農業生産技術管理学会誌
Online ISSN : 2424-2403
Print ISSN : 1341-0156
16 巻, 1 号
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  • 篠原 卓
    原稿種別: 本文
    2009 年 16 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2009/07/15
    公開日: 2019/04/12
    ジャーナル フリー
    種子活力は,国際的に認知された種子品質指標であるが,わが国では殆ど知られていない.本稿は,まず種子活力の原理,定義,測定方法そして発芽率との違いについて,海外での同分野における研究成果を紹介することにより解説する.その後に,わが国の農業において,種子活力の様々な利用場面を提案する.
  • 紙谷 喜則, イッサザカリア アブドゥルスディ, 大重 絢香, 守田 和夫
    原稿種別: 本文
    2009 年 16 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2009/07/15
    公開日: 2019/04/12
    ジャーナル フリー
    本報では,食品添加物に指定されたSACEWの低いpHを有効に利用する方法として,収穫から流通,低温保存におけるゴボウの品質について,pH調整剤として食品添加物に指定されているクエン酸と褐変防止効果および,菌数の推移を比較した.その結果,SACEWを用いて浸漬洗浄した場合,白さの指標であるL^*とa^*では,表面・断面で4〜8日までクエン酸処理区より白さが強い傾向が見られたが,クエン酸区とSACEW区で統計的に有意差が得られたのは,表面の2日目(L^*,a^*,b^*)までと断面a^*,b^*の2日目までであった.色差ΔEに換算してクエン酸区とSACEW区を比較したところ,各区には有意な差が得られなかったことから,クエン酸とSACEWの.褐変防止効果は同等であると考えられる.また,SACEWで浸漬処理した場合には,初発菌数を2桁低く抑えることができるので,腐食の面からもSACEWを用いることが望ましいと言える.
  • 紙谷 喜則, イッサザカリア アブドゥルスディ, 大重 絢香, 許斐 勝大, 木村 主幸, 守田 和夫
    原稿種別: 本文
    2009 年 16 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2009/07/15
    公開日: 2019/04/12
    ジャーナル フリー
    本報では,強酸性電解水の生成原理を応用して,有隔膜電解槽陽極から出た酸性電解水を再び陰極槽に導入する循環式電解装置を開発し,強酸性電解水を生成することで,農業用水をはじめとする真水の細菌制御に関する方法検討した.その結果,原水の電気伝導度(EC)が300μS/cm以上であれば,電解電圧が10V以上の時に大腸菌(10^5CFU/mL)を死滅させる効果があることが確認された.また,レジオネラ菌(10CFU/mL)の場合には,原水ECが100μS/cm以上あれば,50V以上の電圧を印加することで殺菌効果が得られることが確認された.また,本法を用いることで,原水のpH,ECが変化しない無菌水が得られることが確認された.以上により循環式電解法を用いることで,地下水,冷却水など菌が存在する水資源を安全に使用することが可能となり,産業上にて有用な技術となることが示唆された.
  • 紙谷 喜則, イッサザカリア アブドゥルスディ, 比恵島 裕美, 守田 和夫, 八木 史郎
    原稿種別: 本文
    2009 年 16 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2009/07/15
    公開日: 2019/04/12
    ジャーナル フリー
    市販されているpH12程度の次亜塩素酸ナトリウムは100-200mg/Lに希釈すると次亜塩素酸の存在濃度が一番高くなる.大腸菌を用いたインビトロ試験および,レタスを用いた殺菌効果確認試験では,中性から酸性域にかけて,次亜塩素酸ナトリウム水の殺菌効果は次亜塩素酸濃度に依存していることが確認された.レタスを次亜塩素酸ナトリウム水に浸漬後のすすぎ水pHを3-10まで変化させた場合にも,中性から酸性域おいては次亜塩素酸を形成することにより殺菌効果が上昇することが確かめられた.しかし,アルカリ域においてもpH10にて殺菌効果が増大する傾向が見られた.アルカリ性を呈する主因が水酸化ナトリウムであることから洗浄・剥離効果による物理的除去である可能性が考えられた.次亜塩素酸ナトリウム溶液を純水で希釈する場合100〜200mg/Lに希釈して用いることが望ましい.殺菌効果を高めるにはすすぎ水pHを4以下にすると良いことが確認された.
  • 余 東, 戸田 雄太, 桑田 光作, クルス アンドレフレイリ, 石井 孝昭
    原稿種別: 本文
    2009 年 16 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2009/07/15
    公開日: 2019/04/12
    ジャーナル フリー
    バヒアグラス,ナギナタガヤおよびオオナギナタガヤ茎葉からの揮発性成分をヘッド・スペース法によるガスクロマトグラフ-マススペクトロメトリーで分析した。その結果,ノナノール,2-エチル-1-ヘキサノール,2-メチル-1-プロパノール,ノナン酸エチルエステルおよびオクタン酸エチルエステルなどの5種類の揮発性成分が検出された.また,この内の主要な5種類の揮発性成分については定量も行った.さらに,これらの揮発性成分が数種類の土壌病原菌および有益微生物の生長に及ぼす影響を調査したところ,いずれの揮発性成分もFusarium oxysporum f.sp. lactucae,Rhizoctonia solaniおよびRosellinia necatrixのような土壌病原菌の生長を抑制した。特に,2-エチル-1-ヘキサノールの生長抑制効果は大であった.しかし,Bacillus subtilis,Burkholderia cepacia,Paenibacillus polymyxaおよびPseudomonas stutzeriのような有益な細菌に対して,これらの揮発性成分は生長を阻害しなかった.むしろいくつかの揮発成分はこれらの有益な細菌の生長を促進する傾向を示した.さらに,植物の根に共生し,その植物の生長を助ける糸状菌であるアーバスキュラー菌根(AM)菌,Glomus caledoniumの菌糸生長は,土壌病原菌の生長を抑制するのに十分な揮発成分濃度で抑制されることはなかった.これらの結果は,果樹園の草生化に有利な草であるバヒアグラス,ナギナタガヤおよびオオナギナタガヤが,これらの草で増殖する有益な細菌やAM菌に対してはほとんど害を及ばさないが,土壌病原菌に対しては強い抑制効果を有することを示唆している.
