農業生産技術管理学会誌
Online ISSN : 2424-2403
Print ISSN : 1341-0156
13 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 楊 志偉, 後藤 清和, 水野 英則
    原稿種別: 本文
    2006 年 13 巻 2 号 p. 50-56
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    近年,普及が進んでいるラック式穀物乾燥施設は,乾燥コンテナを用いた厚層乾燥方式となっている.本方式は個別処理であるため,運転の簡便性やトレーサビリティの面から有効であるが,一面,厚層乾燥の欠点である乾燥むらが発生する.本報では本方式における運転や空気条件の最適化を検討するために,厚層のシミュレーションプログラムを開発した.厚層乾燥においては,乾燥むらを抑制するために時折攪拌,混合が必要となり,この操作をプログラムに組み込んだ.また,乾燥むらを考察するために,乾燥中の水分分布を計算できるように考慮した.堆積高さが450mmの乾燥装置を用いて種々の条件で乾燥実験を行い,シミュレーションを行う時の平衡含水率乾燥定数および風量の測定値に適当な一定の数値を乗ずることにより,両者の過程をほぼ一致させることができた.乾燥条件を入力することにより穀粒水分の平均値および分布状態を計算できるので,熱エネルギー効率の向上や攪拌,混合による乾燥むらの抑制を検討できる.計算の結果得られた知見は次のようである.i)通風空気温度を高くすると乾燥むらが大きくなるが,湿度の影響は小さい.ii)風量比が小さいほど,乾燥むらが大きくなる.iii)初期水分が低いほど乾燥むらは小さく仕上げることができる.また,初期の水分分布状態は仕上げ時の乾燥むらに影響を与えない.今後は,プログラムを適用して,各種の穀粒の厚層乾燥における通風空気状態や運転の最適化を検討する予定である.
  • スタムチャイ ワラヤ, 松井 年行, 奥田 延幸, 小杉 祐介
    原稿種別: 本文
    2006 年 13 巻 2 号 p. 58-63
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    レタス15品種の遺伝的関係を1回のPCRで12種類の12塩基プライマーだけと、それら2種類のプライマーを組み合わせて用いたRAPD法により検討した。DNAフィンガープリントの多型性によってレタスの品種は主要な3つのグループに分類された。主要グループは13品種で良く結球したクリスプヘッドレタス(6品種)即ち'TE242'と'しずが'、'シスコ'、'キングシスコ'、'袖ヶ浦'、'ブイレタス'、緑か赤色の葉のリーフレタス(5品種)即ち'レッドファルダー'と'晩抽レッドファイヤー'、'サマサンチュ'、'ダンスイング'、'レッドウエーブ'、と立ち葉で長いコスレタス'ロメインレタス'と大きいアスパラガスの様な茎で葉の短い茎レタス、'ステムレタス'を含んでいた。第2グループはコス品種'コスレタス'と第3グループの茎レタス'ケルン'を含んでいた。最も遠縁の遺伝子距離は、'コスレタス'と'ケルン'であり、一方最も近縁は、クリスプレタスの'TE242'、'しずが'、'シスコ'、と葉レタスの'レッドファルダー'、'パンチューレッドファイヤー'、間に認められた。
  • 印 炳賤, 佐藤 公宣, 稲本 勝彦, 土井 元章, 森源 治郎
    原稿種別: 本文
    2006 年 13 巻 2 号 p. 64-69
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    バラ'アサミレッド(ローテローゼ)'の栽培時に植物への送風処理を行い,切花の収量,気孔特性,葉の蒸散ならびに品質保持期間に及ぼす影響を検討した.送風処理を行ったバラは,特に温室内が高湿度条件となる冬季において対照区と比較して収量が増加する傾向を示した.送風処理区では対照区と比較して気孔径が小さくなる傾向が認められた.冬季において収穫後の蒸散速度は,送風区において対照区に対して低い値を示した.また,送風区では対照区に比べてベントネックの発生が遅くなり,品質保持期間が長くなった.送風によって葉面境界層が薄くなるために栽培中のCO_2吸収と蒸散が促され,光合成の促進と気孔の小型化と開閉機能がもたらされると推察された.植物への送風処理は,収量の増加と品質保持期間の延長に有効な方法と考えられる.
