ニホンナシ'新水'は早生品種であり,施設栽培によって果実肥大が多少促進され,早熟性の利点をさらに高めることができる。しかし,'新水'は施設栽培を行っても,糖含量はそれほど高まらない。本実験では,'新水'の収穫前6週間CO_2施用をすることで,どの程度果実の肥大や糖含量を高めることができるかをみる目的で,純同化率,器官別乾物増加率を調査した。CO_2施用はLPガス燃焼法で行い,天井のみ被覆したハウス内の棚面付近のCO_2濃度を,6月3日から7月14日まで(毎日8時〜17時)500〜600ppmに維持した。1.平均果重はCO_2施用区で307gであり,対照区より約30g有意に優れた。2.CO_2施用区における側枝単位の乾物増加量は約93gで,対照区より45%多く,果実の乾物増加量は80gで対照区より49%多かった。CO_2施用区における側枝単位の乾物増加率は約176%で,対照区より56%高く,果実の乾物増加率も施用区が約130%で,対照区より87%高かった。3.純同化率(NAR)はCO_2施用区が3.45で,対照区より約45%有意に高かった。4.果実糖度はCO_2施用区が13.6%で,対照区より1.7%有意に高く,特に施用区のショ糖含量が対照区の2倍以上高かった。以上の結果,天井のみ被覆した開放ハウス内でも,送風ダクトを均一に配置することで棚面付近のCO_2濃度を500〜600ppm程度まで高めることができた。また,側枝単位の乾物増加率が約176%まで上昇し,果実のショ糖含量は対照区の2倍以上高まったことから,収穫前のCO_2施用はナシ'新水'の品質向上に有効であると考えられた。
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