前篇に於ては家兎の瞬膜が迷路反射性に運動を營む事實並に該運動に與る筋及び其司配神經を實驗的に證明せり. 即ち正常動物を1囘廻轉7-12秒の速度にて1-2囘廻轉するに瞬膜は廻轉中及び廻轉後に於て急速並に緩徐成分を有する收縮及び弛緩運動を規則正しく反復發來す而して一眼剔出動物を剔出眼側に廻轉する場合の廻轉中及び廻轉後運動の運動囘數及び持續時間等は健眼側に廻轉する場合の夫等と比較して著しき相違あり. 此相違は健眼の視覺を遮斷すれば剔出眼側及び健眼側廻轉の場合に生ずる總ての相違を呈することなきを以て廻轉性瞬膜運動は廻轉中及び廻轉後運動共に視覺により影響せらるゝを確認せしむ.
兩側迷路破壞動物に就て兩眼の視覺を遮斷して後左右兩方に廻輔するに瞬膜は廻轉中及び廻轉後に於て何等の運動をも發來せざるにより廻轉性瞬膜運動は前庭迷路性なるを確認せり.
廻轉性瞬膜運動は兩側大腦半球剔出により廻轉後運動の運動囘數及び持續時間等を稍々増大す. 又一側若くは兩側頸部交感神經節剔除により廻轉中及び廻轉後運動の運動囘數及び持續時間等に著明の變化を受くることなし.
次に廻轉性瞬膜運動は顔面神經, 滑車神經一側又は兩側外旋神經等を切斷するも何等の影響を受くることなく依然として切斷以前と同樣に出現せしむるも動眼神經の切斷は此瞬膜運動を消失せしむる事實, 及び瞬膜より上眼瞼擧筋を分離切斷すれば瞬膜は最早何等の運動をも發來せざるに分離切斷されたる上眼瞼擧筋は急速並に緩徐の兩成分を有する收縮及び弛緩運動を營む事實等により瞬膜の此運動は動眼神經により支配せらるゝ上眼瞼擧筋の作用により惹起せらるゝものなり.
後篇に於ては上眼瞼擧筋の迷路反射性運動に就て實驗せり上眼瞼擧筋が迷路の廻轉刺戟冷温刺戟及一側迷路破壞等により急速並に緩徐成分を有する收縮及び弛緩運動を規則正しく反復發來するを發見せり. 而して此上眼瞼擧筋の運動成分運動囘數及び持續時間等が同側の内直筋の運動の夫等と一致するを以て著者は更に内外直筋を其起始部より完全に切斷剔出して其等の筋の一部と雖も眼窩内に殘存することなからしめて其運動の傳搬を除外したる後上眼瞼擧筋の運動を描畫觀察して尚上記の運動を營むを證明して上眼瞼擧筋が此際内直筋と毫も關係することなく單獨に迷路性運動を營むものなるを確證せり.
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