農業生産技術管理学会誌
Online ISSN : 2424-2403
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9 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 文 斗敬, 水谷 房雄, ルット キプコリオニーL.
    原稿種別: 本文
    2002 年 9 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    収穫期における興津早生果実を用いて果実の部位別に可溶性固形物,糖及び酸含量を調べた.可溶性固形物と糖質(果糖,ブドウ糖及びショ糖)は果梗部から果頂部に向かって,また,果心部から果皮部に向かって増加した.果実の部位別のショ糖含量はヘキソースより高かった.ショ糖/ヘキソースの比は赤道部の中央部で最も低かった.酸含量は赤道部が果梗部,果頂部に比べて高かった.また,酸含量は果皮部で最も低く,果心部と中央部では差がなかった.甘味比(可溶性固形物/酸含量)は果頂部>果梗部>赤道部の順で高かった.果実の可溶性固形物と酸含量が高いほど,それぞれ果頂部と果梗部,赤道部と果頂部の含量差が大きかった.部位別の可溶性固形物,酸含量,甘味比とそれぞれの平均値の間の回帰係数は赤道部で比較的高かった.以上の結果より,近赤外線を用いた非破壊センサーによる果実の品質評価は赤道部で行うのが適していると考えられる.
  • 鈴木 晴雄, デュアンパン アチャナ, 奥田 延幸, 松井 年行
    原稿種別: 本文
    2002 年 9 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    本実験は被覆施設における栽培ポットの土壌温度の動態特性を明らかにすることを目的とした.圃場,ハウス(ガラス温室),人工気象室の各場所に,無植生状態のポット(1/2000a),植生下のポット,畦(圃場,ハウス)を設けて,ポット壁面の日射変化,土壌温度の変化とそのバラツキ,水分分布を測定した.夏期(1996年7月)における実験結果をまとめた. 1)ポット壁面各方位における直達理論日射量の日変化は,一般の耕地とは大きく異なった.実測全天日射量は,散乱日射量の存在によって壁面各方位間の差が縮小した. 2)ポット内の土壌含水率の部位別変化は,圃場無植生ポットでは北側(N:5.5%)より南側(S:12.5%)が約2倍もバラツキ(S.D.)は大きく,これは植生下のポットも同様であった.ハウスでは無植生と植生の両ポットとも水分変化はより小さくなり,人工気象室では一部の方位でバラツキが特に大きくなる以外は全般的に小さく生じた(3%〜6%). 3)ポット土壌(中央部)の深さ別平均土壌温度については,圃場設置ポットに比べてハウス設置ポットでは無植生下と植生下との差は僅少となり,人工気象室では夜間に空調による高温の温度分布が得られた. 4)ポット土壌の温度上昇度は,無植生では日射量の増加とよく一致しており,理論値に近似した変化が得られた. 5)壁面より0cmと6.3cm内部の土壌温度を全測定点(40点)のバラツキ(S.D.)にて比較した結果,ポット内土壌の部位以上に植生の存在による影響が大きかった.植生は昼間のバラツキを大きく低下させ,特に人工気象室では顕著となった.夜間ではポットの設置場所,ポット内土壌の部位,及び植生による影響は僅少となった.
  • 徐 潤, 後藤 清和, 前澤 重禮, 三輪 精博
    原稿種別: 本文
    2002 年 9 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    中国において大半の収穫籾は天日乾燥がなされている.ところが適当な乾燥条件が明らかでないため,大量の胴割れが発生することが多く,大きな穀物損失につながっている.そこで,次に示す乾燥条件の影響が検討できる実験区を設定し,4つの品種の籾について乾燥特性を検討した.i)籾層厚さ,ii)乾燥中の攪拌回数,iii)地面状態(コンクリートか圃場か),iv)過乾燥,v)遮光.乾燥実験は晴れた日に行い,乾燥の能率と胴割れ率の両面から適正な乾燥条件を考察した.乾燥速度に大きな影響を与えるのは籾層の厚さである.9月の気象条件では,胴割れを抑制しつつ,4日以内に作業が完了するための乾燥速度を得るためには,層厚さ5cm程度が適当であった.攪拌回数が多いと蒸発水分量が大きくなり,しかも胴割れ率が低くなる.つまり,攪拌作業は天日乾燥において,能率と品質を確保するための有効な工程である.その他の各条件を検討し,次の結果を得た.i)地面状態としてできる限りコンクリート面を使用すること.ii)正確な水分計を導入し乾燥中の籾水分の管理に努め,過乾燥を避けること.iii)日射量が大きい場合,胴割れを減ずるための遮光は乾燥能率の面から不要と判断された.以上に述べた乾燥条件により,収穫後の穀物損失はかなり減少できるものと期待される.今後は,立毛中における胴割れの発生や日射量が変化した場合の籾層の厚さと乾燥速度および胴割れ率の関係を中心に実験を加え,気象条件による適正な乾燥条件を求める方法を考察する予定である.
