日本森林学会誌
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104 巻, 1 号
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論文
  • 小林 裕之, 高岸 且, 森川 英治, 細野 賢一, 江口 輝, 小島 光平
    2022 年104 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル オープンアクセス

    低コスト2周波GNSS受信機の測位正確度を検証するため,森林外10カ所,森林内21カ所において,1カ所当たり約7時間の静止測位+PPK解析と2分30秒間のRTK測位を行った。10 m以上の大きな誤差を除外したのちの林内における平均水平誤差は,静止測位+PPK解析,RTK測位でそれぞれ1.22,1.72 mとなり,有意差がみられた。静止測位+PPK解析では,3衛星システム(GPS+QZSS+Galileo)よりも4衛星システム(3衛星システム+GLONASS)の方が,また1周波(L1)よりも2周波(L1+L2)の方が水平誤差は小さかった。衛星の仰角マスク値が20,25,30,35°と大きくなるにつれて,大きな誤差の発生頻度は減少した。RTK測位では,float解よりもfix解の方が水平誤差は小さかった。林内における平均垂直誤差は,静止測位+PPK解析,RTK測位でそれぞれ2.12,2.49 mと,水平誤差よりも大きくなった。携帯電話網圏外では静止測位+PPK解析,圏内ではRTK測位で水平位置を決定したのち,近年整備が進む高精度標高データを利用して高さを決定するのがよいと考えられた。

  • 遠藤 秀平, 山本 清龍
    2022 年104 巻1 号 p. 10-17
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    本研究では,小学校児童(以降,児童)の遊びの現状,経験と短期宿泊型野外体験が児童の環境意識の変化に及ぼす効果を明らかにすること,それらの関係性,因果関係に着目した上で短期宿泊型の野外体験の効果的な推進にむけた可能性と課題を考察すること,の2点を目的とした。研究方法としては,野外体験の実施直前,直後,実施から1カ月後の計3回にわたり一斉配布回収式アンケート調査を行い,環境意識の変化の把握を行った。意識把握の時期を要因とする分散分析の結果,児童の自然への感性,他者の責任帰属認知において意識の向上と持続がみられた。また,遊びと時期の両者を要因とする分散分析の結果,遊びの種類の多さと自然への感性などで意識変化への関連がみられ,宿泊型野外体験によって自然への感性の差異は縮小し,一様化する効果がみられた。しかし,体験前の自然への感性と時期のそれぞれを要因とする分散分析の結果からは,体験前の感性と関連づけられる環境配慮意識の差異は,複数の項目で体験後に消失しておらず,児童の環境意識には短期の宿泊型野外体験だけでなく自然遊びの現状と経験による影響があった。

  • 井上 真理子, 大石 康彦
    2022 年104 巻1 号 p. 18-30
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    高等学校の森林・林業教育について検討するために,林産加工の内容に着目し,戦後の教育の変化をもとに教育内容と特徴の分析を行った。調査対象は,森林・林業の専門学科を含む農業教育と,あわせて工業教育とした。「学習指導要領」と教科書を分析した結果,教科「農業」では,「林産加工」関連科目が1科目以上設定されていた。教育目標は,合理的な生産や利用を図ることから,林産物の加工や多様な利用に変化したが,教育内容は主に木材産業に関わる知識や技能に関するものだった。教育内容には,5分類9項目(1)概論:意義・動向,2)木材・材料:構造・性質・用途,3)木材加工:製材・乾燥,工作,塗装・接着・木質材料,4)林産製造:木炭・バイオマス,紙・パルプ,5)特用林産:きのこ,特殊林産・山菜)があった。工業教育では,工業の材料の木材として,家具など工芸(インテリア)での木材加工,建築での木質構造がみられた。近年では,環境の意義から木の教育内容が増えていた。林産加工の教育の特徴には,生産から利用を通した循環資源の活用を学べることがあり,今後の課題には,専門教育の基礎・基本としての林産加工教育の内容の精査が挙げられた。

