農業生産技術管理学会誌
Online ISSN : 2424-2403
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8 巻, 2 号
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  • 穆 月英, 笠原 浩三
    原稿種別: 本文
    2001 年 8 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    今現在の中国稲作の生産力水準に関して,遼寧省海城市を代表例として挙げるなら,一般的農家は人力・畜力段階にあると判断される.しかも生産技術,施設投資,従事者の素質等の面では依然として低位であるから,農家の耕地面積は農家生産活動の決定的生産要素となる.従って,稲作農家の経営規模をとらえる基本的な指標は耕地面積であり,適正経営規模の大きさは地域,生産農家の経営条件によって異なる.遼寧省海城市の農家の適正経営規模は134〜360aと確認された.それは適正経営規模の幅である.中国における,農業の適正経営規模を推進する政策は10年前に打ち出された.しかし,今でも数多くの地域では,農業経営はまだ零細である.海城市では,計測結果により16.2%の農家経営が適正経営規模(134a〜360a)である.一方,83.8%の農家の経営規模が狭小である.その原因として,遼寧省海城市の状況により,経営規模の拡大には,次のような条件が必要であると考えられる.すなわち,第二次,第三次産業の発展→社会構造の柔軟性を保ちつつ,農業労働力の農外移転→農地流動化→農家の経営規模の拡大を図ることである.しかし,現状では,多くの複雑かつ困難な問題をかかえているため,農村の第二次,第三次産業の急速な発展は難しく,総人口13億人の7割以上ある農村人口の出稼ぎも確保されず,農地流動化は予定通りには進んでいない.中国農業部の調査によれば,1994年までに29の省(自治区,直轄市.チベット含まず)で適正経営規模(134aの耕地面積)を行う経営面積は600万ha余に止まり,農地面積の6.5%を占めるにすぎない.従って,農家の適正経営規模問題は中国の長期的課題でもある.適正経営規模は地域の自然や社会や経済等の条件によって異なっている.ここで計測した農家の適正経営規模は制約の伴わない理想的なものであるから,実現するには国によるいろいろな政策努力や個々の農家の経営努力が必要であると思われる.しかも耕種農業における規模拡大の問題は,中国のみならず東南アジアの農業発展にとって今後とも大きな課題でありつづけることは明らである.必ずしも十分な調査ができたわけではないが,遼寧省海城市の場合には農産物価格政策,農業技術水準と農業機械化の促進政策,耕地の所有権・利用権の移動政策等により農業適正経営規模の形成に有利である.さらに飯米供与,年金支給等も含めた村レベルにおける経済機能の維持・拡大により,農業労働力の離農が容易であったともいえる.他方,実勢地代の引き上げはむしろ規模拡大の結果であり,適正経営規模の創設は,地代の引き上げに先だって政策的に行われたというべきであろうが,こうしたことの現実的可能性を示したという意味で,中国にとどまらない重要な意義があるというべきであろう.農家の努力としては,農家自身の経営能力の増進,民間合作組織の形成等はその一例である.
  • ハッサン M., 藤目 幸擴, 松井 年行, 池田 敬, 奥田 延幸, 鈴木 晴雄
    原稿種別: 本文
    2001 年 8 巻 2 号 p. 7-15
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    ワサビの葉,茎,葉柄切片あるいはカルスを培養して,試験管内での器官形成を調べた.NAA(α-napthaleneacetic acid)にカイネチンあるいはTDZ(n-phenyl-N'-1,2,3-thidiazol-5-yl-urea or thidiazuron)を添加したMS培地(1962)で葉,茎切片あるいはカルスを培養すると,芽が形成された.培地に1あるいは2mg/lのBA(6-benzyladenine)とNAAが添加されていれば,カルスはどの部位を外植しても形成された.培地にBAとNAAが添加されていれば,茎切片あるいはカルスから芽状の組織が形成されたが,これはその後に高濃度のBAとNAAあるいはBAと2,4-D(2,4-dichlorophenoxyacetic acid)を培地に添加しても,発達しなかった.しかし幾つかの場合には,この芽状組織の形態に若干の変化が観察された.1mg/lBAと10mg/l NAAが添加された区で1例のみであるが,培養6ヶ月後に茎切片から1枚の葉が形成された.茎切片を培養した幾つかの区では,培地にNAAとBAが添加されていれば根は形成されたが,カルス組織からの根形成はみられなかった.茎切片を培養した場合にはNAAとともに広い濃度範囲のTDZあるいはBAが培地に添加されていれば,芽が形成されて,発達した.芽と根の両形成は培地に0.002あるいは0.02mg/lのTDZと1あるいは2mg/lのNAAが添加された場合に,もっとも促進された.カイネチンに比べてTDZが添加された場合には,芽あるいは根の形成がさらに促進された.