  • 小海 安比古, 中島 聡, 曽田 明裕, 井上 知昭, 鈴木 重俊
    原稿種別: 本文
    2002 年 9 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    挿し芽による宿根スイートピーの増殖について検討した.慣行土,ロックウールおよびパーライトのいずれにおいても発根,シュートの生育に違いはみられなかった.発根およびシュートの生育のためには,22℃・8時間日長下におけばよいこと,母株の齢にかかわらず,挿し穂採取後IBA成分で16〜40ppmのオキシベロンに60分程度浸漬すればよいことがわかった.
  • 山浦 浩二, 西村 融典, 十川 和士
    原稿種別: 本文
    2002 年 9 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    水稲湛水直播栽培用の酸素供給剤被覆種子を自動的に得る簡易計量器付き被覆装置を開発した. 1.開発機の被覆剤計量吐出部は,簡易天秤式が被覆剤吐出スクリュ軸回転数検出方式より吐出精度が高く,実用的であった. 2.簡易天秤の計量カップ容量0.27Lによる設定計量値は,200g程度が適当であり,計量カップへの吐出は流量を多・少の2段階とするより1段階の方が優れていた. 3.被覆剤タンク内の攪拌とタンクの加振は吐出精度に直接的に影響しないものの,ラットホール防止に有効であり,特に攪拌機能は不可欠であると考えられた. 4.被覆剤添加量と水噴霧量,および添加・噴霧後の待機時間で構成する被覆工程において,水/剤比率は17%程度が適当で,種子が多いほど初期から添加・噴霧量を多くでき,待機時間を短くすることができた. 5.直径90cm,深さ30cm,傾斜角49°の回転ドラムによって原料種子質量の2倍の被覆剤を被覆する場合,種子3〜8kgの自動被覆が可能であり,所要時間は20〜39分であった.
  • 傅 継志, 糸原 義人, 谷口 憲治
    原稿種別: 本文
    2002 年 9 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    この論文の目的は中国農村集市の沿革,農産物流通システムの発展過程等の実態調査を通じて,現段階における青果物卸売市場(批発市場)の特質を把握することによって,中国農副産物卸売市場の発展段階とその機能,及び今後の展開方向を提示することにある.結果として,中国における卸売市場は発展の初期段階にあり,売買参加者や市場開設などに限りがなく,消費者に安定的に食材を供給することよりも市場利益を優先する私益性の強い市場であり,消費者に安定的な食材供給を保証するための公益的な機能は十分に発揮されていない.すなわち,国民が常に安定した食生活を送ることが出来ることを前提にすれば,私益性を追求できる市場と共に,一方では,特に大都市では安定的に食料調達できる公益性の強い市場が求められているものと思われる.特に大都市では市場の公益機能を充実させることが望まれる.
