オウトウ'佐藤錦'の葉の光合成速度,無機成分含有率に及ばすパクロブトラゾール(PBZ)処理の影響,ならびに茎葉処理時期の相違と翌年の栄養成長および果実品質との関係について検討した。1.満開後24日(新梢伸長期)および78日(新梢伸長停止後)に,215ppmPBZ溶液を樹体全体に散布した。翌年の新梢長は両処理区で抑制されたが,とくに満開後78日処理区では平均新梢長が無処理区の43%,総新梢長が5%程度となった。またPBZ処理区では,単位樹容積あたりの花束状短果枝数,幹断面積あたりの収量が増加した。2.PBZ処理により,単位面積当たりの光合成速度は直達光および散乱光下とも増加した。一方,葉面積は無処理区の69〜11%に減少したが,乾物率は増加した。また,N,Ca,Mgの含有率が増加した。3.PBZ処理区では果重が増加した。一方,結果数が増加したことから,葉果比は無処理区に比べ減少したものの可溶性固形物含量に大きな差は認められなかった。これらは栄養成長の抑制,Nなど無機成分含有率の増加,光合成速度の増加などに関連すると考えられた。またPBZ処理区では,新梢伸長が抑制され樹冠内部への光の透過量が多くなったためか,果実の着色面積割合が増加し,アントシアニン濃度も高かった。
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