摘採ないし整枝を起点とするチャ芽内部の葉原基の発育は,開葉,伸長,摘採時期および製茶品質を決める重要な要因である.しかし,チャ(var. sinensis)葉原基の発育過程および開葉,側芽長との関係について年間を通して調べられた例はない.そこで年間を通したチャ芽内部の葉原基発育過程,葉原基の発育と開葉および側芽の伸長との相互関係を明らかにするために. 1999年10月から2000年10月にかけて,成木茶園'やぷきた'を用いて研究を行なった.1.一番茶の開葉前(開葉率60%)および二番茶以降の茶期において,側芽長と全葉数(幼葉数+開葉数)との間に対数関係が認められ,幼葉数は,年間を通してパラメータ値の異なる2つの対数式,IL=a+b^*ln(BL)-EL {IL:幼葉数,BL:側芽長,EL:開葉数, a,b:パラメーター値(一番茶時はa=9.313, b=2.076,二番茶以降はa=7.850, b=1.403)}により表わされることが明らかになった.2.一番茶期の開葉後(開葉率100%)において,側芽長と全葉数との間に直線関係が認められ,幼葉数は1つの直線式,IL=a+b*BL-EL{IL:幼葉数,BL:側芽長,EL:開葉数,A,b:パラメーター値(a=9.680,b=0.255)}により表わされることが明らかになった.3.開葉直前の幼葉数は,一番茶期の9.6枚を除き6.4〜7.5枚,出開き芽の幼葉数はいずれの時期も3.0〜3.9枚と,年間を通して限られた範囲内に収束することが明らかになった.以上,側芽長と幼葉数に開葉数を加えた全葉数との間には,全茶期を通して対数ないし直線関係が存在すること,開葉時および出開き時の幼葉数は,一番茶期を除きほぽー定であることが明らかになった.
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