  • 中野 尚夫, 河本 恭一
    原稿種別: 本文
    2001 年 8 巻 2 号 p. 17-21
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    1988年〜1990年に,水田を畑状態に転換してダイズを栽培し,子実収量の経年的変化を,普通畑の作付け1年目のダイス収量との対比で検討した.普通畑の生育・収量は連作年数が長くなるに伴って低下した.これに対し,転換畑に栽培したダイズの生育・収量は,2作目で最も優れ,3作目も1作目より優れる傾向であった.このように転換畑において1作目の生育・収量が劣ったのは,前歴の水田状態の影響によって土壌水分が高く,生育の劣ったことが考えられた.周囲水田の影響を受けにくいブロックローテーション方式の田畑輪換においても,畑転換1年目には畑地化が不十分なことによる生育抑制が考えられるので,ダイス栽培1年で水田に戻すよりも2年程度栽培後に水田に戻す方がダイズの生産性において有利と判断された.
  • 津田 和久, 小坂 能尚, 堀野 修
    原稿種別: 本文
    2001 年 8 巻 2 号 p. 23-28
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    Enterobacter cloacae SM10はホウレンソウ萎ちょう病の発病を抑制する植物内生菌であり,インドールピルビン酸経路でインドール酢酸(IAA)を生産する.萎ちょう病に対するSM10の発病抑制効果におけるIAA生産能の影響について調査した.SM10のリファンピシン自然耐性菌株SM10Rを親株として用い,IAA生産能欠損株SM10RKはSM10Rのインドールピルビン酸脱カルボキシル酵素遺伝子にカナマイシン耐性遺伝子を挿入するMarker exchange法によって作出した.両菌株を処理したホウレンソウ種子をポットに播種して育成し,播種10日後に萎ちょう病菌を潅注接種した.接種20日後にホウレンソウ地上部の発病状態を調査し両菌株の発病抑制効果を比較したところ,無処理対照区と比べSM10R処理区では発病株率及び発病程度が有意に低く抑制効果が認められたのに対して,SM10RK処理区では抑制効果が認められなかった.これらの結果から,SM10のIAA生産能は萎ちょう病に対する発病抑制効果に必要であると考えられた.
  • 宮部 芳照, 末吉 武志, 柏木 純孝
    原稿種別: 本文
    2001 年 8 巻 2 号 p. 29-33
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    農産物残さの有効利用法の確立を目的とし,ロータリ耕による甘藷つるのすき込み実験を行い,ピッチとすき込みつるの量,地表面に残ったつるの量,ロータリ巻付きつるの量,移動つるの量,つるのすき込み深さ,つるの切断長および有効すき込み率の関係について検討し,以下の結果を得た.1)すき込みつるの量,ロータリ巻付きつるの量は生つる,乾燥つるともピッチの増加に伴い減少する傾向で,地表面に残ったつるの量は逆に増加する傾向であった.移動つるの量はピッチの増加に伴い,乾燥つるは増加する傾向であった.2)つるのすき込み深さ毎の量は,生つる,乾燥つるともピッチの増加に伴い減少する傾向であった.また,いずれのピッチでも深さO〜10cmの量が最も多かった.3)つるの切断長毎の量は,生つるの場合,いずれの切断長もピッチの増加に比例し,乾燥つるは逆に減少する傾向を示した.4)有効すき込み率は生つるで31〜33%であり,ピッチによる影響はほとんどなかった.乾燥つるは33〜64%でありピッチの増加に伴い移動つるの量が増加する傾向であった.
