近年,普及が進んでいるラック式穀物乾燥施設は,乾燥コンテナを用いた厚層乾燥方式となっている.本方式は個別処理であるため,運転の簡便性やトレーサビリティの面から有効であるが,一面,厚層乾燥の欠点である乾燥むらが発生する.本報では本方式における運転や空気条件の最適化を検討するために,厚層のシミュレーションプログラムを開発した.厚層乾燥においては,乾燥むらを抑制するために時折攪拌,混合が必要となり,この操作をプログラムに組み込んだ.また,乾燥むらを考察するために,乾燥中の水分分布を計算できるように考慮した.堆積高さが450mmの乾燥装置を用いて種々の条件で乾燥実験を行い,シミュレーションを行う時の平衡含水率乾燥定数および風量の測定値に適当な一定の数値を乗ずることにより,両者の過程をほぼ一致させることができた.乾燥条件を入力することにより穀粒水分の平均値および分布状態を計算できるので,熱エネルギー効率の向上や攪拌,混合による乾燥むらの抑制を検討できる.計算の結果得られた知見は次のようである.i)通風空気温度を高くすると乾燥むらが大きくなるが,湿度の影響は小さい.ii)風量比が小さいほど,乾燥むらが大きくなる.iii)初期水分が低いほど乾燥むらは小さく仕上げることができる.また,初期の水分分布状態は仕上げ時の乾燥むらに影響を与えない.今後は,プログラムを適用して,各種の穀粒の厚層乾燥における通風空気状態や運転の最適化を検討する予定である.
抄録全体を表示