  • ポンサアヌティン ティーラサク, 鈴木 晴雄, 松井 年行, 奥田 延幸
    原稿種別: 本文
    2006 年 13 巻 2 号 p. 70-75
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    本実験は,ハウス内外のマルチ下において,立性植被と伏性植被が地温と地温バラツキに及ぼす影響の違いを明かにすることを目的とした.地温は各実験区ともに10cm深の10点で測定した.実験区はマルチの有無の2通りに分け,それらを立性植被または伏性植彼のある区と,両植被のない区に設定し,計6区の実験区をハウスと露地それぞれに設置した.無植生,伏性,立性の3区間における地温バラツキの大小の関係は,圃場とハウスとで大きく変わらないが,全体的にハウスの方が圃場の場合よりも大きく生じた.2区間の地温高低を判定するために2区間の地温差に閾値を設定した.閾値による高低関係の変化を圃場とハウスとで比較した結果,ハウスにおける地温の高低判定には圃場よりも高い閾値が必要であることが示され,またハウスの閾値には植被の有無による影響は圃場の場合よりも小さかった.
  • 田中 史彦, 岩崎 浩一, 守田 和夫
    原稿種別: 本文
    2006 年 13 巻 2 号 p. 76-79
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    精白米の平衡含水率と吸湿速度係数に影響を与える因子について解析を行い,これらを推算する式について検討を行った.本研究で明らかになった知見を以下に示す.1)加湿空気の温湿度と精白米の初期含水率が平衡含水率に与える影響について検討し,これを推算する実験式を提示した.この実験式の実験データへの適合性は平均相対誤差で2.9%と高く,有用であることが明らかとなった.2)加湿空気の温湿度と精白米の初期含水率が吸湿速度係数に与える影響を解析する式として,半理論的な推算式を提示し,実験データとの適合性を検討した.その結果,推定値と実測値は平均相対誤差8.3%でほぼ一致した.以上,本研究成果は精白米の吸湿装置を設計・利用する上で基礎となる指針を与えるものである.
  • 田中 史彦, 菅原 晃美, 岩崎 浩一, 守田 和夫
    原稿種別: 本文
    2006 年 13 巻 2 号 p. 80-85
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    サツマイモのマイクロ波加熱過程における材料内部温度変化を明らかにするため,熱移動モデル解析による材料温度予測と走査型電子顕微鏡によるデンプン粒の状態観察を行った.その結果,以下の知見を得た.1)水分蒸発による収縮の影響を含む熱・物質移動モデルを構築し,材料内部温度分布変化および含水率の変化を予測した.走査型電子顕微鏡によるデンプン粒の観察の結果,デンプン粒が消失する糊化時間はモデル解析により予測できることが明らかとなった.2)最適な加熱調理を行うため,β-アミラーゼの活性により糖化が促進される温度域での温度制御について,シミュレーション法により検討を行った.表面温度を感知し,ON-OFF制御することによって均一加熱が可能であることを理論的に明らかにした.以上,本研究成果はサツマイモのマイクロ波調理装置を設計・利用する際の基礎となるものである.
  • 田中 史彦, 岩崎 浩一, 守田 和夫
    原稿種別: 本文
    2006 年 13 巻 2 号 p. 86-90
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    グリンピースの凍結過程における内部温度分布と凍結の状態を明らかにするため,相変化を伴う熱移動モデル解析による材料温度予測と凍結率の簡易推算を行った.その結果,以下の知見を得た.1)凍結による相変化を伴う熱移動モデルを構築し,数値解析によって内部温度分布変化を予測した.この結果,計算値と測定値は良く一致し,モデルの妥当性が検証された.2)流動層凍結器によるグリンピースの凍結曲線の傾きから凍結の進行を予測した.その結果,温度の低下とともに変化する凍結率の簡易予測が可能となった.以上,本研究成果は球状農産物の凍結の進行を予測し,凍結過程における農産物中の水の状態を知る際の基礎となる研究であり,凍結から貯蔵期間に至る適切な温度管理に有用な知見を与えるものである.
feedback
Top