日本森林学会誌
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93 巻, 4 号
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論文
  • 中川 昌彦, 蓮井 聡, 石濱 宣夫, 大野 泰之, 八坂 通泰
    2011 年93 巻4 号 p. 163-170
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    広葉樹9種の各樹種が等間隔に5列・5行でそれぞれ25本ずつのかたまり (パッチ) で植栽され, 異なるパッチを混ぜてパッチワーク状に混植された林分を調査し, この混植方法が混交林の造成に有効かどうかを検討した。一辺が7.0 mのパッチからなる植栽密度が5,000本/haのプロット, パッチの一辺が5.0 mの10,000本/haのプロット, パッチの一辺が2.5 mの40,000本/haのプロットがある。平均樹高は高い順にシラカンバ, ウダイカンバ, エゾヤマザクラ, ハリギリ, カツラ, ミズナラ, シナノキ, イヌエンジュ, キハダであった。カンバ2種とハリギリ, カツラはすべてのパッチが残存していたが, エゾヤマザクラ, イヌエンジュ, ミズナラ, シナノキ, キハダでパッチが消失した。樹高の高い樹種はパッチ内の植栽木がそのパッチの林冠を占有しかつ他のパッチへ樹冠がはみ出していたが, 樹高が低い樹種のパッチの林冠の大部分は, 他のパッチからはみ出してきた樹冠が占有していた。パッチワーク状混植は混交林の造成に有効であるが, パッチを49 m2よりも大きくするか, パッチとパッチの間に植栽しない空間を設けるなどの工夫が必要である。
  • 早尻 正宏
    2011 年93 巻4 号 p. 171-178
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    後期中等教育段階で森林・林業教育を担う高等学校森林・林業系学科は, 生徒数の減少などを理由に統廃合を含めた再編が相次ぐ中で, 教育目標やカリキュラムの見直しなど学科教育の再構築を進めている。本稿では, こうした転換期における森林・林業系学科の学校づくりの方向性を探るため, 目下重要な政策課題となっている森林地域の「地域再生」に着目し, 地域づくりに果たす同科の役割について検討した。鳥取県立智頭農林高等学校の学校づくりとその設置地域である智頭町の地域づくりの展開過程から, 第1に, 地域 (町行政, 住民) が林業・木材産業の振興を軸とした地域づくりの拠点の一つとして高校を意識的に位置付け, 学校側もその期待・要望に応えていく中で両者の結び付きが強まりつつあること, 第2に, インターンシップや学校開放などを通じて, 地域づくりの担い手の形成に高校が積極的に関与していることが明らかとなった。地域の中における森林・林業系学科の存在価値は, こうした地域づくりの担い手を育てる教育実践の協働的な展開を通じて高まっていくものと考えられた。
  • 長坂 壽俊, 吉村 研介, 明石 孝輝, 荒井 国幸, 山本 千秋
    2011 年93 巻4 号 p. 179-186
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    天然分布域内の9地域, 各地域内1から6産地, 計25産地から構成される長野県内の約30年生のカラマツ産地試験地4カ所のデータを解析し, 分散分析と主成分分析から, これまでの産地と地域区分の妥当性を検討した。樹高, 胸高直径, 枝太さ, 枝長さ, 落枝性では全ての試験地で産地間差が有意であったが, 幹曲がりと枝角度は一部の試験地でのみ産地間差が有意であった。特に主要な形質である樹高と胸高直径についての産地間分散の寄与率は, 各々25∼60%, 39∼61%と大きく, 材積の向上に産地選択の効果が大きいことが明らかになった。産地と試験地との交互作用は多くの形質で認められたが, 産地の効果も大きく, 複数の試験地を通して成長の良い産地も確認された。試験地ごとに複数の形質を因子として行った主成分分析により, 日光地域の3産地, 富士山地域の3産地, 北アルプス地域の2産地が各々の地域内でよく近接した。また, 比較的近接するものとして, 八ヶ岳地域の6産地, 木曽地域の3産地が区分された。しかし, 蓮華岳は他の北アルプス地域の産地とは極端に離れて位置し, 南アルプス地域の2産地も主成分分析では近接しなかった。さらに, 浅間山地域の産地は2分され, 水ノ登下部は草津万座と新たな区分を形成することが適切と考えられた。
  • 松本 光朗, 中島 徹, 細田 和男
    2011 年93 巻4 号 p. 187-195
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    間伐による適切な密度管理の推進のため, 既往のシステム収穫表の一つであるLocal Yield table Construction System (LYCS) を, 県の林業試験場や森林組合の意見・要望をもとに改良した。まず, LYCSの適用樹種・地域を拡大するためパラメータを整備し, 利用しやすくするためプログラムをExcel マクロへ移植した。また, 個別林分に適用できるようにするため, 地位の小数点以下の指定, 初期値としての実測データの利用を可能にした。さらに, 多様な施業に対応するため, 自己間引きの反映, 間伐方法の選択を可能にした。加えて, 収入予測を行うため, 採材や材価指定の機能を加えた。改良されたLYCSを, 間伐方法や密度管理の異なる林分に適用し推定結果の適合性を検討した結果, 多様な間伐計画に応じた個別林分の収穫予測に十分適用できることを確認した。
短報
  • 小野 里光, 太田 祐子, 河辺 祐嗣
    2011 年93 巻4 号 p. 196-199
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ナラタケモドキはサクラ類の根株腐朽病菌として近年問題となっている。そこで, 被害林から分離されたナラタケモドキとワタゲナラタケを用いてサクラ苗への接種試験を行った。ナラタケモドキ接種苗4本のうち1本が接種4年後に枯死した。それらすべての接種苗の根系に菌糸束は認められなかったが, 根株の外樹皮, 内樹皮および形成層に菌糸膜が形成され, 枯死苗では地際部の形成層を取り巻いていた。一方, ワタゲナラタケ接種苗は4本すべて枯死しなかった。それらすべての接種苗の根系に多数の菌糸束が絡み付いていたが, 菌糸膜の形成は外樹皮の一部に限られ, 内樹皮と形成層での菌糸膜形成は接種苗1本の細い根数本のみに認められた。接種苗からはそれぞれの接種菌が再分離された。対照苗3本はすべて枯死せず, 菌糸膜や菌糸束の形成も認められなかった。これらの結果から, ナラタケモドキはサクラ苗の内樹皮と形成層に侵入し, さらに枯死させることが明らかになった。
  • 平岡 裕一郎, 渡辺 敦史
    2011 年93 巻4 号 p. 200-204
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ハゼノキの在来品種と優良候補個体, および沖縄島の自生個体の葉緑体DNAにおけるndhF遺伝子とtrnL-F領域の塩基配列を決定し, アジア大陸の個体と比較した。総塩基長2,403 bpにおいて9の塩基置換がみられ, 10の葉緑体ハプロタイプに分類された。日本本土由来の在来品種と優良候補個体にのみ存在した1ハプロタイプ (A) と, 沖縄島を含めた日本に存在した2ハプロタイプ (B, C) は, 大陸の個体にみられなかったが, 塩基置換数からハプロタイプAは大陸の系統と近く, BとCは大陸のハプロタイプからより離れていた。以上より, 在来品種や優良候補個体には, 大陸や南西諸島に起源を持つ異なる系統が混在している可能性があると推察された。
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