定植後に枯死する個体は発生せず,播種3年後には着蓄し,1樹当たり0.9kg収穫できた.また,播種4年後の樹冠占有面積は,慣行苗と比較して1.9〜4.5倍有意に広かった.以上から,幼苗接ぎ木法は,慣行苗による栽培方法よりも樹の生育が早く,初期収量が多く得られることが明らかになった.
  • 上野 誠, 鈴木 陽子, 久村 由美子, 植田 加奈, グェンティンウェット , 木原 淳一, 荒瀬 榮, 大島 朗伸
    原稿種別: 本文
    2012 年 18 巻 4 号 p. 191-195
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2019/04/11
    ジャーナル フリー
    ジャガイモ・ショ糖寒天培地を用い圃場から分離された細菌菌株(STS1株)のキュウリ炭疽病に対する抑制効果を調査した.STS1株は対峙培養においてキュウリ炭疽病菌(Colletotrichum orbiculare)の菌叢生育を抑制した.また,STS1株の細胞懸濁液はキュウリ炭疽病菌の付着器形成を抑制するとともに,キュウリ植物体上で炭疽病病斑の形成を抑制した.16S rDNA のシークエンス解析の結果,STS1株は,Streptomyces属菌であると同定された.これらの結果から,Streptomuces属菌STS1株の菌体と菌体外に放出される抗菌性物質はウリ類炭疽病の生物的防除と化学的防除にそれぞれ利用できる可能性が示された.
  • 馬 杰, 青木 宣明, 〓 青
    原稿種別: 本文
    2012 年 18 巻 4 号 p. 197-203
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2019/04/11
    ジャーナル フリー
    促成栽培によるハイブリッドボタン'オリエンタル ゴールド'の年内開花の可能性を探った.実験1では,8月31日に株を掘り上げ,0,10,20および30日間の予備冷蔵(15℃),続いて50-57日間の本冷蔵(4℃)し,培養土(真砂土:堆肥,容積比1:1)を用いて鉢上げ後加温温室に搬入した.その結果,それぞれ12月中旬,12月下旬,12月下旬と1月中旬に開花した.さらに実験2では,8月1日,11日および21日に株を掘り上げ,50日間本冷蔵(4℃)し,二重カーテンの無加温,または続いて加温栽培で,それぞれ11月下旬,11月下旬および12月上旬に開花した.実験1では,すべての株が,また実験2では,80%前後が開花した.なお,切り花品質に問題はなく,発芽翌日のGA処理は切り花形質を向上させた.
  • 大西 政夫, 門脇 正行, 河原 克明, 土本 浩之
    原稿種別: 本文
    2012 年 18 巻 4 号 p. 205-210
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2019/04/11
    ジャーナル フリー
    松江市にある田畑輪換試験圃場の転換2年目の転換畑で,黒ダイズ品種丹波黒(以下,普通系という)を2007年から2010年の4年間供試するとともに普通系より成熟期が約30日早い早生系統(以下,早生系という)を2009年と2010年の2年間供試して栽培試験を行った.2008年と2009年の降水量は,高温・多照・少雨であった2010年より少なかった.2010年の精粒収量は他の年次より激減し,普通系で約5%,早生系で約24%となった.2010年のm^2当たり粒数の激減は8月の開花期の高温により,そして精粒歩合や精粒百粒重の低下は開花期以降の高温により,それぞれ引き起こされたと考えられた.以上のことより,記録的な猛暑年であった2010年に自然温度条件下で生育した黒ダイズの収量の激減した主因は高温であり,水ストレスの影響はほとんどないと考えられた.
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