農業生産技術管理学会誌
Online ISSN : 2424-2403
Print ISSN : 1341-0156
14 巻, 1 号
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  • 玉置 雅彦, 谷本 昌太, 勝場 善之助, 土屋 隆生
    原稿種別: 本文
    2007 年 14 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    広島県の独自酒造好適米品種である八反系品種は,八反草を起源とする.清酒製造において,原料米が有する玄米特性や酒造適性は重要な要素であり,毎年安定した品質の清酒生産のためには,各品種の玄米特性および酒造適性の年次間変動を把握しておく必要がある.そこで本研究は,八反草を起源とする八反系6品種を対象として,各品種の玄米特性および酒造適性の年次間変動を明らかにすることを目的とした.広島県で八反草を起源として育成した八反系6品種を,2002年-2004年に栽培・収穫した材料を実験に供試した.玄米特性および酒造適性の多くの特性において有意な品種間差異が認められたが,年次間および品種と年次の交互作用には有意な差異は認められなかった.八反系6品種の玄米特性および酒造適性の各特性値の年次間変動は小さいことから,これらの各特性は八反系品種固有の特性であることが認められた.
  • 上西 愛子, 野村 研, 北浦 健生, 河田 隆弘, 北 宜裕
    原稿種別: 本文
    2007 年 14 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    ホウレンソウのシュウ酸塩と硝酸塩濃度の低減化栽培技術を開発するため,品種,窒素施用量および潅水量の差がシュウ酸塩と硝酸塩濃度に及ぼす影響について検討した.その結果,植物体の草丈,最大葉の葉柄葉身比,葉緑素含有量,1株重およびシュウ酸塩濃度は品種間に有意差が認められ,特にシュウ酸塩濃度は品種間差異が大きかった.一方,硝酸塩濃度は,品種間のみならず処理区間にも有意差が認められ,少窒素施用多潅水により有意に硝酸塩濃度が低下することが明らかになった.以上の結果から,シュウ酸塩濃度の低い品種を用いて,窒素施用量を半減するとともに,収穫前に追加潅水を行うことにより,品質を低下させることなくシュウ酸塩および硝酸塩濃度を低減できる可能性が示された.
  • 楊 志偉, 後藤 清和, 水野 英則, 岩澤 秀朗
    原稿種別: 本文
    2007 年 14 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    近年,普及が進んでいるラック式乾燥装置では静置式で穀物の厚層乾燥が行われる.前報において,籾の厚層乾燥における含水率の平均値および分布の状況を推測するシミュレーションプログラムを作成し,それを用いて乾燥過程に対する乾燥条件の影響を考察した.本報では,コスト削減に効果があるものの循環乾燥機では肌ずれ発生が多くなり品質の維持が困難な玄米乾燥に厚層乾燥を適用するための検討を行った.1)玄米乾燥として,通風乾燥と籾殻混合乾燥を行い,比較対照区として通常の籾通風乾燥を行った.通風条件は文献で提案されたものを適用した.2)変動する通風温度と湿度を多項式で近似してシミュレーションを行った結果,実際の乾燥過程をよく近似できることが確認された.3)玄米通風乾燥における胴割れ率および砕米率は籾対照区と比べてほとんど差がなく低い値で推移する.今回採用した通風状態であればそれらの問題はないと言える.4)高水分籾を脱ぷしてから行われる玄米乾燥は,籾通風乾燥に比べて肌ずれの発生が多い.しかし,本実験で検討した乾燥方法による肌ずれ率は循環乾燥機による場合よりも非常に低い値となる.5)玄米乾燥で仕上げられた玄米は籾乾燥の場合に比べて約1.5倍の脂肪酸度となる.玄米乾燥後2週間以内に精白することにより脂肪酸度の差はなくなり,玄米乾燥の可能性が確認された.また,精白米を無洗米化すると,脂肪酸度は精白米と比較してきわめて低い値で推移し,さらに品質維持に有効であることがわかる.6)各乾燥方法から得られた精白米の食味計値はほぼ同じ値を示し,この面からの玄米乾燥の問題はない.7)検討した玄米乾燥の2つの方法について,作業性を考慮すると玄米通風乾燥が優れていると判断した.
