森林所有者の森林幸福度(以下,幸福度)が非所有者に比べ低いことが先行研究より明らかになっている。政策目標として,また経営意欲の促進のため,所有者の幸福度向上を目指すことは重要である。そこで,所有者の幸福度向上に関わる可能性がある要因のうち,特に森林政策に関連するものを2018年に滋賀県野洲川流域で実施したアンケート調査結果(回答数 1,457)の分析を通じて検討した。調整効果分析および所有者に限定した重回帰分析を行った結果,森林所有者の幸福度と関連する要因が特定された。木工,森林でのんびりするといった森林関連活動が所有者の幸福度と関連しており,幸福度の向上要因である可能性が示唆される。加えて財産区の役員を務めること,所有森林の人工林率の高さ,境界の把握程度の高さも幸福度と関連していた。過去1年以内に所有森林から得られた収入・収穫は幸福度を向上させ,成人以降の過去の収入・収穫は幸福度を低下させる可能性があることが示唆された。
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