1) 本例は第四性病を有する35歳の男子に, 治療の目的にて「アンチモン」製劑たる「スチブナール」20cc宛を隔日に20囘静脈内に注射した所, 第20囘目の注射直後急激に嘔吐, 眩暈, 頭痛, 皮疹を來し, 踵いで右側第5, 7, 8腦神經炎が現はれた症例である.
2) 聽器障碍としては, 右側聽力が漸次減退し, 最初中毒症状が現れてより第18日目に聾に墜り, 右側前庭に於ては中等度の機能低下が認められ, 夫等は2ケ月後に於ても恢復の徴候が認められなかつた.
3) 本例に於ける多發性神經炎の原因は, 「スチブナール」中の「アンチモン」(Sb) に因る中毒と推斷される.
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