正常モルモットに利尿剤 Furosemide と Glycerol を投与し, 蝸牛管内リンパ, 鼓室階外リンパ, 前庭階外リンパの各内耳液を採取して, 血清, CSFとともにNa, Kの微量定量を行ない次の結果を得た.
1. 正常耳の鼓室階外リンパ, 前庭階外リンパのNa, K濃度は, 血清, CSFも含め各々, 固有の電解質構成を示した.
2. Furosemide (15mg/kg) 静注で, Na濃度では, 鼓室階外リンパ, 前庭階外リンパの両外リンパに一過性の上昇が認められた. またK濃度でも両外リンパに上昇が認められた.
Na濃度の上昇は Furosemide の利尿作用により脱水が生じたものと考えられた.
3. Glycerol (1.0ml/kg) 静注で, Na濃度は, 鼓室階外リンパに一過性の上昇が認められた. K値では前庭階外リンパに上昇が示された.
4. Glycerol (50w/v,12ml/kg) 経口では, 両外リンパ, 蝸牛管内リンパに持続的な上昇が認められ, K濃度でも両外リンパ, CSFに上昇が認められた.
上記のグリセロール投与によるNa濃度の上昇は, 浸透圧効果にもとずく脱水によってもたらされたものと考えられた.
上記の条件で, 利尿剤 Furosemide と Glycerol を投与すると, 内耳液には脱水が生じることが判明した.
さらに, メニエール病 (内リンパ水腫) の診断という臨床の面からみると, 今回のグリセロールの経口投与の実験結果は, 臨床上, 内リンパ水腫症例に対するグリセロールテストの結果と時間的関係は一致することがわかった.
また, メニエール病の治療から考えると, 内耳液と血清の浸透圧差が長時間持続する経口投与の方が, 優利であることが示された.
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