日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
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100 巻, 1 号
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巻頭言
論文
  • 畑 邦彦, 木本 遼太郎, 曽根 晃一
    2018 年100 巻1 号 p. 3-7
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー

     スギにおけるアーバスキュラー菌根菌(以下,AM菌)の感染率の季節変化を明らかにするため,鹿児島大学農学部附属高隈演習林において,2012年1月から2013年11月にかけて毎月1回スギの成木および実生から根を採取して組織染色を行い,根内のAM菌を顕微鏡で確認した。その結果,今回調査を行った全ての月の全調査個体でAM菌の感染が確認された。感染率は成木,実生とも1月から5月までは低かったが,6月に急上昇後,8月にかけて一度低下してから再び上昇し,成木は9月と11月,実生は10月をピークに再び低下するというパターンを示した。感染率は実生より成木の方が高い傾向が見られた。また,成木,実生とも感染率の季節変化は2年間で極めて類似していた。感染率は平均気温と全体として有意な正の相関を示したが,詳しく見ると,およそ22℃をピークにそれ以下では気温と共に感染率が上昇,それ以上では低下する傾向を示した。降水量も感染率と有意な正の相関を示したが,これは主に気温と感染率の相関を反映した間接的な関係と思われた。

  • 阿部 寛史, 田淵 諒子, 奥田 康仁, 松本 晃幸
    2018 年100 巻1 号 p. 8-14
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

     SSRマーカーを用いて,集団内,地域,全国の空間スケールでショウロ(Rhizopogon roseolus)の遺伝解析を行った。集団内ではショウロのジェネットは小さく(平均0.6 m,≦1.6 m),頻繁な更新があること(1年で95.8%)から有性生殖に依存した繁殖戦略を持つことが示された。また,空間自己相関解析の結果,老熟して融解した子実体から埋土胞子化する近距離(0~4 m) において正の空間遺伝構造が検出された。次に,鳥取県内の7集団の遺伝的特徴を比較したところ,鳥取砂丘の5集団は高い遺伝的多様性を持ち,他の2集団との間に有意な遺伝的分化を示した(例32.2 kmでFST=0.234)。日本国内のサンプルについてSTRUCTURE解析を行ったところ,地理的位置に対応した四つの遺伝的クラスターに分類された。以上から,地域間の遺伝子流動が長期間にわたり制限されたことで,集団間の遺伝的分化が進行していると示唆された。分化した集団に特有の遺伝変異はショウロの育種において有用な遺伝資源となる可能性がある。

短報
  • 須崎 智応, 安藤 博之, 正木 隆
    2018 年100 巻1 号 p. 15-19
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー

     太平洋側のヒノキ人工林において,皆伐後の再造林地で下刈りの省略が木本類の侵入に及ぼす影響を調べるため,下刈りを通常の6年間行った区,はじめの3年間のみ行った区を設置し,林齢4年生から11年生時までの木本類の侵入過程を調査した。再造林地では重力散布型樹種の侵入は見られず,風散布型,鳥散布型の樹種が更新した。11年生時において下刈6年区ではヒノキと広葉樹との階層の分化が明確になっていたが,下刈3年区ではヒノキの平均樹高は下刈6年区より低く,侵入した広葉樹がヒノキの平均樹高を上回り,植栽木の成長が妨げられている場所も見られた。しかし,侵入した広葉樹の多くは低木種であり樹高成長も高木種より勝っていた。

  • ―広島経済大学のPBLの事例―
    中山 紘之, 松村 直人
    2018 年100 巻1 号 p. 20-25
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

     林業の不振や過疎・高齢化によって森林やその公益的機能を継承してきた農山村のコミュニティは疲弊してきている。近年,高等教育において,地域の課題や問題をテーマとしたプロジェクト型学習: Project Based Learning(以下,PBL)が行われるようになり,森林を地域資源として活用する例も増えてきた。本研究は,社会人基礎力の12の能力要素を評価指標にPBLに参加する学生の能力伸長を測定した。その内,森林環境教育の能力伸長と類似のPBLの能力伸長を比較した結果,森林環境教育の伸長率について,「ストレスコントロール力」,次いで「創造力」,「働きかけ力」が高かったが,その要因を検証するため主成分分析を行った結果,「ふりかえりによる達成感要因」,「活動内容要因」が影響しているものと判断した。特に森林環境教育の活動内容に影響した能力伸長は,状況把握力,規律性,ストレスコントロール力で,社会人基礎力の伸長に有意に作用する能力が明らかになった。

その他:書評
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