  • 山田 亮, 比屋根 哲, 八幡 直輝
    2022 年104 巻1 号 p. 31-38
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    森林環境下における自然体験活動について,自然に対する感情反応,レジリエンス,心理的回復効果の観点から,活動プログラム体験による影響を検討した。効果の分析方法として,群間比較法という参加者全体への効果を検討する方法に加えて,シングルケースデザイン(SCD)で個々人への効果を検討する方法を試みた。調査対象は,26名の大学生が参加した4泊5日の自然体験活動のプログラムで,森林環境教育アクティビティや沢登り活動などを実践するものとした。調査の結果,群間比較法による分析では,自然に対する感情反応とレジリエンスについて,活動プログラムによる向上効果が確認された。また,SCDによる分析では,参加者一人ひとりの活動プログラムによる心理的回復効果の変容を示すことができ,参加者ごとの森林環境下における体験による効果に違いがあることが明らかとなった。さらに,SCDの分析による心理的回復効果の状況から,自然に対する感情反応とレジリエンスの向上効果の関連性が示唆された。本研究によって,自然体験活動の効果と分析方法に関する新たな知見を示すことができた。

短報
  • ―滋賀県野洲川上流域のアンケート調査結果の統計解析から―
    高橋 卓也, 内田 由紀子, 石橋 弘之, 奥田 昇
    2022 年104 巻1 号 p. 39-43
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    森林所有者の森林幸福度(以下,幸福度)が非所有者に比べ低いことが先行研究より明らかになっている。政策目標として,また経営意欲の促進のため,所有者の幸福度向上を目指すことは重要である。そこで,所有者の幸福度向上に関わる可能性がある要因のうち,特に森林政策に関連するものを2018年に滋賀県野洲川流域で実施したアンケート調査結果(回答数 1,457)の分析を通じて検討した。調整効果分析および所有者に限定した重回帰分析を行った結果,森林所有者の幸福度と関連する要因が特定された。木工,森林でのんびりするといった森林関連活動が所有者の幸福度と関連しており,幸福度の向上要因である可能性が示唆される。加えて財産区の役員を務めること,所有森林の人工林率の高さ,境界の把握程度の高さも幸福度と関連していた。過去1年以内に所有森林から得られた収入・収穫は幸福度を向上させ,成人以降の過去の収入・収穫は幸福度を低下させる可能性があることが示唆された。

  • 石塚 航, 内山 憲太郎, 陳 淑芬, 後藤 晋
    2022 年104 巻1 号 p. 44-49
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    北海道で利用の進むニホンカラマツ(Lk)やグイマツ(Lg)の育種を推進するためにも,交配次代を含めた育種素材について,樹種を含めた遺伝情報の確認・整理が求められる。そこで,同属でそれぞれ父性,母性遺伝する葉緑体とミトコンドリアゲノムを対象とし,48座の変異検出マーカーセットを開発した。既知の配列情報を基に変異を選出し,LkとLg内の種内変異を検出するため,それぞれ葉緑体上の33座と8座を,樹種判定に用いる種間変異を検出するために葉緑体上の5座,ミトコンドリア上の2座を設計した。これらのマーカーについて,系統の確かなLk 24個体,Lg 7個体,交雑第一世代16個体の計47個体を用いて多型性を評価したところ,32座に多型が検出され,Lk側で15,Lg側で7ハプロタイプが検出された。また,両親樹種の判定の正答率は100%であった。カラマツ属育種素材の樹種確認や系統の遺伝的な類縁関係の評価を同時に行う上で,本マーカーセットは有用と考えられた。

  • 丹羽 英之
    2022 年104 巻1 号 p. 50-55
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    関西地方の二次林では野生ツツジ類が減少しており,その保全は重要な課題になっている。野生ツツジ類を保全していくためには,数100 ha程度の範囲において開花個体に関する定量的データを取得できる方法の開発が必要だと考えられる。宝が池公園(京都市左京区)にある森林109.4 haを調査対象とした。2020年4月8日にUAVを使い空撮したデータからオルソモザイク画像を作成した。機械学習を使い,オルソモザイク画像からコバノミツバツツジの花を検出した。同時に46地点でコバノミツバツツジの開花個体を調査した。機械学習を用いたコバノミツバツツジの花の検出精度は高かった(Overall Accuracy=97.9%)。現地調査における開花個体数と,画像認識結果から算出した花のパッチ面積には強い相関があった(r=0.75)。コバノミツバツツジ開花個体の分布把握の新しい方法を示すことができた。

その他:書評
その他:シンポジウムの記録
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