鶏胚ラギーナ基部の感覚細胞, 特にその神経終未の微細構造を経時的に電子顕微鏡にて観察した. 組織化学的にアセチルコリンエステレースの活性が, 光学顕微鏡的観察にて, 鶏胚10日目頃より, 神経節細胞のごく一部と, 感覚有毛細胞の蓋膜附着部よりの一部の細胞に認められたことにより, 鶏胚8日目頃, さらに12日目, 16日目のものを観察した. 神経終末は鶏胚8日目頃には観察できなかつたが, 鶏胚12日目頃になると, まず感覚有毛細胞体底部附近に, 周囲が数個の小胞でかこまれた, 約900Aの直径をもつSynaptic bodyが観察され, いわゆるPresynaptic bodyの出現がSynaptic membraneの形成に先行することを推論した. 鶏胚16日目頃になると, Synaptic membraneの形成, さらに感覚細胞底部の細胞膜に接した多数のシナプス小胞をもつ神経終末が観察され, これが遠心性神経終末と考えられた. 鶏胚ラギーナ基部の聴神経終末, すなわち求心性神終末, さらには遠心性神経終末は, 形態学的に鶏胚16日頃に完成するものと結論した.
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