私達が考案した“心因性めまい検出を意図した平衡試験”を用い, 頭頸部外傷例の平衡機能を検査し, 次の成績をえた.
(i) 頭頸部外傷117名を対象とすると, A型平衡失調を示したものは117名中25名 (21.3%) であり, B型平衡失調を示したものは117名中92名 (78.7%) であった. このことより, アドレナリン耐性を低下し, この薬剤の微量投与で平衡失調の出現又は増大をみるものの約20%は心因の関与するめまい (心身症型) である公算が大である.
(ii) むちうち損傷例では頭部外傷例に比べ, A型平衡失調を示す傾向がつよい.
(iii) 頭部外傷例の中では, 受傷時, 脳症状を示したものでは却ってA型平衡失調を出現する頻度が小である. これに対し, B型平衡失調出現頻度は受傷時脳症状を呈したものに有意に多い.
以上の成績とこれまでに私達が得た成績を参照とし, 次の結論をのべた.
(1) 心因の関与するあまい (心身症型) が形成される条件として, (イ) 経過中心理的ストレスにさらされ, 情動発現がおこりやすい環境下におかれること, (ロ) 受傷時脳障害が重篤でなく, 病変の経過中, 中枢神経系, とくに交感神経成分の活動亢進がもたらされやすい条件下にあることなどがあげられる.
(2) むちうち損傷例では (イ) (ロ) の条件が満足される傾向がつよいので, A型平衡失調が出現しやすい.
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