  • 今川 順一, 杉村 輝彦, 望岡 亮介
    原稿種別: 本文
    2007 年 14 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    カキ'刀根早生'の早期加温栽培では,着花数に年次変動がみられ,着花数が著しく少ない年には収量が激減する.そこで,遮光処理が花芽分化に及ぼす影響を調査するとともに満開期〜9週間後の日照時間,葉果比および総花芽数との関係を検討した.その結果,満開6〜9週間後の日照時間は花芽分化に影響を及ぼさなかったが,満開期〜6週間後の日照時間が少なくなると総花芽数は減少した.このことから,翌年の着花を確保するためには,その期間のハウス内の日照条件を改善する必要があると考えられた.
  • 堀井 幸江, 松村 篤, クルス アンドレ フレイリ, 石井 孝昭
    原稿種別: 本文
    2007 年 14 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    バヒアグラスを用いて,アーバスキュラー菌根菌,Gigaspora margarita胞子を短期間で簡便に生産する手法を確立するため,バヒアグラスの水ストレス状態や胞子生産の指標となる菌根菌生長促進物質量との関係,生産された胞子の発芽や発芽菌糸の感染力について調査した.その結果,短期間に多数のG. margarita胞子を生産するためには,ゼオライト土壌に栽植したバヒアグラスの葉の水ポテンシャルを-1.2MPa前後の水ストレス状態に陥らす方法が有効であることが明らかとなった.特に,37μmのナイロンメッシュ・シリンダーを用いた方法は,シリンダー外へ生長した外生菌糸から形成された胞子を採集でき,根や土壌などの夾雑物が極めて少ないきれいな胞子を容易に得ることができた.接種1か月後にはポット(直径24cm)当たり約26,000個,3か月後には約52,000個,5か月後には約50,000個の胞子を生産できた.新しく生産された胞子の発芽率は良好であり,感染力も充分であった.多数の胞子を生産した水ストレス処理区ではバヒアグラス根内のトリプトファンダイマー含量が高かった.このため、根内のトリプトファンダイマー含量は胞子形成の指標になることが示唆された.これらの結果は,今回開発した簡便な胞子生産技術が大型の胞子を形成する菌根菌にとっても極めて有効であり,菌根菌の活用場面を拡げる上で大いに貢献することを示唆している.
  • 廣瀬 友二, 名越 時秀
    原稿種別: 本文
    2007 年 14 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    傾斜地茶園における深さ60cmの耕うん処理が土壌環境に及ぼす影響と,強度の断根から如何に根群が再生するかを調査した.処理3年後においても土壌は膨軟に保持され,pHの低下やEC値の上昇が緩和された.処理区の細根数は総数で1.3倍,山側では1.5倍と多く,深さ60cmまでの各層に広く細根の分布が認められた.土壌保全の面から全面耕うんを避ける場合には,断根後の再生根量が多く,広範囲に分布した山側耕うんが有効であり,高い吸肥効率も期待できると考察した.
  • 三野 真布, 田中 常喜, 山本 すみ子, 山田 真也, 古谷 美佐子, 安倍 真
    原稿種別: 本文
    2007 年 14 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    キク(Dendranthema grandiflorum Kitamura)品種プレリュード・コーラルの形質転換系を確立するため、花弁を外植体とし、アグロバクテリウム法によるの形質転換を試みた。選抜マーカー遺伝子にネオマイシンリン酸転移酵素遺伝子(NPTII)とレポーター遺伝子にβ-グルクロニダーゼ(GUS)を用い、875外植体から7形質転換体を得た。6個体を調査し、NPTII遺伝子は全てに存在し発現したが、GUS遺伝子は4個体で確認され1個体で発現していた。しかし、この個体ではGUS酵素活性は検出できなかった。
  • 浜田 和俊, 長谷川 耕二郎, 北島 宣, 尾形 凡生
    原稿種別: 本文
    2007 年 14 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    カキ'平核無'および'大核無'成木を供試し,側枝への単年および2年連続の結縛処理が処理当年および翌年の生殖生長,栄養生長および果実品質に及ぼす影響を調査した.結縛処理当年では,'平核無'および'大核無'両品種において,連年結縛区および単年結縛区の着果率は対照区よりも高かった.連年結縛によって収穫果実の糖度が高まり,'平核無'では生育日数が短くなり,'大核無'では果実重が増加した.'平核無'の果実生長第1期における連年結縛区の乾物増加量は2年生枝でかなり少なく,乾物分配率は果実で顕著に増加した.単年結縛区の乾物増加量は新梢,葉,果実および2年生枝で多かった.連年結縛処理翌年では,両品種ともに新梢数が減少した.'平核無'で収穫期が遅れたものの,花数,着果率および果実品質には悪影響はみられなかった.以上のことから,単年結縛は側枝全体の乾物蓄積が促進されるのに対して,連年結縛は2年生枝乾物蓄積が抑制されて果実の乾物蓄積が増加することによって,結実安定,果実肥大および果実品質を向上させることが明らかとなり,栄養生長が旺盛な側枝への連年結縛は果実の安定生産に有効なことが示唆された.
