ロータリ耕うん部の動力伝達機構の一部として重要な役割を果たすスプロケットチェーン機構について,長期間の使用に伴うチェーン伸びの影響を考慮した幾何学的分析を行った.また,チェーンスプロケット部での騒音振動を軽減し,安定した駆動を支える目的で使用されているチェーンテンショナについて応力測定を行った結果,以下のようなことが明らかとなった.1.スプロケットとチェーンの幾何学的関係を詳細に検討してチェーンの必要長さを与える式を示した.また,供試スプロケットチェーンシステムにおいては,使用開始前の伸びのない場合で13.97mmの押しつけ量が必要であること,また,長期間の使用により1.5%の伸びが生じた場合には53.11mmの押しつけ量が必要であることを示した.2.耕うん作業時においては,耕うんピッチが24.7cmから65.6cmへと大きくなるとテンショナの平均応力は3-5%減少していた.また,耕うんピッチが6cmから9cmに増加すると平均応力は4-5%減少していた.すなわち,耕うん抵抗が大きくなるとテンショナの平均応力が減少した.その原因は,耕うん抵抗により張り側の張力が大きくなってゆるみ側の余裕長さが大きくなり,テンショナの変形量が小さくなるためと考えられた.3.枕時旋回を想定して耕うん軸を回転させながらロータリを上昇させ,チェーンケースが傾斜した場合のテンショナへの影響を検討したところ,傾きが15°までは平均応力はあまり変化しないが,傾きが20°になると急激に上昇した.これは,テンショナがチェーンの重量を支える状況が発生することによると考えられた.チェーンケースの傾きはテンショナの応力に大きな影響があることを明らかにした.
抄録全体を表示