落葉果樹であるブドウの芽の休眠打破剤には石灰窒素,シアナミド剤が広く使われてきたが,使用条件によっては人体に有害な場合もある.そこで,人体に毒性の低い希少糖での休眠打破効果について調べた.休眠の深い野生種クマガワブドウの切り枝に希少糖のD-プシコース浸漬処理を行ったところ,発根は見られなかったが,休眠打破効果が認められた.自発休眠期に,1節に調製した'ネオ・マスカット'の切り枝でD-プシコースの浸漬処理と塗布処理を比較したところ,塗布処理の方が休眠打破効果は高かった.'マスカット・オブ・アレキサンドリア'の自発休眠期と他発休眠期に4種類の希少糖(D-プシコース,L-プシコース,L-フルクトース,D-アロース)を芽に塗布処理したところ,自発休眠期ではD-プシコース,D-アロース, L-フルクトースが萌芽を促進した.他発休眠期には,処理による明確な影響は見られなかった.以上の結果より,希少糖の中には自発休眠の打破効果が認められるものもあり,人と植物に生理障害のない新たな休眠打破剤としての可能性が考えられた.
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