  • 奥田 延幸, 藤目 幸擴, Mahmood HASSAN, 松井 年行, 鈴木 晴雄, 柳 智博
    原稿種別: 本文
    2001 年 8 巻 2 号 p. 35-41
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    温暖季疏菜のシソ,トマト,ナス,カボチャ,ユウガオとゴボウの6種類を2〜4週間水耕して,地下部と地上部の生育に及ばす液温の影響について調査した.1.供試疏菜によって根の伸長適温に差が認められ,実験終了時における供試疏菜の根の伸長適温は約23°〜30での範囲にあった.その中で,カボチャとユウガオは最も低く,シソとゴボウはそれよりも高く,ナスとトマトは最も高かった.2.液温を変えてから3〜7日ごとに調査した結果,カボチャとユウガオでは生育に伴って根の伸長適温が低下した.3.平均液温と最大根長との間には二次の相関が見られた.平均液温と最大根長から求めた伸長適温の推測値も種類によって異なった.4.液温の影響は根重増加にも認められた.実験終了時における根の乾物重の増加適温は,ゴボウ(18.1℃)が最も低く,カボチャ(22.9℃),トマトおよびシソ(25.3℃)はそれよりも高く,ユウガオ(29.8℃)は更に高くなり,ナス(33.6℃)は最も高かった.5.さらに,液温の影響は葉面積にも認められ,葉面積と根の乾物重あるいは最大根長との間には正の相関が認められた.
  • 浜田 年騏
    原稿種別: 本文
    2001 年 8 巻 2 号 p. 43-55
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    中国中山間地域は,優良子牛産地を形成してきたが,近年,飼養農家の激減と規模拡大の停滞により産地維持が困難となりつつある.本研究は,中山間地域のもつ農用地資源を活用した肉用牛経営について以下の課題を設定し考察し,中国中山間地域の肉用牛経営の展開方向を明らかにした.課題1は,肉用牛経営の経営構造を規模別にモデル化し,農用地資源利用量と規模・技術の関連性をみた.課題2は,低利用地や放棄・荒廃農用地等の利用と技術革新や経営展開との関連性を見た.課題3は,農用地利用型肉用牛経営はどのような多面的機能を発揮しているかをみた.以上の考察から,中山間地域における農用地資源利用型肉用牛経営の持続的発展に関する諸課題を提示した.
  • 青木 宣明, 植田 尚文, 伴 琢也, 内藤 整, 葉 玉紅
    原稿種別: 本文
    2001 年 8 巻 2 号 p. 57-62
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    鉢植えブルーベリーにおける施肥,摘心並びに遮光処理が新梢伸長と花芽着生に及ぼす影響を調査した.1.挿し木の活着率挿し木活着率はタイプ,品種に関係なく,また休眠枝や緑枝挿しに関わらず,高かった.2.施肥量と施肥時期の影響元肥及び追肥区とも,施用量の増加に伴い花芽数が増加した.花芽着生数は緑枝挿しより休眠枝挿しにおいて,また'ノースランド'より'ティフブルー'において,多かった.なお両品種とも,8月追肥区の花芽数は最高を示した.3.摘心と遮光の影響強摘心は新梢の伸長量を減少させたが,花芽数の増加には影響しなかった.'ウッダード','ノースランド'の両品種とも遮光は新梢伸長より花芽着生への影響が顕著で,花芽数は遮効率の増大に伴って著しく減少した.品種間の比較では,ラビットアイタイプの'ウッダード'は花芽数や新梢数が多く,樹高が低く,また開張性を示すなど,"鉢花"に適している.
