アスパラギン結合型 (N-結合型) 糖鎖のプロセッシングに関与する特異的な糖水解酵素の阻害剤として、数多くの化合物が過去10年以上にわたって見い出されている。プロセッシングの過程のなかのグルコースやマンノースの除去を阻止するグルコシダーゼおよびマンノシダーゼの特異的阻害剤などがこれにあたるが、このような化合物は形の変わった糖鎖構造をもたらすことになる。これら化合物の多くは細胞培養で、糖タンパク質全体の機能に対してそれぞれの糖鎖部分がどれだけの役割を果たしているかを評価するのに広く用いられる。さらに、このような阻害剤は、多様な糖水解酵素をそれぞれ区別したり、これら酵素の精製の際にアフィニティーリガンドとして用いたりするのに有用な道具となっている。特に、α-マンノシダーゼ類に対して、上に述べたような使い方に適した強力でかつ特異的な阻害剤が知られている。このような阻害剤を用いれば、プロセッシングに関与するα1,2-結合特異的マンノシダーゼ (即ち、マンノシダーゼI)、GlcNAcMan
5(GlcNAc)
2基質からα1,3-およびα1,6-結合マンノースの両方を切り離すマンノシダーゼII、およびMan
9-4(GlcNAc)
2からα1,2-、α1,3-およびα1,6-結合マンノースのすべてを切り離す幅広い特異性のα-マンノシダーゼの三者をはっきりと区別することが出来る。このように、デオキシマンノジリマイシンあるいはキフネンシンはゴルジマンノシダーゼIを強く阻害するが、ゴルジマンノシダーゼII、アリルあるいはリソソームα-マンノシダーゼ、および広い特異性のマンノシダーゼを阻害しない。一方、スワインソニンおよびマンノスタチンAはマンノシダーゼIIを強く阻害するが、マンノシダーゼIあるいは小胞体α-マンノシダーゼには作用しない。加えて、新規阻害剤D-マンノラクタムアミドラゾンは化学合成された一般的なマンノシダーゼ阻害剤であり、他のα-マンノシダーゼに対する、有用でより特異的な阻害剤をデザインするのに役立つ手掛かりを与えるはずである。
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