農業生産技術管理学会誌
Online ISSN : 2424-2403
Print ISSN : 1341-0156
6 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 小林 和広, 植木 忠, 今木 正
    原稿種別: 本文
    1999 年 6 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    窒素追肥上,最も重要な幼穂形成期での稲体地上部窒素保有量(Ng)を株体積と葉緑素値(SPAD)あるいは群落葉色から診断する技術を多様な施肥方法間で応用できるかを調査した。1.株周(L)と草丈(H)から求めた株体積(L^2H/4πr)によって最高分げつ期から穎花分化後期までの地上部乾物重を精度高く予測できた。2.完全展開第2葉のSPADあるいは群落葉色から幼穂形成期の地上部窒素濃度を逆推定できた。3.株体積と完全展開第2葉あるいは群落葉色の積から幼穂形成期の地上部Ngを逆推定できた。
  • 田野 信博
    原稿種別: 本文
    1999 年 6 巻 2 号 p. 7-13
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    本報では,昨今の気象情報需要の高まりに合わせてパソコンによるアメダス・データの利用法を紹介するとともに,気象庁累積時日別値データ(磁気テープ)の日集計値と同観測平年値を用いて1993〜1996年まで4年間の石川県の気象特性を解析した。冒頭でも述べたように,営農計画の様々な局面での意思決定に気象情報は不可欠となり,アメダス・データもCD-ROMの形で手に入るようになった。また,これを処理するパソコンも営農支援ツールとして普及の途にある。しかし,時日別値データはデータ量の多さもあってバイナリ形式で収録されているため,読み出しプログラムは各自で作成しなければならない現状である。筆者らも1997年からはWindows上のコンパイラ言語であるWatcom Fortran77(ソフトボート社)を使って処理を行っているが,本稿のプログラムと互換性があり,ほぼそのまま使っている。最後に,石川県を例にした解析結果の要約を述べる。本論文で取り上げた1993〜1996年は異常気象が多いと言われる昨今でも極めて特異な期間と言え,各地で発生した災害ばかりでなく農業生産にも大きな影響を与えた。特に1993年と1994年は冷夏と猛暑を繰り返し,統計データから見る限り水稲生産の作況指数は気温や降水量の変動率と比べて小さいようにも見える。しかし,1993年の全国的な凶作は,我が国の米備蓄量とも関係して国民に深刻な食糧問題を提起した。水稲生産技術の進んだ今日にあっても気象と農業生産は不可分の関係にあり,今後各農家が気象状況の迅速な把握と正確な予測知識を身に付け,更に精細な地域気象観測システムを整備して行くことが重要と思われる。
  • 田野 信博
    原稿種別: 本文
    1999 年 6 巻 2 号 p. 15-20
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    本報では,アメダス本庁累積時日別値磁気テープデータからMS-DOSファイルに変換した気象4要素の時系列データを,パソコンのグラフィック画面に視覚化表示する方法について述べた。特に,(1)川島が発表した視覚化表示のための動的表示プログラムをF-BASIC386に書き換え,コンピュータの対応機種を広げる,(2)背景地図に数値地図「1kmメッシュ標高データ」を用い,地形と気象の関係を把握する,(3)経時変化の表示画像から解析用の画像ファイルを作成するなどの改良を加えた。なお,本研究ではTOWNS-OS上のプログラミング言語であるF-BASIC386を用いて動的表示プログラムを記述し,解析用の出力画像をWindowsパソコンで印刷出力する方法を採った。Windowsパソコンのプログラミング言語には,Visual Basic(以下略してVB)やFortran77,C/C++等がある。この中で比較的DOS-BASICとよく似た命令体系を持つVBはフォームと呼ばれる「台」の上にさまざまな部品を配置し,各部品に独立した機能を持たせたプログラムの作成が可能である。しかし,VBはVBA(Visual Basic for Application)としてExcelやAccess,Word等のOfficeアプリケーションの定型処理を自動化する目的に使われる方が一般的で,本研究のようなプログラム処理には向いていない。むしろよく似た処理体系のFortran77やC/C++の方が適していると考える。前報でも述べたように,アメダス・データのCD-ROM化に伴い,当研究室でも最近はWindows95(98)に搭載したWatcom Fortran77でデータの読み取り処理を行っている。従って,将来は動的表示プログラムの他言語への再移植も検討している。
  • 田野 信博
    原稿種別: 本文
    1999 年 6 巻 2 号 p. 21-26
