終戦前後数年間にわたり各地でジフテリーの激増を呈し, 抗生物質は勿論の事, 治療血清すらも欠乏して相当の予後不良の患者を出した事は記憶に新たな所である. 併しその後各種状勢も恢復するにつれて本症も近年急速に激減の傾向をとりつゝあつた. しかるに昨年 (昭和30年), 殊に後半期に於て散発的ではあるが全国的小流行を見, 各地方会において2, 3報告されて居るものも散見される. それによると曾て抗生物質の使用されなかつた時代に於ける本症の経過, 併発症, 転機等は大分改善されたとは云え未だ本症が時に不幸なる転機及び併発症を伴う事を示して居る. これは各種抗生物質使用の陰にかくれた危険性の1つとしての警告と見るべきであろう.
こゝに当院耳鼻科に於て昨年入院治療を行つたジフテリー患者の統計的観察と一部細菌学的検索を試みた.
抄録全体を表示