日本森林学会誌
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105 巻, 9 号
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論文
  • 野口 麻穂子, 齋藤 智之, 酒井 敦, 青山 岳彦
    2023 年 105 巻 9 号 p. 291-297
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    低密度植栽は,植栽経費の削減につながる一方,林冠閉鎖の遅れに伴う競合植生の繁茂が植栽木の生育を妨げることが懸念されている。植栽密度がスギ植栽木と競合植生の成長,および両者の競合状態に与える影響を明らかにするため,異なる下刈り方法を含む東北地方の4カ所のスギ若齢人工林において,植栽木の樹高および樹冠幅,競合植生の高さ,植栽木と周囲の植生の競合状態を調べた。全刈りに加えて10年生時の除伐を行った11年生の林分では,植栽密度が植栽木の樹冠幅に負の影響を及ぼしており,植栽木間での競争が反映されていると考えられた。植栽密度と競合植生高の間には負の関係がみられたが,植栽密度が低くても植栽木は競合植生に覆われず,成林が見込まれる状態にあった。一方,筋刈りを行った6~7年生の林分では,植栽密度が低いと植栽木の樹高,樹冠幅とも小さく,競合植生に覆われている植栽木の割合も高かった。筋刈りでは,植栽密度が低いほど刈り残し部分の幅が広くなり,その部分で繁茂した競合植生によって植栽木が覆われ,成長が妨げられていると考えられた。

  • 宗岡 寛子, 白澤 紘明, 図子 光太郎, 鈴木 秀典
    2023 年 105 巻 9 号 p. 298-305
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    気候変動下の将来の林道災害発生件数を定量的に予測するためには,降雨因子に応じた林道災害発生頻度モデルが必要であり,その推定には長期かつ広域の林道災害データが必要となる。全国の林道で整備されている林道台帳は有効なデータソースとなり得るが,林道台帳からは個々の災害発生時の降雨因子の水準は特定できない。本研究では,路線・年ごとの合計被災箇所数のみが把握可能な林道台帳等の「解像度の低い」データから,降雨因子を説明変数とした林道災害発生頻度モデルを推定する手法を提示した。災害発生時の降雨因子が特定可能な富山県の過去21年間の林道災害データを用いて推定したモデルと,同じデータを林道台帳等と同等の路線・年単位の解像度に落としたデータを用いて提案手法で推定したモデルを比較したところ,最大24時間雨量100~400 mmの降雨イベントの下での災害発生頻度(箇所/km・回)の期待値は両モデルでオーダーが一致していた。対象とする地域の豪雨頻度や長大な路線の多さにも依存するが,それらが富山県と同等以下の対象地であれば,林道台帳等の低解像度な被災箇所数データを用いたモデル推定が可能であると考えられる。

その他:シンポジウムの記録
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