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    本報では,F-BASIC386用に開発したアメダス・データの動的表示プログラムを,1994〜1995年度データに適用した表示画像の中から季節を代表する4要素の時間画像を抽出して考察を加えた。前述したように,1994年度は太平洋高気圧の早い強まりと勢力持続により,春先から夏にかけての異常小雨と夏期の記録的な猛暑が示す特異気象の1年であった。このため,本報でも特徴的な画像の多い1994年度を中心に解析した。プログラムの開発から表示解析までの結論を要約すれば,次のようである。1)アメダス・データの動的表示法は,個々の観測点における気温や風向・風速,日照時間,降水量の気象4要素の経時変化がダイナミックに表現され,気象変動の状況把握が極めて容易になる。これらの結果は,天気概況の把握や予測にも生かせる。2)パソコンのグラフィックス機能を活用して,数値地図標高データをアメダス・データの表示背景に使用すれば,気象と地形との相関関係が明確になる。現在,当研究室ではメゾスケールでの気象情報を得るため気象ロボットによる観測を行っている。今後は,これら観測値のリアルタイム表示に本研究の成果を生かして行きたいと考えている。終わりに,本プログラムの改良には農水省の川島茂人氏のご指導とご支援を受けた。記して謝意を表する。
  • 持田 圭介, 小豆沢 斉
    原稿種別: 本文
    1999 年 6 巻 2 号 p. 27-32
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ'新水'は早生品種であり,施設栽培によって果実肥大が多少促進され,早熟性の利点をさらに高めることができる。しかし,'新水'は施設栽培を行っても,糖含量はそれほど高まらない。本実験では,'新水'の収穫前6週間CO_2施用をすることで,どの程度果実の肥大や糖含量を高めることができるかをみる目的で,純同化率,器官別乾物増加率を調査した。CO_2施用はLPガス燃焼法で行い,天井のみ被覆したハウス内の棚面付近のCO_2濃度を,6月3日から7月14日まで(毎日8時〜17時)500〜600ppmに維持した。1.平均果重はCO_2施用区で307gであり,対照区より約30g有意に優れた。2.CO_2施用区における側枝単位の乾物増加量は約93gで,対照区より45%多く,果実の乾物増加量は80gで対照区より49%多かった。CO_2施用区における側枝単位の乾物増加率は約176%で,対照区より56%高く,果実の乾物増加率も施用区が約130%で,対照区より87%高かった。3.純同化率(NAR)はCO_2施用区が3.45で,対照区より約45%有意に高かった。4.果実糖度はCO_2施用区が13.6%で,対照区より1.7%有意に高く,特に施用区のショ糖含量が対照区の2倍以上高かった。以上の結果,天井のみ被覆した開放ハウス内でも,送風ダクトを均一に配置することで棚面付近のCO_2濃度を500〜600ppm程度まで高めることができた。また,側枝単位の乾物増加率が約176%まで上昇し,果実のショ糖含量は対照区の2倍以上高まったことから,収穫前のCO_2施用はナシ'新水'の品質向上に有効であると考えられた。
  • 拉西 徳吉徳, 永木 正和
    原稿種別: 本文
    1999 年 6 巻 2 号 p. 33-39
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    本稿では酪農経営において10年間の技術効率性を計測することにより,酪農経営の技術効率性変化と要因を考察した。その結果,技術効率性が高いAグループ,技術効率性が著しく改善されているBグループ,技術効率性が不安定なCグループ,技術効率性が低下し続けているDグループの4のグループが存在することが明らかになった。そして,酪農経営の発展の方向性をとしてAタイプとBタイプの2類型を識別した。また,前者は自給飼料依存型であり,後者は流通飼料依存型であると考えられる。CとDグループは技術効率性に影響する要因が固定化され改善されていないこと,高泌乳追求型技術の導入が技術効率性に負の影響を与える新しい要因が形成されていたことを指摘した。さらに,経営者能力と営農情報が深く関与していることが分析対象農家のアンケート調査から明らかとなった。
  • 中野 尚夫
    原稿種別: 本文
    1999 年 6 巻 2 号 p. 41-46
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2019/04/16
    ジャーナル フリー
    隣接した2水田の南北畦畔に生育する野草を6年間にわたり,年6〜8回(多回刈り区),年4〜5回(中回刈り区),年2〜3回(少回刈り区)刈取る区を設け,刈取り頻度と植生の変化および畦畔強度との関係を検討した。刈取り処理開始年の植生は,南畦畔ではバヒアグラスが優占草種であったが,北畦畔では多回刈り区でハマスゲ,中・少回刈り区でバヒアグラスが優占草種で,この他ギシギシ,ヨモギ,カタバミ,スギナの割合も高かった。多回刈り区では,経年的にハマスゲの被度が低下し,再生力に優れるバヒアグラスの被度が高くなった。多回刈りにおける再生力の低下はバヒアグラスなどにもみられ,根系の劣化による畦畔の軟弱化,崩壊が懸念された。一方少回刈りでは,経年的にバヒアグラスなどの短草型草種の被度が低下し,チガヤの被度が高くなり,長草型草種の優占化がみられた。これに対し中回刈りでは,植生の変化がほとんどみられず,畦畔の軟弱化も認められなかった。これらのことから年4〜5回程度の刈取りが畦畔植生そして強度維持に有利と判断した。
feedback
Top