  • 大西 政夫, 久冨 陽子, 山根 研一, 中野 尚夫, 若月 利之, 小林 和広
    原稿種別: 本文
    2001 年 8 巻 2 号 p. 63-68
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    The spatial variation of rice productivity in a large paddy field (58 × 30m) made by merging 3 small terraced fields in 1964, was investigated. The small fields were merged by moving a large amount of top soil from the highest latitude of terraced field toward the lowest one. Yield, total soil nitrogen and carbon concentrations in the deep soil layer tended to increase with descending relative latitude of terraced fields before merging. Spatial variation of yield was smallest in the site which had been at the lowest latitude in the terraced field. These results indicated that rice productivity at each place in a field is strongly affected by the merging of fields even after 36 years had passed.
  • 福森 武, 松島 秀昭, 河野 元信, 毛利 建太郎
    原稿種別: 本文
    2001 年 8 巻 2 号 p. 69-75
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    籾乾燥機の高性能化を目指し,籾殻と玄米との間の水分移動に着目して,ミクロ的に水分移動を考え,乾燥速度を向上させる方法について検討した.間欠乾燥方式は,籾殻と玄米の水分移動を種々の条件に設定できる.籾粒内の水分差並びに穀温が籾殻と玄米との間の水分移動速度に及ぼす影響を明らかにして乾燥の能率向上を検討した.この水分移動を水分移動定数としてとらえ,穀温および籾殻・玄米間の水分差との間に指数的な関係があることを明らかにした.また,水分移動定数を用いたシミュレーション手法でテンパリング時間中の玄米水分を予測することができた.
  • 田野 信博
    原稿種別: 本文
    2001 年 8 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    In this paper, a visualized and dynamically displayed method of AMeDAS data is applied to weather analysis in the Hokuriku District, namely Toyama, Ishikawa and Fukui Prefectures. In these three prefectures, there are 29 measurement points when measuring the four meteorological elements (air temperature, wind direction-wind speed, sunshine duration and precipitation). In order to clarify the relationship of the weather and geographical features more precisely 50m and 250m-mesh digital map data of the Geographical Survey Institute of the Ministry Construction were used to display the background. Therefore, the possible sunshine durations in this district were calculated from the declination angles of the sun and by the longitude and latitude using sunrise and sunset time data of the National Astronomical Observatory(Tokyo). The other details are almost analogous to the report of Part 2. From this analysis, the relationship of meteorological elements and hourly behavior of the weather phenomena become visually evident. However, it was found that an actual sunshine duration was very dependent not so much on possible sunshine duration, but on natural features and the quantity of clouds obscuring these areas.
  • 廣瀬 友二, 滝浪 雄一, 田邊 猛
    原稿種別: 本文
    2001 年 8 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    静岡市井川地区は,標高が高く,茶栽培の限界地とも言われ寒害,春先の凍霜害を考慮してこれまで春整枝が主体であった.そこで,二番茶摘採後に整・せん枝処理を行い,その後の秋整枝または春整枝との組合せが翌春一番茶の生産に及ぼす影響について検討した.各整・せん枝処理区において,萌芽は春整枝区に比べ秋整枝区が早く,新芽の形質は,摘芽長,葉の大きさでは春整枝区が大きかった.摘芽数は秋整枝区が多かった.百芽重では春整枝区が大きく,整・せん枝の組合せでは慣行・秋整枝区が小さく,浅刈り・春整枝区で大きかった.新芽の芽の揃いは秋整枝が良い傾向がみられた.二番茶摘採後の整・せん枝処理と整枝時期を組合せた場合,新芽生育・収量の差は小さくても収穫時期,収量構成要素が変化に富んだ.三番茶を摘採しない冷涼地域においては,二番茶摘採後の整・せん枝の程度と整枝時期を組合せることによって,凍霜害を回避しつつ安定した生産が可能であり,収穫作業の緩和にも通じると考えられた.
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