  • 徐 潤, 後藤 清和, 三輪 精博, 劉 建偉
    原稿種別: 本文
    2002 年 9 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    中国では,籾乾燥後の調製工程(籾すりおよび精白)における砕粒の発生が多く,穀物損失の大きな要因となっている.その中でも交雑種は在来種に比べて砕粒となりやすく,損失が大きくなると認識されている.まず交雑種と在来種の白米を中国四川省の農家から多数収集し,砕粒率を測定した,その結果,交雑種は在来種に比べて明らかに砕粒率が高いことが判明した.また,中国産米は在来種,交雑種ともに腹白粒の比率が高いため剛度が小さくなり,砕粒が増加すると予測された.次に,試料を交雑種と在来種に区分し,籾すり工程,精白工程および全調製工程での砕粒発生の特性を検討した.得られた結果は次のとおりである.(1)調製工程に入る前の原胴割れ率と籾すり工程での玄米砕粒率には高い正の相関があるので,収穫および乾燥工程で胴割れの発生を抑制することが重要である.(2)ロール間隙比は適切な脱ぷ率を得られる範囲でできる限り大きく設定し,粒に必要以上の圧力を与えない.(3)籾および玄米段階での胴割れ率が同じでも,籾すりおよび精白工程とも交雑種は在来種に比べて砕粒の発生が多い.(4)研削式精白の部分を多くすることによって,全砕粒率を小さくできる.(5)比較検討した日本産の短粒種(ハツシモ)の砕粒率は中国産米に比べて非常に小さい.
  • 阿部 一博, 山田 麻美, 和田 光生, 平井 宏昭, 黒岡 浩
    原稿種別: 本文
    2002 年 9 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    本研究では,ミニトマト`Petit'の樹上での成熟中ならびに収穫後の追熟に伴う果皮色と成分の変化を調べ,品質特性を明らかにすると共に熟度の異なる果実に対する物理的ストレスへの応答反応の差異を明らかにした.樹上で着色した果実の糖と遊離アミノ酸含量は他の熟度の果実より多く,滴定酸含量が少なかった.一部着色果は収穫後にほぼ完全に着色したが,化学成分含量は樹上着色果と異なった.着色果の呼吸量(CO_2生成量)は最も少なく,切断による増加も最も少なかった.また,収穫直後の果実と追熟した果実の果皮色が同じであっても,切断直後の呼吸量の増加には顕著な差異がみられた.切断後に増加するエチレン生成量の増加は,一部着色果で最も顕著であった.
  • 廣瀬 友二, 田邊 猛
    原稿種別: 本文
    2002 年 9 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    冬期間のマルチ処理が一番茶の萌芽,新芽生育に及ぼす影響を検討した.南北うねの弧状茶樹における東側と西側樹冠面での新芽の生育は,マルチの有無および種類によって異なる傾向を示した.マルチ資材の影響では,わらマルチが,フィルムマルチに比べ,生育・収量に優れた.またわらマルチには,樹冠面東・西間にみられる生育差を緩和する効果のあることが認められた.
  • 三竿 善明
    原稿種別: 本文
    2002 年 9 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    本研究は,画像処理を用いて,田植機を自律操向させるためのシステムを構築することを目的としている.画像処理は簡単安価な画像処理ボードをコンピュータの拡張スロットに挿入して用いた.また,処理の高速化とプログラムの簡素化のためアセンブラと表引き法を用いた.田植機が20mを越えるとそれが雑音の中に埋もれ,検出できないことから,田植機をビデオカメラから15m離れた位置で,左に旋回させ,第2列目に進入させた.そして,ビデオカメラから3mの位置まで田植機を無人で操向させる実験に成功した.今後は,ビデオカメラの拡大機能の利用や目標板の枚数を増やすことなどで,制御距離を延長させた実験に取り組む予定である.
  • 王 亮生, 橋本 文雄, 青木 宣明, 劉 政安, 清水 圭一, 白石 綾, 坂田 祐介
    原稿種別: 本文
    2002 年 9 巻 1 号 p. 77-85
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    ボタンの43品種を供試し,促成栽培が花色と花弁の色素組成に及ぼす影響を調査した.色差により花色変化が顕著に認められないもの(19品種)と認められるもの(24品種)の両品種群に分類した.促成栽培により,日本ボタンは花弁の明度が上昇したが,b^*値は低下した.中国ボタンは明度の変化に有意差が見られなかったが,a^*値が上昇し,b^*値は低下した.アントシアニン組成について,日本ボタンも中国ボタンもPn3G5G占有率が増加した.また,促成により総アントシアニン量(TA)が全品種において低下し,TAの低下により,花色が淡色化することが明らかとなった.従って,花色形質を安定化させるには,補光によるTAの蓄積促進が必要であることが示唆された.
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