  • 岩崎 浩一, 末吉 武志, 田中 史彦
    原稿種別: 本文
    2007 年 14 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    ロータリ耕うん部の動力伝達機構の一部として重要な役割を果たすスプロケットチェーン機構について,長期間の使用に伴うチェーン伸びの影響を考慮した幾何学的分析を行った.また,チェーンスプロケット部での騒音振動を軽減し,安定した駆動を支える目的で使用されているチェーンテンショナについて応力測定を行った結果,以下のようなことが明らかとなった.1.スプロケットとチェーンの幾何学的関係を詳細に検討してチェーンの必要長さを与える式を示した.また,供試スプロケットチェーンシステムにおいては,使用開始前の伸びのない場合で13.97mmの押しつけ量が必要であること,また,長期間の使用により1.5%の伸びが生じた場合には53.11mmの押しつけ量が必要であることを示した.2.耕うん作業時においては,耕うんピッチが24.7cmから65.6cmへと大きくなるとテンショナの平均応力は3-5%減少していた.また,耕うんピッチが6cmから9cmに増加すると平均応力は4-5%減少していた.すなわち,耕うん抵抗が大きくなるとテンショナの平均応力が減少した.その原因は,耕うん抵抗により張り側の張力が大きくなってゆるみ側の余裕長さが大きくなり,テンショナの変形量が小さくなるためと考えられた.3.枕時旋回を想定して耕うん軸を回転させながらロータリを上昇させ,チェーンケースが傾斜した場合のテンショナへの影響を検討したところ,傾きが15°までは平均応力はあまり変化しないが,傾きが20°になると急激に上昇した.これは,テンショナがチェーンの重量を支える状況が発生することによると考えられた.チェーンケースの傾きはテンショナの応力に大きな影響があることを明らかにした.
  • 川嶋 浩樹, 野中 瑞生, 長崎 裕司
    原稿種別: 本文
    2007 年 14 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    傾斜ハウスにおける環境制御技術を開発するために,換気または加温による温度変化を平坦ハウスと比較することにより,傾斜ハウスの温度特性についての基礎的知見を得ようとした.側窓換気によるハウス内の温度変化から,傾斜ハウスは平坦ハウスより換気能力に優れると考えられた.傾斜ハウスを密閉すると温度勾配が発生した.傾斜ハウス内の温度勾配は,側窓換気によりほぼ解消された.加温機で一方の妻面から送風すると,平坦ハウスではハウス内に温度差が生じたのに対して,斜面下方から送風した傾斜ハウスでは温度分布はほぼ均一であった.傾斜ハウスにおいて加温時に循環扇で斜面下方へ向かって送風すると,循環扇付近とその斜面上方では温度が低下し,斜面下方では上昇する傾向が認められた.
  • 川嶋 浩樹, 野中 瑞生, 長崎 裕司
    原稿種別: 本文
    2007 年 14 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    中山間地域の傾斜畑に対応して開発した平張型傾斜ハウスについて,夏期高温時における換気時のハウス内温度環境について基礎的知見を得ようとした.平張型傾斜ハウスは,夏期高温時におけるハウス内外の温度差がアーチ型傾斜ハウスより小さく換気性に優れた.平張型傾斜ハウスを段畑に設置する場合,圃場の段差部分で屋根に段差を設け,その段差部分に中央換気窓を設置することで効率よく換気を行うことができた.中央換気窓が閉鎖された場合には上段ハウスの温度が上昇してハウス内に温度較差が生じたのに対して,中央換気窓が開放されるとハウス内の温度はほぼ均一になり,夏期高温時でも外気温近くまで低下した.
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