近年,直売所では農産物の品目や数量の安定的な確保が課題となっている.そこで,本稿では,直売所における主力品目を担う出荷会員の出荷行動の特徴を明らかにし,主力品目における出荷会員の組織化について検討した.分析結果によれば,T農協管内では直売所の集荷形態からみると,農協等の直売所運営主体と出荷会員の両者において事前の生産・出荷情報が把握できていないため,品揃えが安定していないと考えられる.直売所の品目に注目すると,各直売所において共通の品目が主力品目となっていることが確認された.そして,直接出荷の集荷方法を採用する直売所では,これらの品目については,直売所近郊の出荷会員の占める量が高い割合を占めている.これらの出荷会員において,主力品目当たり販売高に対し,1ヶ月当たり販売量と販売期間,もしくは単価が影響していることが明らかになった.また,品目選択の集中や立地条件に応じた出荷調整は実施されていない.これらのことから,直売所での品揃え強化のためには,運営主体が情報収集機能を有すること,出荷会員の出荷行動に応じた組織化を選択することが有効であると考えられ,組織化に向けた具体的方策について提起した.
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