  • 上松 富夫
    原稿種別: 本文
    2009 年 16 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2009/07/15
    公開日: 2019/04/12
    ジャーナル フリー
    1年生'宮川早生'(台木はカラタチ)を50Lポットに植え,土壌および植物体に及ぼす液肥樹上散布の影響を試験した.試験区として水溶性粉末複合肥料の希釈液を用いた液肥区(300培液・18回区,150倍液・18回区,150倍液・6回区)と,化成肥料区,有機配合区,有機質肥料区および無施肥区を設定した.300倍液の窒素濃度は500ppm,150倍液は1,000pmとした.施肥窒素量は無施肥区を除き,各区ともにポット当たり4.33gとした.土壌の無機態窒素含有量を比べると,液肥区は他の区より多くなったが,液肥区間に差がなかった.液肥区の樹体乾物量(生育量)は化成肥料区,有機配合区および有機質肥料区と同等であった.樹体の3大要素含量は各施肥区ともほぼ同等であった.液肥区は有機配合区および有機質肥料区と同等の肥効を示した.液肥区に比べて化成肥料区は窒素の肥効が高く,加里の肥効が低い傾向であった.液肥区間の窒素肥効に差はなかった.有意差は認められなかったが,3大要素の肥効において150倍・18回区は150倍・6回区と同等あるいはやや優れる傾向があった.
  • 河村 綾恵, 藤目 幸擴, 寺林 敏, 伊達 修一
    原稿種別: 本文
    2009 年 16 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2009/07/15
    公開日: 2019/04/12
    ジャーナル フリー
    シュンギクの舌状花と筒状花について,各花器の発達過程の違いを明らかにするため,走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて微細形態学的に観察した.シュンギクの花序の発達段階は11段階に、舌状花と筒状花の花芽発達はそれぞれ8段階に分けられた.舌状花の5本の雄ずいは筒状花の場合と同様に分化した.その後雄ずいの発達は停止し,やがて座止した.一方,筒状花の雄ずいは分化後、座止することなく発達を続け,花粉も形成された.舌状花の雄ずい基部では維管束の発達は認められず,一方筒状花の雄ずいでは5本の維管束がよく発達していた.舌状花の花冠全体は雌ずい分化期まではそろって伸長したが,その後3裂片だけがよく発達して,開花時には2cmに伸長した.一方,筒状花の花冠は全体が最後まで発達したが,開花時でも2-3mm程度にしか伸長しなかった.舌状花の花冠では約10本の維管束が発達していたが,筒状花の花冠では発達している維管束は5本であった.
  • 土本 浩之, 大西 政夫, 門脇 正行, 伊田 圭佑, 岡田 憲章, 山根 研一
    原稿種別: 本文
    2009 年 16 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2009/07/15
    公開日: 2019/04/12
    ジャーナル フリー
    莢先熟状態の黒ダイズ品種丹波黒における摘葉処理および収穫時期が収量に及ぼす影響を調査した.収穫日としては,2007年11月7日,11月16日,11月26日および12月3日(通常の成熟期)の4時期を設けた.摘葉処理としては,11月7日に摘葉し,収穫日まで立毛状態とした立毛時摘葉区,収穫直後に摘葉した乾燥時摘葉区,および無摘葉区の3区を設けた.収穫後,雨よけビニールハウス内で掛干しによる自然乾燥を行った.乾燥時摘葉区と立毛時摘葉区が同一処理である11月7日収穫を除き,立毛時摘葉区の収量及び精粒歩合は無摘葉区および乾燥時摘葉区より低くなる傾向が認められ,特に収穫時期が早いほどこの傾向は顕著であった.11月16日以前の収穫では無摘葉区は乾燥時摘葉区より収量が高くなる傾向が認められた.無摘葉区および乾燥時摘葉区では11月26日収穫まで,収穫時期が遅くなるにつれて収量,精粒歩合および精粒百粒重が大きくなる傾向が認められた.これらのことより,11月26日頃まで,葉身及び葉柄中の養分が子実へ転流しており,この転流は,立毛時だけでなく,収穫後の自然乾燥時にも生じている,いわゆる追熟,が生じていると考えられる.以上のことより,莢先熟状態に陥った黒ダイズにおいて,通常の収穫時期とほぼ同程度の精粒歩合,精粒百粒重および収量を達成しながら,乾燥期間を確保するためには,通常の収穫期より約20日〜10日前に収穫すればよいと考えられる.さらに通常の収穫期より約20日前に収穫する場合は,葉身や葉柄を残存させた状態で自然乾燥して追熟させる必要があると考えられる.
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